後藤内科医院、リウマチ科、内科

関節リウマチ

関節リウマチ

関節リウマチとは

  関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、主に関節に炎症が起きて痛みや腫れを生じ、進行すると関節の変形や機能障害をきたしうる病気です。関節リウマチは膠原病の一種で、自分自身を異物とみなして攻撃してしまう自己免疫疾患です。日本における関節リウマチ患者数は約80 万人と推定されており、男女比は1:3.2と女性に多いです。関節リウマチは全身性の慢性の多発性滑膜炎です。滑膜とは関節の周囲を取り囲むように存在する膜で、滑膜に炎症が起きて、増殖がおきる(この状態をパンヌスと呼びます)と、関節が腫れ、関節液がたまることになります。滑膜から産生される炎症物質などの作用で痛みが生じます。ですから、関節リウマチの初期には、軟骨や骨に病変が及んでいない場合は、関節のレントゲンを撮っても異常が見られないことがあります。

 

関節リウマチの症状

 

関節リウマチの診断

現在一般的に、関節リウマチの診断には、1987年にアメリカリウマチ学会で作成された分類基準が使われています。

 

この診断基準は、
 (1)6週間以上持続する朝のこわばり(1時間以上続くこと)
 (2)6週間以上持続する3個所以上の関節の腫れ
 (3)6週間以上持続する手の関節(手関節、中手指節関節(第3関節)、近位指節関節(第2関節))の腫れ
 (4)6週間以上持続する対称性の関節の腫れ
 (5)手のエックス線写真の異常所見
 (6)皮下結節
 (7)血液検査でリウマチ因子が陽性

 

の7項目からできています。 このうち4項目以上満たせば関節リウマチと診断します。つまり、リウマチ因子陽性だけでは、関節リウマチと診断できないわけです。

 

しかし、この基準では、早期の関節リウマチを見つけることは非常に困難なため、2010年に新たにアメリカ/欧州リウマチ学会で、関節リウマチの早期分類基準が発表されました。この基準によれば、1つ以上の関節腫脹を認めれば、スコアリング(表:アメリカ/欧州リウマチ学会の新関節リウマチ分類基準)に基づき、関節リウマチと診断できます。ただし、他の関節腫脹を来たす疾患を鑑別する必要があります。他の関節腫脹を来たす疾患としては変形性関節症、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、血管炎、痛風、ベーチェット病、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などが挙げられます。

 

表:アメリカ/欧州リウマチ学会の新関節リウマチ分類基準

 

項目が4つに分けられています。それぞれの点数を算出し、合計が6点以上の場合に関節リウマチと診断されます。

腫れ・痛みのある関節の数 点数
中・大関節に1つ以上の腫脹または疼痛関節あり 0点
中・大関節に2~10個の腫脹または疼痛関節あり 1点
小関節に1~3個の腫脹または疼痛関節あり 2点
小関節に4~10個の腫脹または疼痛関節あり 3点
1つの小関節を含む11個以上の腫脹または疼痛関節あり 5点

「中・大関節」とは肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足関節(くるぶしの関節〉を指します。「小関節」とは手足の指・趾の関節の大部分、それに手首の関節を指します。DIP関節(指の第1関節)、第1CM関節(親指の付け根の関節)、第1MTP関節(足の母趾の第1関節)は評価対象外です。

 

免疫の異常 点数
リウマチ因子、抗CCP抗体ともに陰性 0点
リウマチ因子、抗CCP抗体の少なくとも1つが陽性・低力価 2点
リウマチ因子、抗CCP抗体の少なくとも1つが陽性・高力価 3点

陽性・低力価:正常上限値の1~3倍まで。陽性・高力価:正常上限値の3倍以上。
抗CCP抗体:シトルリン化蛋白は関節リウマチにおける主要な自己免疫のターゲットであることが明らかにされ、抗CCP抗体は、シトルリン化蛋白の一つであるフィラグリンのシトルリン化部位を含むペプチドを環状構造とした抗原 (CCP:cyclic citrullinated peptide) を用いて検出される関節リウマチ特異的な自己抗体です。関節リウマチの早期診断に有用です。

 

症状の持続期間 点数
6週間未満 0点
6週間以上 1点

 

炎症反応 点数
CRP、ESRともに正常 0点
CRP、ESRのいずれかが異常 1点

 

この診断基準で6点以上であれば、関節リウマチと診断できるわけですが、4-5点の方が、関節リウマチではないと判断するのは非常に難しいといえるでしょう。そこで、関節炎を起こしている部位の関節MRI検査を受けることをお勧めします。関節X線検査で正常に見えても、関節MRI検査により、早期に関節リウマチの病変(びらん:骨の一部が欠けた状態、滑膜炎)が認められることがあります。

 

以上のように、関節リウマチには決め手となる検査はなく、総合的に判断して診断をしています。

 

関節リウマチの疫学、歴史

 


関節リウマチ記事一覧

関節リウマチの症状

関節リウマチの症状は関節症状と関節外症状に分けることができます。関節症状関節炎、朝の手のこわばりが主症状です。関節炎とは、関節痛、関節の腫脹・発赤・熱感・機能障害を伴うものをいいます。関節炎の部位として、手足の指、手関節などの小関節が多く、肘、肩、膝、足関節などにもみられます。多くは左右対称性に関節...

≫続きを読む

 

関節リウマチの疫学、歴史

関節リウマチの疫学 関節リウマチの日本における有病率は0.5~1%(約80万人)と推定されています。男女比は1:4程度と女性に多く、高齢になると関節リウマチの男女比は1:2~3と男性比率が高くなります。 関節リウマチの発症年齢は30~50歳代の発症(平均45.5歳)が最も多いのですが、日本人の高齢化...

≫続きを読む

 

リウマチ因子とは

Q1:リウマチ因子とはリウマチ因子(本当の名称はリウマトイド因子)は、免疫グロブリンのひとつであるIgGに対する自己抗体で本来関節リウマチに特異的な検査項目ではありません。関節リウマチ患者のリウマチ因子陽性率は約80%で、正常者でも1-5%程度陽性となります。Q2:リウマチ因子陽性となる疾患は?関節...

≫続きを読む

 

関節リウマチの病因

 関節リウマチの病因はいまだ不明ですが、遺伝的要因に、環境要因(細菌やウイルスの感染、過労やストレス、出産、閉経、喫煙、歯周病など)が加わって発症すると考えられています。 文献4】関節リウマチの遺伝的要因 よく患者さんから「関節リウマチは遺伝しますか?」と質問される事がありますが、答えは「部分的にY...

≫続きを読む

 

関節リウマチの病態生理(関節炎)

 滑膜炎は関節リウマチの特徴であり、関節リウマチの滑膜組織の病理では、滑膜の増殖、血管新生、多様な炎症細胞の浸潤が指摘されています。通常、滑膜は、1層または2層の滑膜細胞からなる薄い膜状の構造です。滑膜は、Fibroblast-Like Synovial (FLS)とMacrophage-Like ...

≫続きを読む

 

関節リウマチにおける細胞内シグナル伝達経路

 関節リウマチの疾患進行には細胞内の複数のシグナル伝達経路が関与しています。シグナル伝達経路の阻害剤が関節リウマチの治療薬(JAK阻害剤)として既に使用されており、現在新たな薬として開発中のものもあります。文献1]より1)JAK-STATシグナル伝達経路 JAK (Janus-activated K...

≫続きを読む

 

関節リウマチとエピジェネティックス

Epigenetic Regulation in RA エピジェネティクス(EPIGENETICS)とは、DNA配列の変化を伴わない染色体構造の変化を特徴とし、遺伝子発現の調節を起こす事を言います。エピジェネティクスにより、ある遺伝子はONとなり、別の遺伝子はOFFとなります。Histone Mod...

≫続きを読む

 

関節リウマチの病因(関節外病変)

関節リウマチは主に手足などの関節炎を特徴としますが、関節リウマチ自体は全身性疾患であり、ほぼすべての臓器系に影響を及ぼします。関節外症状は多岐にわたり(無症状の場合もあります)、皮膚や眼の症状、心血管疾患、呼吸器疾患、血液学的異常、リウマチ性血管炎、神経学的症状、アミロイドーシス、肝臓や腎臓の障害な...

≫続きを読む

 

関節リウマチの治療

当院では、できる限り、下記の関節リウマチ診療ガイドライン2014(一般社団法人日本リウマチ学会作成:治療目標~治療原則)、EULARリコメンデーション(Recommendation)2019年改訂版にしたがって、関節リウマチの治療を行っていきます。治療目標臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介...

≫続きを読む

 

抗リウマチ薬

 抗リウマチ薬(ここでは化学合成された抗リウマチ薬について説明します)は、免疫系を調整、もしくは抑制して、リウマチの状態を良くする薬です。直接的な抗炎症作用はほとんどありません。このため、ほとんどの抗リウマチ薬は遅効性で、効果発現まで1~2ヶ月を要します。最近は併用療法が注目されています。メトトレキ...

≫続きを読む

 

メトトレキサート

メトトレキサート(methotrexate:MTX)MTX(商品名、リウマトレックスカプセル、メトトレキサート錠など)は、関節リウマチの治療では世界中で最もよく使用される内服薬です。MTXは、免疫抑制作用を持つ抗リウマチ薬で、関節リウマチと診断されたらまず最初に使うべき薬剤の1 つです。MTXには、...

≫続きを読む

 

生物学的製剤

生物学的製剤とは 生物学的製剤とは化学的に合成されたものではなく、培養細胞や大腸菌などの細菌を利用し作成された、サイトカインなど生体由来の物質や細胞表面の物質などに反応する高分子化合物です。高分子化合物であるため、細胞内に入ることはなく、血液中、細胞外、細胞表面で作用します。具体的な生物学的製剤とし...

≫続きを読む

 

JAK阻害剤

JAK阻害剤の安全性について 2021年10月12日厚生労働省医薬・生活衛生局はJAK阻害剤トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)について、添付文書の「重大な副作用」の項に「心血管系事象」と「悪性腫瘍」を追記することなどを指示した。(ファイザー社から発行された「ゼルヤンツの安全性に関する重要なお知らせ...

≫続きを読む

 

関節リウマチ薬の内服の注意点Q&A

Q1:かぜをひいた場合、かぜ薬を内服してもよいか?A1:1)生物学的製剤(エンブレル、レミケード、ヒュミラ、シンポニー、アクテムラ、オレンシアなど)、免疫抑制剤(メトトレキサート:MTX、プログラフなど)、ステロイド、NSAIDSを投与されている場合は注意が必要です。主治医や薬剤師に相談してください...

≫続きを読む

 

リウマチ患者の日常生活上の注意

 リウマチの治療法としては、基礎療法、薬物療法、リハビリテーション療法、手術療法の4つが基本の柱となります。今回は、その中で、基礎療法、すなわち日常生活上の注意点について説明いたします。[1] 安静と運動 最初にリウマチ患者さんからよく聞かれる質問について検討してみましょう。リウマチの時は、「休んだ...

≫続きを読む

 

リウマチとインフルエンザ

Q1:どうしてリウマチ患者さんはインフルエンザの予防接種を受けたほうがよいのでしょうか?リウマチ患者さんでは免疫力が低下していることより、インフルエンザにかかると重篤な病態(肺炎など)になる可能性があります。さらに、リウマチ患者さんが内服しているボルタレンなどの消炎鎮痛剤(痛み止め)はインフルエンザ...

≫続きを読む

 

ACR・コア・セット、DAS

ACR・コア・セット  アメリカ・リウマチ協会(ACR)が作成した評価基準です。日本でも、薬の有効性を評価する基準に広く使われています。① 疼痛関節数② 腫脹関節数③ 患者による疼痛の評価( Visual analogue scale )④ 患者による全般的活動性の評価( Visual analog...

≫続きを読む

 

関節リウマチと喫煙

喫煙の関節リウマチへの影響1)Free radicalの産生の増加→炎症の誘発2)滑膜細胞のアポトーシスの抑制→滑膜細胞の異常増殖3)肺や気道においてシトルリン化蛋白を生成する→抗CCP抗体産生4)IL-1, IL-6, TNFαの産生増加5)メトトレキサート(MTX)のポリグルタミン酸化の抑制 M...

≫続きを読む

 

関節リウマチと脳心血管病変

関節リウマチと脳心血管病変 関節リウマチでは心房細動、心筋梗塞、脳卒中などの脳心血管病変の発症リスクが高いことが知られている。下表のごとく、関節リウマチでは、心筋梗塞、脳卒中などの脳心血管病変の発症リスクが1.29-1.96倍増加する。 このリスクは年齢が若いほど高くなる。 また、関節リウマチでは心...

≫続きを読む

 

関節リウマチと悪性腫瘍

関節リウマチ患者における悪性腫瘍発症率は、一般住人とほぼ同じ 関節リウマチ患者において、悪性腫瘍の発症率を一般住人の発症率と比べたmeta-analysisが2015年に下記のごとく発表されました。 この図では、全悪性腫瘍の発症率に関して、23の文献をまとめ、Total pooled SIRが算出さ...

≫続きを読む

 

関節リウマチと妊娠

 2018年9月12日(水)国立成育医療研究センター 主任副センター長 村島 温子 先生の講演「関節リウマチ・リウマチ膠原病疾患の妊娠」、2018年9月22日(土)豊橋市民病院 リウマチ科 部長 平野 裕司 先生の講演「女性関節リウマチ患者の妊娠・出産と関節リウマチの薬物治療」を拝聴してきました。印...

≫続きを読む

 

リウマチと災害

 2018年 12月2日JCR2018 全国中央教育研修会 大阪大会に出席し、冨岡 正雄先生(大阪医科大学 救急医学教室 准教授)の「災害時の医療制度について- 関節リウマチを含む慢性疾患の患者支援のために知っておくべき知識 -」を拝聴してきました。印象の残ったコメントを掲載いたします。災害の関節リ...

≫続きを読む

 

関節リウマチの手術

 2019年5月23日(木)浜松医科大学整形外科 鈴木基裕先生による講演「最近の関節リウマチ治療の要点-診断・薬物療法から手術治療まで-」を拝聴してきました。印象の残ったコメントを掲載いたします。少し勉強したことも追加してあります。 北米からの報告でも関節リウマチ患者の入院が半減していることが示され...

≫続きを読む

 

ホーム RSS購読 サイトマップ