JAK阻害剤
JAK阻害剤の安全性について
2021年10月12日厚生労働省医薬・生活衛生局はJAK阻害剤トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)について、添付文書の「重大な副作用」の項に「心血管系事象」と「悪性腫瘍」を追記することなどを指示した。(ファイザー社から発行された「ゼルヤンツの安全性に関する重要なお知らせ(2021年10月)」)等を参照した)
トファシチニブの心血管系事象のリスク因子を有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験(A3921133試験)の最終解析結果で、主要評価項目とした「主要な心血管系事象(Major Adverse Cardiovascular Events:MACE)」及び「悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)」の発現率について、TNF阻害剤群に対するトファシチニブ群の増加が認められた。米国食品医薬品局(FDA)は、トファシチニブにより、心臓発作などの重篤な心臓関連事象、脳卒中、癌、血栓及び死亡のリスクが上昇すると結論付けた。他のJAK阻害剤【バリシチニブ(商品名:オルミエント)、ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)、ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)、フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)】は、同様の大規模な安全性臨床試験で検討されていないため、これらの薬剤のリスクは評価されていない。しかし、これらの薬剤はトファシチニブと同様の作用機序を有しているため、FDAは、これらの薬剤がトファシチニブを用いた安全性試験で認められたものと同様のリスクを有する可能性があると考えている。ただし、ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)、フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)に関しては日本で使用可能なJAK阻害剤であるが、FDAでは承認されていないため、今回のFDAの警告には含まれていない。
データ概要
この試験は、トファシチニブの2種類の用量[関節リウマチに対する承認用量である5mg、1日2回、及びより高用量の10mg(日本未承認)、1日2回投与]を、TNF阻害薬による治療と比較する多施設共同、無作為化、非盲検試験であった。試験に参加した患者の選択基準は、50歳以上かつ心血管リスク因子を1つ以上有することであった。最終的な試験結果の審査により、心臓発作などの重篤な心臓関連事象や脳卒中、癌、血栓、死亡の発現率は、TNF阻害薬の投与を受けた患者と比較して、トファシチニブの両用量の投与を受けた患者で高いことが示された。
癌に関しては、TNF阻害薬の投与を受けた患者と比較して、トファシチニブの投与を受けた患者でリンパ腫及び肺癌が高率で認められた。特に、トファシチニブの投与を受けた現喫煙者又は元喫煙者では、肺癌の発現率が高かった。現喫煙者又は元喫煙者では、癌全体のリスクがさらに上昇していた。
患者は何をすべきか
・トファシチニブ、バリシチニブ及びウパダシチニブ(ペフィシチニブ、フィルゴチニブも同様と考える)の服用を開始する前、あるいは服用中の患者は、薬剤による重篤な問題が生じるリスクが高くなる可能性があるため、以下の事を担当の医療従事者に知らせること。
現在あるいは過去に喫煙したことがあること |
過去に心臓発作、その他の心臓障害生じたことがある場合 |
脳卒中、若しくは血栓が生じたことがある場合 |
・下記のような心臓発作、脳卒中、又は血栓の兆候と思われる症状が現れた場合は、直ちに救急外来を受診すること。
胸部中央部の不快感が数分以上持続するか、消失した後に再発する |
胸部、咽喉、頸部、又は顎の重度の絞拒感、疼痛、圧迫感、又は重感 |
両腕、背部、頸部、顎、又は胃の疼痛や不快感 |
胸部不快感を伴う又は伴わない息切れ |
突発的な冷汗 |
悪心又は嘔吐 |
頭部ふらふら感 |
体の一部又は片側の脱力 |
不明瞭発語 |
口の片側が垂れ下がる |
下肢又は腕の腫脹 |
下肢痛又は圧痛、若しくは疼痛や腫脹がある下肢又は腕の皮膚の発赤や変色 |
・これらの薬剤による治療は、リンパ腫や肺癌などの特定の癌のリスク上昇を伴うため、以下のような徴候や症状が現れた場合も、担当の医療従事者に知らせること。
頸部、腋窩、又は鼠径部のリンパ節腫脹 |
絶え間ない疲労感 |
発熱 |
寝汗 |
咳嗽の持続又は悪化 |
呼吸困難 |
嗄声(声枯れ)又は喘鳴 |
原因不明の体重減少 |
・トファシチニブ、バリシチニブ及びウパダシチニブ(ペフィシチニブ、フィルゴチニブも同様と考える)の処方を受けるたびに、下記の患者向医薬品ガイドを読むこと。医薬品ガイドは、患者の医薬品についてこのような新規の情報や他の重要な情報により更新される。医薬品ガイドでは知っておくべき重要なことが説明されている。副作用、薬剤の使用目的、適切な服用方法と保管方法、薬剤を服用する際に注意すべきその他の事項について述べられている。
トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)患者向医薬品ガイド
バリシチニブ(商品名:オルミエント)患者向医薬品ガイド
ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)患者向医薬品ガイド
ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)患者向医薬品ガイド
フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)患者向医薬品ガイド
・質問や懸念がある場合は担当の医療従事者に相談すること。
医療従事者は何をすべきか
・FDAは、JAK阻害剤であるトファシチニブ、バリシチニブ及びウパダシチニブ(ペフィシチニブ、フィルゴチニブも同様と考える)による主要な心血管の有害事象、悪性腫瘍、血栓症、及び死亡のリスク上昇に関する新規の警告及び最新の警告を要請している。
・これらの薬剤は、1種類以上のTNF阻害薬の効果不十分又は不耐性の患者にのみ使用すること。
・トファシチニブ、バリシチニブ及びウパダシチニブ(ペフィシチニブ、フィルゴチニブも同様と考える)による治療を開始又は継続する前に、特に現喫煙者又は元喫煙者、他の(高齢、喫煙以外の)心血管リスク因子を有する患者、悪性腫瘍を発症した患者、治療が成功した非メラノーマ皮膚癌以外の悪性腫瘍が判明している患者において、個々の患者のベネフィットとリスクを検討すること。
・重篤な脳心血管事象の症状について患者に説明し、発現した場合は救急医療機関を受診するように伝えること。
・各処方箋と共に受け取った医薬品ガイドを読むよう患者に促すこと。医薬品ガイドでは安全性リスクについて説明され、他の重要な情報が提供されている。
・適正使用ガイドは下記を参照。
トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)全例市販後調査のための適正使用ガイド
バリシチニブ(商品名:オルミエント)全例市販後調査のための適正使用ガイド
ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)全例市販後調査のための適正使用ガイド
ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)全例市販後調査のための適正使用ガイド
フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)全例市販後調査のための適正使用ガイド
尚、欧州医薬品庁(2021年6月)は「トファシチニブは、65歳以上の患者、喫煙中または喫煙歴のある患者、他の(65歳以上、喫煙以外の)心血管リスク因子を有する患者、および悪性腫瘍のリスク因子を有する患者に対しては適切な代替療法がない場合のみ使用する必要がある」と勧告している。
トファシチニブ
商品名:ゼルヤンツ
特徴:JAK1,2,3を阻害することにより、数種類のサイトカイン受容体を介するシグナル伝達を阻害します。
効能・効果:既存治療で効果不十分な関節リウマチ。中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)。
投与方法・量:関節リウマチ、潰瘍性大腸炎の維持療法:5mg 1日2回、潰瘍性大腸炎の寛解導入療法:10mg 1日2回(8週間まで、効果不十分の場合、さらに8週間)。
主な副作用:感染症(特に帯状疱疹)、消化管穿孔、血球異常、肝機能障害、間質性肺炎、静脈血栓塞栓症など。
詳しい情報はこちらから。
トファシチニブ:帯状疱疹の発症リスクが約4倍増加します。特に日本人/韓国人では危険度が9倍になります。
トファシチニブ:全体の発癌発症率の増加は見られませんが、肺癌、悪性リンパ腫の発症率が高い傾向が見られました。ただし、関節リウマチではもともと肺癌、悪性リンパ腫の発症率が高い傾向があります。→参照:関節リウマチと悪性腫瘍
JAK ACADEMY in 名古屋
2017年9月2日(土)に開催された講演会より、トファシチニブに関する内容を掲載します。
関節リウマチにおけるJAK阻害剤の意義
医療法人社団博恵会 桃原 茂樹先生
トファシチニブは免疫担当細胞であるTリンパ球、Bリンパ球のみならず、樹状細胞の機能も抑制する実験結果を提示されました。
JAKSTAT. 2013 Oct 1;2(4):e27638
トファシチニブはJAKを阻害することにより、プロスタグランディンやエンドセリン等の産生を抑制し、痛みを抑える可能性があると示唆されていました。
Lancet 2017; 390: 457-68
この研究はメトトレキサート不応性の関節リウマチ患者(平均罹病期間 5-6年)1146例を、トファシチニブ単独群、トファシチニブとメトトレキサート併用群、アダリムマブとメトトレキサート併用群の3群に分けて、1年間治療効果、有害事象について検討した国際二重盲検試験(ただし、日本人は含まれていません)です。
6ヵ月後、12ヵ月後ともにACR20, ACR50, ACR70の改善率はトファシチニブとメトトレキサート併用群、アダリムマブとメトトレキサート併用群では差はなかったが、トファシチニブ単独群ではやや劣るという結果でした。
有害事象は3群で大きな差はありませんでしたが、トファシチニブ単独群で2例死亡例がありました。1例は腎臓感染症から敗血症で死亡され、もう1例はインフルエンザ罹患後の肺炎で死亡されました。
トファシチニブは汎発性脱毛症にも有効という報告例を紹介されていました。
トファシチニブ、トシリズマブには消化管穿孔のリスクがあるので、腸憩室症の有無をチェックする必要があるとのことで、今後注意したいと思います。
ゼルヤンツカレッジ in Tokyo 2018
2018年3月17日(土) に開催された講演会より、トファシチニブに関する内容を掲載します。
ゼルヤンツ錠特定使用成績調査(全例調査)中間報告
和歌山県立医科大学 リウマチ・膠原病科学講座 藤井 隆夫先生
感染症、悪性腫瘍、間質性肺炎の発生に要注意。
重篤な感染症の発症はゼルヤンツ投与後、1年以内が多い。
帯状疱疹は日本人、韓国人で多く発症している。ただ、帯状疱疹治癒後にはゼルヤンツの再開は問題ない。
帯状疱疹について、患者によく周知しておく必要あり。
悪性腫瘍に関しては、今の所ゼルヤンツ投与にて増加するという報告はないが、注意は必要。
投与前、投与中に悪性腫瘍に関して、どこまで調べるか?
今の所、各医療機関ごとに別々の基準でやっているのが現状である。少なくとも「がん検診」は受けてもらうべきである。
リンパ増殖性疾患発生後、ゼルヤンツとMTX、両方中止すべきか、MTXのみでよいか?
全例調査の中ではMTX中止のみで、リンパ増殖性疾患が改善した例があるが、今の所どちらが良いか判断は難しい。
間質性肺炎はMTX併用例がほとんどのため、MTXによる間質性肺炎なのか、ゼルヤンツ単独で間質性肺炎が起こるのかはまだ不明である。
ゼルヤンツは低分子化合物であるため、クラリスロマイシン等など薬物相互作用がある。特に高齢者では薬剤投与量が多いので、薬物相互作用によるゼルヤンツの作用増強・副作用発現に要注意である。
トファシチニブを臨床でどのように使用するか
佐世保中央病院 リウマチ膠原病センター 植木 幸孝先生
自験例のみならず熊本等との共同研究症例について報告されていた。
ゼルヤンツの効果発現は早い。2週間で症状改善することが多い。
ゼルヤンツは1種類のサイトカインだけではなく、マルチターゲットでサイトカインの発現を抑制する。
MTX非併用でも有効。
薬剤のon/offがしやすい。
高齢者では5mgから開始することもある。
有害事象は生物学的製剤と同程度。
バリシチニブが発売されてから、JAK阻害剤処方に対する抵抗が少なくなり、以前より>トファシチニブの処方例数が増えた。
バリシチニブ
商品名:オルミエント
特徴:JAK1,2を阻害することにより、数種類のサイトカイン受容体を介するシグナル伝達を阻害します。
効能・効果:既存治療で効果不十分な関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)。
投与方法・量:4mg 1日1回、患者の状態に応じて2mgに減量可能。中等度の腎機能障害の方は2mgから開始。
主な副作用:感染症(特に帯状疱疹)、消化管穿孔、血球異常、肝機能障害、間質性肺炎など。
詳しい情報はこちらから。
オルミエント全国講演会
2017年7月22日(土)に開催された講演会より、バリシチニブに関する内容を掲載します。
オルミエントの作用機序
産業医科大学第1内科学講座 田中良哉先生
オルミエントはJAK1およびJAK2を阻害することにより(トファシチニブはJAK1、2、3を阻害する)、インターフェロンγ、IL-6、GM-CSFなどの炎症性サイトカインのシグナル伝達を抑制し、炎症細胞の活性化や免疫細胞の増殖を抑制します。JAK1,2阻害により、倦怠感の改善、食欲不振の改善が認められます。
オルミエント第III相臨床試験RA-BEAM試験を読み解く
産業医科大学第1内科学講座 田中良哉先生
MTX効果不十分例に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、1305例(うち日本人249例)の関節リウマチ患者が参加しました。
N Engl J Med 2017;376:652-62
田中先生はこの論文のLast authorになっていました。
バリシチニブ 4mg + MTX、アダリムマブ 40mg/2週 + MTX、プラセボ + MTXの3群で比較検討したところ、12週後のACR20改善率はバリシチニブ 4mg + MTX群(69.6%)、アダリムマブ 40mg/2週 + MTX(61.2%)群はプラセボ + MTX群(40.2%)に比べ有意に高いことが示されました。また、バリシチニブはアダリムマブに対する非劣性が示されました(バリシチニブのほうがアダリムマブより効いているんじゃないかと私は思いましたが)。
第III相臨床試験の結果からオルミエントのbest useを考える
慶応義塾大学医学部リウマチ内科 竹内 勤先生
RA-BEGIN
Arthritis Rheum 2017;69:506-517
DMARD未治療例に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、584例(うち日本人104例)の関節リウマチ患者が参加しました。
バリシチニブ 4mg単独、バリシチニブ 4mg + MTX、MTX単独の3群で比較検討したところ、24週後のACR20改善率はバリシチニブ 4mg単独群(76.7%)、バリシチニブ 4mg + MTX群(78.1%)はMTX単独群(61.9%)に比べ有意に高いことが示されました。(MTXを併用しなくても、バリシチニブ単独でも有効なんじゃないかなと私は思いました。)
RA-BUILD
Ann Rheum Dis 2017;76:88-95
csDMARDS効果不十分例(MTXのみ 49%、MTX + 他のcsDMARD1剤 23%、MTX以外のcsDMARDS1剤 16%、DMARDS未治療 7%)に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、684例(うち日本人21例)の関節リウマチ患者が参加しました。
バリシチニブ 2mg + csDMARD、バリシチニブ 4mg + csDMARD、プラセボ + csDMARDの3群で比較検討したところ、12週後のACR20改善率はバリシチニブ 2mg + csDMARD群(65.9%)、バリシチニブ 4mg + csDMARD群(61.7%)はプラセボ + csDMARD群(39.5%)に比べ有意に高いことが示されました。(バリシチニブ 2mgでも十分有効なのではないかと私は思いました。)
RA-BEACON
N Engl J Med 2016;374:1243-52
生物学的製剤効果不十分例に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、527例(うち日本人20例)の関節リウマチ患者が参加しました。
バリシチニブ 2mg + csDMARD、バリシチニブ 4mg + csDMARD、プラセボ + csDMARDの3群で比較検討したところ、12週後のACR20改善率はバリシチニブ 2mg + csDMARD群(48.9%)、バリシチニブ 4mg + csDMARD群(55.4%)はプラセボ + csDMARD群(27.3%)に比べ有意に高いことが示されました。(やはり、生物学的製剤効果不十分例では、MTX効果不十分例やDMRAD未治療例に比べ、バリシニチブの有効性が少し劣っているなと私は思いました。)
オルミエントの安全性~臨床試験の併合解析結果~
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター リウマチ性疾患薬剤疫学研究部門特任教授 針谷正祥先生
国内外の第II/III相試験に参加した約3500例の対象症例において、副作用発現率は41.5%でした。
注目すべき副作用としては、6例(1例死亡)に結核が見られ、肺外結核が多かったそうです。
トファシチニブと同じように帯状疱疹の発生率が高く、日本人では欧米人に比べ、発生頻度が高かったそうです。
帯状疱疹発生率 | |
全体 | 3.9% |
日本人 | 8.2% |
肝障害も日本人で比較的多い副作用ということでした。さらに、5例の間質性肺炎の症例が認められましたが、その内4例が日本人だったそうです。
そのほかに注意すべき副作用としては静脈血栓症/肺塞栓症があげられていました。
ペフィシチニブ
商品名:スマイラフ
特徴:JAK1,2,3,TYK2を阻害することにより、数種類のサイトカイン受容体を介するシグナル伝達を阻害します。
効能・効果:既存治療で効果不十分な関節リウマチ。
投与方法・量:150mg 1日1回、患者の状態に応じて100mgに減量可能。
主な副作用:感染症(特に帯状疱疹)、消化管穿孔、血球異常、間質性肺炎、肝機能障害など。
詳しい情報はこちらから。
投与12週/中止時において、ペフィシチニブ100㎎+MTX、ペフィシチニブ150㎎+MTXはプラセボ+MTXに比べ、有意に高いACR20改善率が示されました。
Ann Rheum Dis. 2019; 78: 1305-1319
ウパダシチニブ
商品名:リンヴォック
特徴:JAK1を阻害することにより、数種類のサイトカイン受容体を介するシグナル伝達を阻害します。
効能・効果:既存治療で効果不十分な関節リウマチ、関節症性乾癬、アトピー性皮膚炎。
投与方法・量:15mg 1日1回、、患者の状態に応じて7.5mgに減量可能。
主な副作用:感染症(特に帯状疱疹)、消化管穿孔、血球異常、間質性肺炎、肝機能障害、静脈血栓塞栓症など。
詳しい情報はこちらから
https://www.rinvoqhcp.com
SELECT-EARLY:MTXナイーブであった中等度から重度のRAの947人の成人患者を対象とした48週間の無作為化二重盲検比較対照試験(12週目の結果)。
SELECT-MONOTHERAPY:MTXに対する反応が不十分であった中等度から重度のRAの成人患者648人を対象とした14週間の無作為化二重盲検比較対照試験(ウパダシチニブ単剤療法)。
SELECT-NEXT:csDMARDへの反応が不十分であった中等度から重度のRAの661人の成人患者を対象とした12週間の無作為化二重盲検比較対照試験。
SELECT-BEYOND:bDMARD(生物学的製剤)に対して不十分な反応または不耐性を示した中等度から重度のRAの成人患者499人を対象とした12週間の無作為化二重盲検比較対照試験。。SELECT-COMPARE:MTXに対する反応が不十分であった中等度から重度のRAの成人成人患者1629人を対象とした48週間の無作為化二重盲検比較対照試験(ウパダシチニブとMTXの併用療法:12週目の結果)。
上記にいずれの試験においても、ウパダシチニブ15㎎投与群はプラセボ群に比べ、有意にACR20または50の改善を認めることが検証されました。
SELECT-COMPARE試験(12週時点)においてはウパダシチニブ15㎎投与群はアダリムマブ群(HUMIRA)に比べ、有意に高いACR50改善率を認め、HAQ-DI(日常生活における困難の程度をあらわす指数)、患者による疼痛評価(PAIN)においても有意な改善を認めました。
フィルゴチニブ
商品名:ジセレカ
特徴:JAK1を阻害することにより、数種類のサイトカイン受容体を介するシグナル伝達を阻害します。
効能・効果:既存治療で効果不十分な関節リウマチ。
投与方法・量:200mg 1日1回、、患者の状態に応じて100mgに減量可能
主な副作用:感染症(特に帯状疱疹)、消化管穿孔、血球異常、間質性肺炎、肝機能障害、静脈血栓塞栓症など
詳しい情報はこちらから
JAMA. 2019;322(4):315-325 (The FINCH 2 Randomized Clinical Trial)
生物学的製剤を1剤~3剤以上使用された症例に対しても、フィルゴチニブはプラセボに比べ有意に高い12週後、24週後のACR20改善率を認めました。
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