後藤内科医院、リウマチ科、内科

ボディ・コネクト・セラピー

ボディ・コネクト・セラピー

ボディコネクト・セラピー(Body Connect Therapy:BCT)は東京未来大学教授の藤本昌樹先生が開発されたトラウマに対する身体志向心理療法です。私は2019年にBCTのCore Skillの研修を受け資格を取りました。2019年には3つの本(6】、7】、8】)でBCTが紹介されていました。今年(2026年)は藤本先生がBCTを発想されてからちょうど10年になります。さらに、藤本先生は、精力的に今年3冊の本を著者/編集者(1】、2】、3】)として出版され、英語の論文も2つの雑誌(4】、5】)に掲載されました。私はこの3冊の本(1】、2】、3】)、英語の論文1つ(4】)を拝読させていただきました。さらに2026年8月4日には本(1】)の発売記念の講演会を視聴し、8月15日にはBCTブラッシュアップ研修会にも参加しました。そこでBCTについて少しだけ深堀してまとめてみることとしました。さらに詳しく知りたい方はBCTのホームページをご覧ください。

 

BCTの基本概念

BCTは藤本先生の臨床経験と藤本先生が習得されていたTFT(つぼへの刺激)、EMDR(眼球運動)、ソマティック・エクスペリエンシング(身体感覚への注目)などの身体志向心理療法を統合して考案された画期的な心理療法です。BCTは、日本で開発された身体指向型のトラウマ治療法で、眼球運動(西洋で開発されたもの)と経穴刺激(東洋で開発されたもの)を統合した手法です。BCTの中心には「身体に委ねる」という基本概念があり、以下の三つの基本原則に基づいています。
(1) 身体が主導する
(2) 身体が安全を感じる
(3) 自然な治癒能力が働く

 

なぜ、トラウマの方の心ではなく、身体に対して、介入するのが有効なのでしょうか

トラウマは過去の出来事ですが、「現在の身体反応」として残っていると考えるからです。頭では安全とわかっていても、身体は危険に備えてしまうのです。脳は予想する器管です。脳は次に何が起きるかを先回りして、身体に準備をさせるのです。ですから、ちょっとしたきっかけ(脅威)で身体が先に反応してしまい、この反応が「ああ、やっぱり予想通りだった」という脳の予測を強化するのです。トラウマの身体への影響に関しては、不定愁訴とトラウマのページ内の「トラウマはどうして身体症状を引き起こすか?」も参照してください。

 

BCTの手法

BCTにはグラウンディング、センタリング、ボディ・コネクト・タッチ、リソース・コネクトなどさまざまなテクニックがありますが、主なBCTテクニックはサイドボディコネクトです。サイドボディコネクトでは、まずクライアントにトラウマ的な内容を思い出してもらい、その時に感じる身体感覚—多くの場合、緊張、不快感、または痛みなど—に意識を集中してもらいます。その後、目を閉じてもらい、ゆっくりと左右に水平に目を動かし、どちらの方向がより動かしやすいかを確認します。この好ましい(動かしやすい)方向が確立されると、クライアントは目を開け、セラピストの指針に従い、ゆっくりとした好ましい(動かしやすい)方向への片側の眼球運動を行います。眼球運動中、クライアントは同時にセラピストの指示に従い、自分の体の特定の経穴に順番に優しくトントンと刺激(タッピング)を加えます。

 

 

BCTやEMDRで使われる眼球運動はトラウマ処理においてどのような効果を持っているのでしょうか?

藤本先生は論文4】において上丘に注目されています。上丘は中脳に位置し、視覚、聴覚、体性感覚の情報を統合するとともに、環境における脅威を検出に関与します。トラウマに関連する上丘からの下行経路が2つあります。第一は、上丘から中脳水道周囲灰白質への経路です。中脳水道周囲灰白質は自律神経(交感神経、副交感神経)の調節に関与する中枢神経系のひとつです。第二は、上丘から扁桃体への経路です。扁桃体は負の感情に関連する脳領域で、トラウマに最も関連する脳領域(不定愁訴とトラウマのページ内の「トラウマはどうして身体症状を引き起こすか?」参照)のひとつです。トラウマにおいては、上丘を介する上記の2経路が過剰活性化され、安全な環境でも慢性的な脅威が続き、過敏反応、驚愕反応、自律神経調節障害などが生じます。

 

 

 

重要なのは、上丘が眼球運動制御、特にサッカード眼球運動(ある目標に向かって素早く視線を移動させる時に生じる急速な眼球運動)に密接に関与していることです。BCTやEMDRで用いられる随意的な眼球運動は、上丘-中脳水道周囲灰白質系および上丘-扁桃体系の中枢神経回路に影響を及ぼし、自律神経系ならびに感情系の両方を調節する可能性があります。特にBCTにおける好ましい方向への随意的な眼球運動は、上丘活動を調節し、より安全に処理を進めさせる可能性があります。

 

BCTやTFTで使われるタッピングはトラウマ処理においてどのような効果を持っているのでしょうか?

BCT中、クライアントはセラピストの指示に従い、自分の体にタッピングを施します。経穴へのタッピングの効果の理論的根拠は依然として明確ではありません。リズミカルな触覚刺激が辺縁系および自律神経系を調節する可能性を示唆する研究がありますが、これらの効果が経穴部位あるいは非経穴部位に特異的であることは決定的に確立されていません。経穴特異的刺激が非経穴部位へのリズムカルな触覚刺激以上の効果をもたらすかどうかは、さらなる研究を必要とします。

 

文献

1】 藤本 昌樹 著:生きづらさの正体は、からだが知っている ボディ・コネクト・セラピー・ワークブック 2026年5月18日出版 ‎ 星和書店
2】 藤本 昌樹 著:ウェルビーイングをめざす新しい発達障害学入門: 理解から支援へ 2026年7月24日出版 ‎ 北樹出版
3】 あらい ぴろよ 著、藤本 昌樹、菊地 祐子 監修:トラウマのほぐし方  2026年6月24日出版 ‎ 光文社
4】 Masaki Fujimoto:A predictive processing framework for body-oriented trauma intervention: a hypothesis illustrated by Body Connect Therapy. Front. Psychol. 2026;17:1781289.
doi: 10.3389/fpsyg.2026.1781289
5】 Masaki Fujimoto:Body connect therapy for trauma: Two case reports illustrating clinical applications across acute and complex presentations. Explore 2026;22:103369.
doi: 10.1016/j.explore.2026.103369.
6】 杉山登志郎 編:発達性トラウマ障害のすべて こころの医学 2019年9月15日発行 日本評論社
7】 白川美也子 監修:トラウマのことがわかる本 2019年6月25日発行 講談社
8】 杉山登志郎 著:発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療 2019年1月30日発行 誠信書房

 

<<2026年9月11日作成>>

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