後藤内科医院、リウマチ科、内科

成人発症スティル病の治療

成人発症スティル病の治療

成人発症スティル病の治療戦略は大きく進化しており、炎症のコントロール、合併症の予防、長期的な後遺症の最小化を目指します。2023年欧州リウマチ学会連合(EULAR)と小児リウマチ学会(PReS)は以下に示すように全身性若年性特発性関節炎と成人発症スティル病の診断および管理に関する推奨事項を発表しました。治療目標として、臨床的非活性疾患(CID)と寛解(CIDが少なくとも6か月間維持される)が定義されました。最適な治療戦略としては、短期間のみグルココルチコイドを使用し、以後はIL-1またはIL-6阻害剤の早期使用にて対応すべきということです。マクロファージ活性化症候群に対しては高用量のグルココルチコイド、IL-1阻害剤、シクロスポリンおよびインターフェロンγ阻害剤にて治療すべきです。

 


文献4】より

 

スティル病患者を管理するための治療アルゴリズムを下図に示します。
Part I:スティル病の活動性をまず評価します。疾患活動性が高い状態としては、高熱、広範囲の多発性関節炎、Visual Analogue Scaleで>6–7/10以上の激しい痛み、心膜炎、差し迫ったマクロファージ活性化症候群の危険性(腹部エコーやCT検査での肝臓の脂肪濃度上昇、血清フェリチン値の上昇:>5,000 ng/ml)が含まれます。高疾患活動性の場合、高用量グルココルチコイド(成人でプレドニゾン相当の1 mg/kg/日、小児では2 mg/kg/日)に加え、IL-1阻害剤もしくはIL6R阻害剤を投与します。疾患活動性が高くない場合はIL-1阻害剤もしくはIL-6R阻害剤±低~中等用量グルココルチコイド(成人でプレドニゾン相当の0.1~0.5 mg/kg/日、小児では0.2~1 mg/kg/日)で治療を開始します。アナキンラはマクロファージ活性化症候群が差し迫っている患者にとって最適な選択肢です。このような状況では、高用量アナキンラ(小児では>4 mg/kg/日、成人は100 mg 1日2回)がよく使用されます。低用量グルココルチコイド(成人でプレドニゾン相当の0.1 mg/kg/日、小児では0.2 mg/kg/日)で臨床的非活性疾患(CID:発熱がなく、活動関節の50%減少)の状態となり、3か月経過したら、IL-1阻害剤もしくはIL-6R阻害剤を継続しながら、グルココルチコイドのテーパリングを開始すべきです。3カ月目の目標に達しない場合はIL-1阻害剤もしくはIL-6R阻害剤の変更を検討すべきです。治療困難なスティル病は、ERNセンター(ヨーロッパのスティル病の専門センター、日本の場合、リウマチ科のある総合病院)へのコンサルトが必要です。感染のルールアウトも必要で、シクロスポリン投与、実験的治療(JAK阻害剤、エマパルマブ、IL-1/IL-18に対する二重特異的抗体)も選択可能です。実験的治療の選択は、ERN専門家と相談の上で、疾患の特徴(例:慢性再発性マクロファージ活性化症候群、重度かつ持続的な関節障害、肺疾患)によって決定されます。

 

Part II:グルココルチコイド・フリーのCID(IL-1阻害剤もしくはIL-6R阻害剤投与、実験的治療継続しながら)が6か月継続したら、寛解と判断します。寛解となったら、 IL-1阻害剤、IL-6R阻害剤、実験的治療の減薬(通常薬剤の投与間隔の延長)を開始します。再発時にはERNセンターへのコンサルトが必要です。最終的に薬剤フリー寛解となっても、スティル病の再発を示す兆候や症状、その時の医療チームに連絡法について、患者に教育し、カウンセリングすることが必要です。また、診察間隔が空いてもかまわないので、経過観察を継続することも重要です。

 


文献4】より

 

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

軽度の成人発症スティル病にはイブプロフェンやナプロキセンなどの薬剤が用いられ、20〜30%の患者で症状のコントロールが達成されています。NSAIDsは単発の発熱や軽度の関節痛に効果的です。

 

グルココルチコイド

中等度から重度の成人発症スティル病ではプレドニゾロン(0.5–1 mg/kg/日)が初期投与量として使用され、反応率は50〜60%です。メチルプレドニゾロン・パルス療法(メチルプレドニゾロン1g/日3日間)は重症例(マクロファージ活性化症候群や漿膜炎など)に限定使用されます。長期のグルココルチコイド使用により、骨粗鬆症、糖尿病、クッシング症候群などの副作用を発症することが知られており、グルココルチコイドを減量するための薬が早期に導入されることが多いです。

 

従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)

成人発症スティル病患者(特に関節炎型)では、DMARDで治療されることがあり、メトトレキサートが最も一般的に使用されていす。シクロスポリンA、アザチオプリン、レフルノミド、ヒドロキシクロロキンなども成人発症スティル病患者に有益であることが示されています。メトトレキサート(15〜25 mg/週)は、関節炎型成人発症スティル病では40–50%の反応率を有しています。寛解に達する例や関節破壊を防ぐ効果もあります。

 

生物学的製剤

コルチコステロイドを早期に減量する目的でIL-1阻害剤やIL-6R阻害剤などの生物学的製剤投与が推奨されています。欧州リウマチ学会連合(EULAR)と小児リウマチ学会(PReS)のタスクフォース特にIL-1またはIL-6を標的とした生物学的製剤が開始可能な場合、一部の患者がグルココルチコイドを必要としない場合があることを認めています。ある研究ではこれらの薬剤は症状発症から3か月以内に開始すべきであることを示唆しています。TNFαも成人発症スティル病の病因に関与しており、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなどの抗TNF阻害薬は、成人発症スティル病に対する関節炎および全身症状の改善が複数の報告で示されましたが、支持する証拠は観察研究およびコホート研究に限られています。

 

IL-1阻害剤

カナキヌマブとアナキンラはそれぞれIL-1βおよびIL-1受容体を標的とするIL-1阻害剤です。IL-1阻害剤はIL-1シグナル伝達経路を抑制し、それによりIL-6およびIL-18のレベル低下も引き起こします。現在、ヨーロッパではカナキヌマブとアナキンラのIL-1阻害剤の両方が承認されており、米国、日本ではカナキヌマブのみが承認されています。抗IL-1薬による治療は、従来の治療に抵抗性の成人発症スティル病患者で有意に効果的です。IL-1阻害剤への反応は迅速かつ持続的であり、患者はコルチコステロイドへの依存を減らすことができます。1つのIL-1阻害剤が無効であっても、他のIL-1阻害剤による効果の無効になるとは限りません。

 

<カナキヌマブ>
カナキヌマブはIL-1βを標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体です。通常は皮下注で4〜8週間ごとに150–300mgで投与されます。カナキヌマブは、第III相試験で100人の成人発症スティル病患者を対象に、12か月で90%が寛解を維持し、再発を85%減少させました。日本で実施された成人発症スティル病に対するカナキヌマブのオープンラベル研究では、ACR30の反応率が8週目に54.5%、12週目で70%と報告されています。

 

<アナキンラ>
アナキンラはヒトIL-1受容体アンタゴニストで、IL-1αとIL-1βの両方を標的とします。アナキンラは半減期が短く(6〜8時間)、通常は1日100mg(小児では1–2 mg/kg/日)の単位で皮下注されます。さらに、承認されていないものの、生命を脅かす合併症やマクロファージ活性化症候群が見られたりする場合には静脈注射経路が検討され、最大400 mg/日まで増加させることがあります。複数のシステマティックレビューでアナキンラの効果に関する累積データが報告されています。系統的レビューでは、455件の成人発症スティル病症例を対象に、320人が完全寛解(約70%の寛解率)を達成しました。

 

<リロナセプト>
別のIL-1阻害剤であるリロナセプトは、IL-1受容体の細胞外ドメインとヒトIgG1 Fc領域と融合した可溶性二量体融合タンパク質であり、全身性若年性特発性関節炎におけるランダム化二重盲検プラセボ対照試験でその効果を示しました。しかし、成人発症スティル病に対する効果は症例報告に限定されています。

 

IL-6阻害剤

IL-6は急性期タンパク質の産生を誘導するだけでなく、細胞毒性CD8 T細胞の分化を促進し、Tregの分化を阻害します。IL-6は成人発症スティル病の発症に関与するもう一つの中心サイトカインであり、しばしば関節症状と関連しています。トシリズマブはIL-6の受容体(IL-6R)との結合を競合的に阻害します。通常の投与量は、体重30kg以上の場合は2週間に1回8mg/kg、体重30kg未満の場合は2週間に12mg/kgです。トシリズマブは日本、アメリカ合衆国、ヨーロッパでは全身性若年性特発性関節炎に対し承認されていますが、成人発症スティル病に対しては日本のみで承認されています。最近のメタアナリシスでは、147人の成人患者が分析されました。部分寛解率と完全寛解率はそれぞれ85.3%と77.9%でした。トシリズマブは、関節炎型成人発症スティル病症例の60〜70%に効果を示し、関節スコア(DAS28)を改善し、全身マーカー(CRP、ESR)を減少させます。ただし、5%がアナフィラキシー反応を起こしたと報告されており、慎重なモニタリングが必要です。他のIL-6R阻害剤については、スティル病におけるグルココルチコイド用量の減少にサリルマブの有効性を示した症例報告は1件のみです

 

新興療法

IL-18標的治療法(ヒトIL-18結合タンパク質の組換えであるタデキニグ・アルファ)、IFN-γ標的治療(エマパルマブ)、およびJAK/STAT阻害薬が研究中です。タデキニグ・アルファは、IL-18駆動炎症を標的とした治療法で、30名の成人発症スティル病患者を対象とした第II相試験において、70%の患者のマクロファージ活性化症候群の重症度を軽減しました。エマパルマブは小規模な研究で難治性マクロファージ活性化症候群症例の70%で寛解を達成しましたが、成人発症スティル病に関するデータは限られています。JAK阻害薬(例:トファシチニブ)はIL-6やインターフェロンシグナルを含む幅広い免疫経路を抑制します。最近では、全身性若年性特発性関節炎(NCT03000439)に対するトファシチニブの第III相ランダム化離脱試験が実施されました。80%以上が8週目にJIA-ACR30反応を示したものの、プラセボ群も離脱段階で良好な治療反応を示し、主要評価項目を達成できませんでした。スティル病におけるJAK阻害剤の有効性を明らかにするためにはさらなる解析が必要です。

 

IL-1βおよびIL-18の両方を標的とする二重特異的モノクローナル抗体MAS825の有効性は、アナキンラおよびシクロスポリンに耐性を持つ全身性若年性特発性関節炎関連マクロファージ活性化症候群の症例シリーズで報告されています。さらに、mTOR経路がスティル病の病因に関与していることから、mTOR阻害剤の有効性も調査されています。mTOR阻害剤ラパマイシンが、IL-1、IL-6、TNF、JAK阻害薬で寛解を維持できなかった難治性全身性若年性特発性関節炎患者の疾患活動を効果的に改善した事例を報告されています。

 

マクロファージ活性化症候群(MAS)の治療

高用量コルチコステロイド(例:メチルプレドニゾロン1g/日3日間)が第一選択薬で、48時間以内に80%の効果率を示します。デキサメタゾンは中枢神経系の関与がある場合に検討すべきです。IL-1阻害薬(アナキンラ100mg/日、カナキヌマブ150〜300mg/4〜8週間ごとに)が難治性症例の90%に効果を発揮します。IL-18結合タンパク質(タデキニグ・アルファ)およびエマパルマブ(抗IFN-γ)は新たな治療法であり、小規模な試験では難治性MAS症例の70%で寛解を達成しています。

 

ルキソチニブはJAK1/2阻害薬で、JAK/STATシグナル伝達を標的とし、MASによるサイトカイン・ストームを減少させます。第II相試験(n=20)では、難治性MASで60%の寛解率が認められ、2週間以内にフェリチンおよびIL-18のレベルが低下しました。

 

カルシニューリン阻害剤(シクロスポリンA 2–5 mg/kg/日)は難治性MASに使用され、T細胞活性化を抑制することで50%の症例で寛解を達成します。

 

肺疾患の治療

高用量コルチコステロイド(プレドニゾン1 mg/kg/日)が初期治療薬で、反応率は60%です。IL-1阻害剤(アナキンラ)は、しばしば支持的酸素療法と併用して、難治性症例の70%に効果的です。40人の患者コホートのうち、30%が慢性間質性肺疾患に進行し、早期IL-1阻害により死亡率が20%減少しました。

 

肝疾患の治療

高用量コルチコステロイド(メチルプレドニゾロン1g/日3日間)は50%の症例で寛解を迎え、IL-1阻害剤(カナキヌマブ)は難治性患者に使用されます。20人の患者を対象とした症例シリーズでは、40%が肝移植を必要とし、移植後の生存率は60%でした。

 

予後

成人発症スティル病の予後は、表現型や合併症リスクによって異なります。発熱や多臓器病変を特徴とする全身型成人発症スティル病は、マクロファージ活性化症候群(MAS、23%の有病率)や実質肺疾患(約12%)などの生命を脅かす合併症のリスクが高く、死亡率はそれぞれ20〜40%および38.9%です。関節炎型成人発症スティル病は慢性多発性関節炎を特徴とし、未治療の症例の40%で関節破壊に進行し、20%は10年以内に関節置換が必要となります。生物学的治療(例:アナキンラ、カナキヌマブ)は全身性症例の80〜90%で寛解を達成しますが、全身型患者の30%が再発を経験します。関節炎症例はIL-1阻害剤への反応が弱く(寛解率50%)、しばしばメトトレキサートやTNF阻害薬を必要とします。

 

文献

1】Advancing Precision Medicine in Adult-Onset Still’s Disease: Insights into Biomarkers, Therapies, and COVID-19 Impacts. Mediterr J Rheumatol 2025;36:509-523
2】Adult-onset Still’s disease in focus: Clinical manifestations, diagnosis, treatment, and unmet needs in the era of targeted therapies. Seminars in Arthritis and Rheumatism 2021;51:858-874. doi.org/10.1016/j.semarthrit.2021.06.004
3】Systemic juvenile idiopathic arthritis and adult- onset Still’s disease are the same disease: evidence from systematic reviews and meta- analyses informing the 2023 EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease. Ann Rheum Dis. 2024; 83(12):1748-1761. doi: 10.1136/ard-2024-225853.
4】EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease, comprising systemic juvenile idiopathic arthritis and adult- onset Still’s disease. Ann Rheum Dis. 2024;83:1614-1627. doi:10.1136/ard-2024-225851
5】Updates on the pathogenesis and molecular targeted therapies of Still’s disease. Immunol Med. 2026;49:130-146. doi: 10.1080/25785826.2025.2576285.
6】Managing the clinical heterogeneity of patients with Still’s disease, from early diagnosis to timely treatment. Autoimmunity Reviews 24;2025:103880. doi.org/10.1016/j.autrev.2025.103880

 

<<2026年8月21日作成>>

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