成人発症スティル病の病型、症状、検査、診断
病型
成人発症スティル病は臨床症状と治療反応に基づいて2つの異なる病型に分類されます。
全身型(74%)
主に発熱、発疹、多臓器の関与を特徴とする表現型です。IL-18、IFN-γ、IL-10、IL-4は全身型に関連するサイトカインであることが報告されています。
関節炎型(26%)
慢性多発性関節炎を特徴とするこの病型は、慢性滑膜炎を伴い、未治療の場合、40%で関節損傷に進行します。10年間の縦断研究では、関節炎型患者の50%が進行性関節炎を発症し、そのうち20%が関節置換手術を必要としました。関節表現型はIL-1阻害剤に対する反応が低く、寛解率は50%にとどまります。関節リウマチの治療に有効な抗TNF薬剤(例:エタネルセプト)は関節炎型で50%の有効性を示します。IL-6、IL-17、IL-23は関節炎型と関連しているサイトカインであることが示されています。
臨床症状・所見
成人発症スティル病は39℃以上の発熱、サーモンピンク色の発疹、関節痛/関節炎を三主徴としますが、他にもさまざまな臨床症状が認められます。

文献1】より
発熱
成人発症スティル病患者の98%で認められる発熱は、39℃以上に達し、1日1回~2回のピークを迎える間欠熱(午後遅くや夕方に見られる)で、発作間で自然に解熱します。成人発症スティル病患者を対象とした後ろ向きコホートでは、95%が初期症状として発熱を呈し、しばしば疲労や倦怠感などの全身症状を伴っていました。発熱はIL-6を介して引き起こされており、研究では発熱の重症度とIL-6レベルの間に直接的な相関があることが示されています。
関節炎/関節痛
多関節炎/関節痛は成人発症スティル病患者の70〜74%で報告されており、主に手首、膝、足首に影響を及ぼします。一過性関節痛から破壊性多発性関節炎まで幅広く、慢性症例では関節リウマチと鑑別が必要となります。関節炎は初期には移動性ですが、病気の進行に伴い悪化し、多関節炎に発展することがあります。滑膜生検では好中球浸潤を認め、免疫染色をするとIL-1、IL-6が豊富に検出されます。未治療の関節症例の40%で関節裂隙狭小化やびらんを含むX線上の骨関節病変が観察されます。
発疹
発疹は成人発症スティル病患者の85%に認められ、通常は体温の上昇とともにかゆみを伴わないサーモンピンク色の紅斑性発疹が出現し、解熱すると消失します。皮膚描記症(皮膚を軽く掻くとじん麻疹ができる状態)やケブネル現象(皮膚に刺激が加わると原疾患と同じ皮疹が出る事)が認められる症例もあります。好中球性蕁麻疹性皮膚炎、結節性紅斑、持続性プラークなどの非定型症状が20%の症例で報告されています。組織学的検査では、リンパ球による血管周囲浸潤、真皮上部の炎症性細胞浸潤、基底の液化、角化細胞壊死などが認められます。

文献6】より
咽頭痛
成人発症スティル病患者の約60%で見られる咽頭痛はIL-18による炎症に関連する初期の症状です。この症状はしばしば感染性咽頭炎と誤認され、成人発症スティル病患者を対象とした研究では、40%の症例で不適切な抗生物質使用が報告されていました。咽頭痛は通常、体温の急上昇と同時期に起こり、体温が正常に戻ると軽快します。
リンパ節腫脹
成人スティル病患者の約45%に反応性リンパ節腫大が出現し、好発部位は頚部で、悪性リンパ腫との鑑別が重要で、生検を必要とする場合があります。リンパ節生検では、通常、濾胞および皮質側の拡張を伴う反応性過形成が明らかになります。PET-CT検査は、成人発症スティル病関連リンパ節腫大と悪性リンパ腫の鑑別に有用性を示しております。
肝脾腫
肝腫大は患者の6.6〜71%に認められ、肝機能障害を伴うことがあります。脾腫は最大83.7%の患者に認められます。肝脾腫ともに腹部超音波検査・CT検査で検出されます。
漿膜炎
胸膜炎(2.9〜53.2%)または心膜炎(2.6–37.1%)の症状としては胸痛または呼吸困難として現れます。場合によっては心臓タンポナーデのために心嚢穿刺が必要な場合があります。早期発見のために心エコー検査が推奨されております。
その他の症状
その他の症状としては、筋痛症(13〜95%)、体重減少(11.5–66.1%)、間質性肺炎(詳しく後述1.0–15.0%)、肺動脈高血圧症(2.9%)、神経学的合併症(無菌性髄膜炎や脳神経麻痺:3%)、消化器症状(26.8%)などがあります。筋痛症はしばしば重度で、患者の60%で移動能力に影響を及ぼします。神経症状はIL-18値の上昇(>10,000 pg/ml)と関連しており、MRIでは70%の症例で髄膜増強が認められています。
重篤な合併症
成人発症スティル病では生命を脅かす以下の合併症の存在が知られており、早期発見と積極的な管理が必要です。

文献2】より
マクロファージ活性化症候群(Macrophage Activation Syndrome:MAS)
MASは成人発症スティル病患者における最も重篤かつ生命を脅かす合併症(死亡率は20%から42%の範囲)の一つであり、サイトカインが大量に放出されることによる急性全身性炎症反応です。成人発症スティル病患者におけるMASの発生率は23%と報告されています。MASは骨髄または脾臓の血球貪食像の増加、高フェリチン血症(>10,000 ng/ml)、血球減少症(例:ヘモグロビン<9 g/dL、血小板<100,000/mm3)、および多臓器不全(例:肝臓、腎臓)を特徴とします。成人発症スティル病のすべての患者において、フェリチンは定期的に測定されるべきです。成人発症スティル病の患者でMASを発症した場合、典型的な発熱パターンの変化(間欠的熱から非間欠熱へ)が起こります。
肺疾患
成人発症スティル病患者の約12%に肺疾患の合併が見られます。高齢者(中央値年齢50歳)に多いです。肺疾患は、CD4およびCD8リンパ球の間質性炎症浸潤と、肺胞内におけるタンパク質の沈着によって特徴づけられます。主な症状は呼吸困難です。胸部CTでは、末梢の硬化(60%)、スリガラス状陰影(50%)、間質的マーキング(30%)など多彩な画像パターンを示し、肺機能検査では80%で拘束性パターンが見られます。小児においてはパルスオキシメトリー(特に連続パルスオキシメトリー)は、肺疾患の早期発見に役立ちます。肺疾患による死亡率は38%と報告されています。
劇症肝炎
トランスアミナーゼ異常高値(AST/ALTの正常の上限の5倍以上)、黄疸、凝固障害を特徴とする劇症肝炎は、成人発症スティル病患者の<5%に発生します。43%の症例が急性肝不全に進行し移植を必要とし、移植後の生存率は60%です。死亡率は24%です。
バイオマーカー
現在、成人発症スティル病の経過を監視するためにいくつかのバイオマーカーが用いられていますが、診断を確定できる特定のバイオマーカーはまだ存在しません。

文献1】より
検査所見(日常臨床で測定可能な検査項目)
典型的な成人発症スティル病患者の検査所見では、好中球増加を伴う白血球増加(73〜100%)、 CRP(70〜100%)や赤血球沈降速度(68.9〜100%で≥40 mm/h)などの急性期反応物の上昇、肝酵素の上昇、フェリチン値の著しい上昇が見られます。リウマチ因子や抗核抗体は通常陰性です。貧血や低アルブミン血症もよく観察されます。好中球対リンパ球比(NLR)は、成人発症スティル病患者で非成人発症スティル病患者よりも高いことが確認されました。NLRは成人発症スティル病の診断ツールとして感度91.7%、特異度68.4%を示し、ESR、CRP、フェリチンなど他の炎症マーカーよりも有意に高かったと報告されています。
フェリチンおよび糖化フェリチン
高フェリチン血症(34.0〜97.6%が≥1000 ng/mL、19.5〜60.0%が≥3000 ng/mL)は成人発症スティル病の特徴であり、>5,000 ng/mlのレベルは重症化を示し、MASなどの合併症のリスク因子となります。フェリチンレベルは通常、IL-1β、IL-18、TNF-α、IFN-γの増加と相関しており、サイトカイン・ストームへの進展に寄与する可能性があります。しかし、感染症、肝臓、腎臓疾患、悪性腫瘍など他の疾患でも高フェリチン血症が観察されていて、より有用なバイオマーカーとしては、感度と特異度が比較的高い糖化フェリチンが注目されています。健康な成人では、フェリチンの50〜80%が糖化されていますが、成人発症スティル病(95%)では、糖化フェリチンのレベルが20%未満であることが報告されていて、他の高フェリチン血症をきたす疾患との鑑別に有用です。ただし、糖化フェリチンの測定は日常臨床では一般的ではありません。
サイトカイン(IL-18、IL-37)
成人発症スティル病患者ではIL-1、IL-6、IL-18、IL-37などのサイトカインが血清中に高濃度で検出されています。IL-18値は、成人発症スティル病の活動期に有意に上昇し(中央値 16,327 pg/ml)、疾患活動性、フェリチン、ESRレベルと正の相関があることがわかりました。
寛解時には正常域(470 pg/ml)まで低下します。IL-18は再燃の時にも上昇します。5,000 pg/mlをカットオフとした場合、活動性成人発症スティル病の指標として96.9%の特異性と63.3%の感度を有します。IL-18レベル>10,000 pg/mlはMAS、肺疾患、劇症肝炎のリスクと強く関連しております。
IL-37はIL-1ファミリーメンバーであり、調節サイトカインとして機能し、成人発症スティル病患者と健康対照群の区別に役立ち、成人発症スティル病の新規疾患活動バイオマーカーとして注目を集めています。
新規のバイオマーカー
抗炎症作用を持つ誘導酵素ヘムオキシゲナーゼ-1は、活動期の成人発症スティル病で上昇し、酸化ストレスやマクロファージの活性化を反映しています。カルプロテクチン、ガスデルミンDのN末端、S100タンパク質は好中球およびマクロファージの活性化を反映し、疾患活動性と相関しています。
診断と診断上の課題
成人発症スティル病の診断は、非特異的な症状と病態バイオマーカーの欠如により、診断はしばしば遅れることが多くあります。症状の発症から確定診断までの期間は、1ヶ月から4年(平均18か月)の範囲でした。感染症(例:心内膜炎、結核)、悪性腫瘍(例:リンパ腫)、自己免疫疾患(例:SLE、血管炎)などの診断を鑑別し除外ことが重要です。成人発症スティル病は原因不明の発熱の一般的な原因であり、不明熱症例の20%が最終的に成人発症スティル病と診断されています。
診断基準
成人発症スティル病の診断には、山口基準とFautrel基準が最も広く使われています。Fautrel診断基準は糖化フェリチンの測定を求めており、多くの医療施設では利用できない場合があります。

文献2】より
山口の基準
【大基準】
1.39℃以上の発熱が1週間以上持続
2.関節痛が2週間以上持続
3.典型的な一過性の発疹
4.白血球数 10,000/mm3以上、その内 好中球80%以上
【小基準】
1.咽頭痛
2.リンパ節腫脹
3.肝脾腫
4.肝機能異常
5.リウマチ因子および抗核抗体陰性
【除外基準】
1.感染症(特に敗血症や伝染性単核球症)
2.悪性腫瘍(主に悪性リンパ腫)
3.その他のリウマチ性疾患(主に結節性多発動脈炎や関節外症状を伴うリウマチ性血管炎)
【要件】
少なくとも5つの基準(うち2つの大基準)を満たした場合の、感度96.2%、特異度92.1%です。
Fautrel基準
【大基準】
1.39℃以上の発熱
2.関節痛
3.一過性発疹
4.咽頭痛
5.好中球80%以上
6.糖化フェリチン20%以下
【小基準】
1.丘疹性紅斑
2.白血球症 10,000/mm3以上
【要件】
4つの主要基準または3つの大基準と2つの小基準を満たした場合、感度80.6%、特異度98.5%です。
文献
1】Advancing Precision Medicine in Adult-Onset Still’s Disease: Insights into Biomarkers, Therapies, and COVID-19 Impacts. Mediterr J Rheumatol 2025;36:509-523
2】Adult-onset Still’s disease in focus: Clinical manifestations, diagnosis, treatment, and unmet needs in the era of targeted therapies. Seminars in Arthritis and Rheumatism 2021;51:858-874. doi.org/10.1016/j.semarthrit.2021.06.004
3】Systemic juvenile idiopathic arthritis and adult- onset Still’s disease are the same disease: evidence from systematic reviews and meta- analyses informing the 2023 EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease. Ann Rheum Dis. 2024; 83(12):1748-1761. doi: 10.1136/ard-2024-225853.
4】EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease, comprising systemic juvenile idiopathic arthritis and adult- onset Still’s disease. Ann Rheum Dis. 2024;83:1614-1627. doi:10.1136/ard-2024-225851
5】Updates on the pathogenesis and molecular targeted therapies of Still’s disease. Immunol Med. 2026;49:130-146. doi: 10.1080/25785826.2025.2576285.
6】Managing the clinical heterogeneity of patients with Still’s disease, from early diagnosis to timely treatment. Autoimmunity Reviews 24;2025:103880. doi.org/10.1016/j.autrev.2025.103880