サラゾスルファピリジン(SASP)
商品名:アザルフィジンEN、サラゾピリンなど

SASPは疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)ひとつで、関節リウマチや炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の管理に役立ちます。関節リウマチに対して、何十年(米国では1951年から使用されています。日本では1969年にサラゾピリンの使用が可能となりました。1995年にアザルフィジンENが関節リウマチ対し保険適応となる前は、保険外適応として関節リウマチに対し、サラゾピリンが処方されていました)も使用されてきました。ただ、SASPの効果発現までには時間がかかり、通常1~2ヵ月後に効果が得られるので、臨床効果が発現するまでは、消炎鎮痛剤は継続して併用することが推奨されています。近年、関節リウマチに対してより効果的な薬剤である生物学的製剤やJAK阻害剤の登場にもかかわらず、SASPはその費用対効果と実証された有効性から臨床現場で使用され続けています。
適応
米国では関節リウマチ、多関節性若年性特発性関節炎、潰瘍性大腸炎の治療に承認されています。日本では、アザルフィジンENは関節リウマチに保険適応があり、サラゾピリンは潰瘍性大腸炎に保険適応があります。比較的早期の関節リウマチ患者で低~中疾患活動性の症例が良い適応となります。
特徴
SASPは5-アミノサリチル酸(メサラミンまたはメサラジン:サリチル酸;鎮痛剤)とスルファピリジン(サルファ剤;抗菌剤)をアゾ結合で結合したプロドラッグです。大腸内の細菌はアゾ結合を切断し、5-アミノサリチル酸という有効成分を解放します。アザルフィジンENなどの腸溶錠は大腸で薬が溶解するように設計されています、これはSASPに伴う消化器系の副作用を軽減する目的もあります。生物学的製剤等に比べ安価で、他の疾患修飾性抗リウマチ薬と比べて催奇形性がほとんどありません。

作用機序
SASPの正確な作用機序は完全には解明されていませんが、以下のような免疫調節作用が報告されています。
①SASPは転写因子の核内因子NF-κBを阻害し、炎症メディエーターであるTNF-αを含むNF-κB応答性炎症促進遺伝子の転写を抑制します。
②SASPはマクロファージにおけるカスパーゼ8誘導アポトーシスを誘導することでTNF-αの発現を阻害します。
③SASPはNF-κBリガンド(RANKL)発現の受容体活性化因子を抑制し、RANKL阻害剤であるオステオプロテゲリンを刺激することで破骨細胞形成を抑制します。
④SASPは、エクト5'-ヌクレオチダーゼによってアデニンヌクレオチドをアデノシンに変換し、アデノシンによって媒介される抗炎症活性を誘導します。
⑤サリチル酸塩とSASPは、NF-κB経路やプロスタグランジン合成の阻害とは独立したアデノシン依存性機構により炎症部位への白血球の集積を抑制します。
⑥SASPおよびその代謝物であるスルファピリジンおよび5-アミノサリチル酸はB細胞の機能を抑制し、IgMおよびIgGの産生を抑制します。
⑦スルファピリジンは炎症性ケモカインであるインターロイキン-8、成長関連遺伝子産物(growth-related gene product)α、単球遊走性タンパク質(monocyte chemotactic protein)-1の分泌を阻害します。
投与方法・量
1日2~4錠(0.5~1g)経口投与します。日本での承認用量は1g/日は海外(1~3g/日)と比較し低用量です。
関節リウマチに対する有効性
国内第II相臨床試験(二重盲検比較試験)
関節リウマチ患者(299例)を対象に、二重盲検群間比較法によりプラセボ、サラゾスルファビリジン腸溶錠1日1g(1g群)、または1日2g(2g群)を、16週間、食後連続経口投与し、本剤の至適用量を検討した結果、サラゾスルファビリジン腸溶錠はプラセボに比べ、有意に高い有効性が認められ、安全性の点を勘案すると至適用量は1日1gであることが明らかとなりました。


併用療法
臨床試験により、SASPは単独または併用で関節リウマチの疾患活動を有意に減少させることが証明されています。早期RA患者をSASPにて治療を開始し、6か月後に治療抵抗性だった例を、SASP継続群、MTX単独療法へ変更群、MTX+SASP併用療法群の3群に分け比較検討を行いました。その後のDASの変化を見ると、明らかにSASP群、MTX群に比べ併用療法群(Comb:MTX+SASP群)で低下していました(関節リウマチが改善していました)。
Ann Rheum Dis 2007;66:235-241.

ニューモシスチス肺炎に対する予防効果
ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jirovecii pneumonia:PCP)は、メトトレキサート、タクロリムス、生物学的製剤、JAK阻害剤などの免疫抑制治療を受けている関節リウマチ患者では、生命を脅かす危険のある日和見感染症です。PCPの予防にはサルファ剤の合剤であるスルファメトキサゾール–トリメトプリム(ST合剤)が良く使用されていますが、最近、SASPにもPCPの予防効果があるという報告(文献4】~7】)が数件見られています。その中のひとつ(文献4】)について示します。


2012年1月から2025年2月までに大阪利根山医療センターで、メトトレキサート、生物学的製剤、JAK阻害剤の投与歴がある914名の関節リウマチ患者のうち、胸部CTデータのない262名と、予防的にST合剤などのPCP予防薬を投与された98名を除外した554名の患者を対象に調査されました。このうち16人がPCPを発症しました。多変量ロジスティック解析では、SASP使用はPCPリスク低下と関連していました(オッズ比:0.11、95%信頼区間:0.00–0.81)。SASPユーザーと非使用者の累積PCP発生率を比較したKaplan–Meier分析では、SASP使用がPCP発症リスクを低減することが示されました。

禁忌事項
SASPの禁忌には、SASP、その代謝物、スルホンアミド、サリチル酸塩、または製剤のいかなる成分に対する過敏症、腸または尿閉塞、ポルフィリア症などが含まれます。
投与時注意事項
妊娠の注意点
SASPとその代謝物スルファピリジンは胎盤を通過することができます。妊娠中にSASPに曝露された母親から生まれた乳児における神経管欠損(NTD)の事例が報告されています。アメリカ消化器学会によると、妊娠中にSASP投与継続する場合、葉酸補給を検討する必要があるとされています。
授乳時の注意事項
SASPおよびその活性代謝物メサラミンは母乳への排泄が限定的です。SASP代謝物であるスルファピリジンは、乳液および乳児血清の両方で検出されており、特に新生児やグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠乏症患者において溶血のリスクがあります。G6PD欠乏症のない満期新生児で溶血リスクが最も高いのは出生後8日以内です。ほとんどの専門家は、メサラミン誘導体は授乳に安全であると一般的に考えています。母体によるSASP使用が必要な場合、授乳を中止することは通常あまり必要ありません。ただし、授乳中の赤ちゃんの下痢の有無は厳重に監視することが推奨されます。
小児患者
2歳未満の患者におけるSASPの安全性と有効性は記録されていません。
高齢者
関節リウマチの高齢者は、SASP、スルファピリジンおよびそれらの代謝物に対して血漿半減期が延長されたことが示されました。65歳以上の高齢者では65歳未満の患者に比べ、消化器系、腎臓系、肝臓系の副作用発現率が高い傾向がみられました。
副作用
最も一般的な副作用には、吐き気、嘔吐、口内炎、消化不良・下痢、男性不妊(可逆的)、頭痛、皮膚の発疹、肝機能障害などがあります。SASPを250人以上の男性を対象に投与された研究では、被験者に少精子症、精子運動異常、形態が認められましたが、いずれも治療中止後3か月以内に可逆的に元に戻ったことが判明しました。また、尿や皮膚が黄色~黄赤色に着色したり、ソフトコンタクトレンズが着色することがあります。
アザルフィジンENのインタビューフォームによると調査対象症例3,586例中、830例(23.1%)に副作用が認められました。なお、重大な副作用として、再生不良性貧血、汎血球減少症、無顆粒球症、血小板減少、貧血(溶血性貧血、巨赤芽球性貧血(葉酸欠乏)等)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、紅皮症型薬疹、過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS*)、伝染性単核球症様症状、間質性肺炎、薬剤性肺炎、PIE症候群、線維性肺胞炎、急性腎障害、ネフローゼ症候群、間質性腎炎、消化性潰瘍(出血、穿孔を伴うことがある)、S状結腸穿孔、脳症、無菌性髄膜(脳)炎、心膜炎、胸膜炎、SLE様症状、劇症肝炎、肝炎、肝機能障害、黄疸、ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあると報告されています。
*Drug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS):DIHSは重症薬疹のひとつです。DIHSはSASPなどの限られた薬剤(抗けいれん剤など)の長期内服後に発症します。発症までの内服期間は3週間~数年に及びます。いったん発症すると、一般の薬疹と異なり、SASPなどを中止しても、高熱、リンパ節腫脹、紅斑、白血球増多、肝障害、腎障害が次々に生じてきます。DIHSの発症にはヒトヘルペスウイルス6の再活性化が関与しているといわれています。
薬物間相互作用
①SASPによるチオプリンメチルトランスフェラーゼ酵素活性の阻害は、アザチオプリンの毒性を増加させ、白血球減少などの骨髄抑制を起こす可能性があります。
②SASPはジゴキシンの消化管吸収を阻害し、生体利用率を低下させます。使用には注意してください。
③SASPは経口スルホニルアミド/スルホニルウレア系糖尿病薬(グリペンクラミド、グリクラジド、グリメピリド)の効果を増強し、低血糖を発症するおそれがあります。
④SASPはワルファリンの抗凝固効果を増強し、出血を引き起こすことがあります。
⑤SASPは葉酸欠乏を起こし、貧血を起こすことがあります。
文献
1】Sulfasalazine. StatPearle [Internet].Treasure Island (FL): StatPearls Publishing 2025
2】アザルフィジンEN 医薬品インタビューフォーム 2025年9月(改訂第14版)、あゆみ製薬
3】慢性関節リウマチに対するサラゾスルファピリジン腸溶錠(PJ-306)の二重盲検試験。リウマチ 1991;31:327-345
4】Risk Factors for Pneumocystis jirovecii Pneumonia in Rheumatoid Arthritis: The Protective Potential of Salazosulfapyridine. Int J Rheum Dis 2025; 28:e70318. https://doi.org/10.1111/1756-185X.70318
5】Sulfasalazine as a Prophylactic for Pneumocystis Pneumonia in Patients With Rheumatoid Arthritis: A Cohort Study. Int J Rheum Dis 2025;28:e70325. https://doi: 10.1111/1756-185x.70325.
6】Risk of Pneumocystis Pneumonia in Patients With Rheumatoid Arthritis and the Role of Prophylactic Salazosulfapyridine. Int J Rheum Dis 2025;28:e70516. https://doi: 10.1111/1756-185x.70516.
7】Efficacy of sulfasalazine for the prevention of Pneumocystis pneumonia in patients with rheumatoid arthritis: A multicentric self-controlled case series study. J Infect Chemother 2023;29:193-197. https://doi: 10.1016/j.jiac.2022.10.019.
<<2026年2月9日作成>>
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