後藤内科医院、リウマチ科、内科

全身性エリテマトーデスの治療

全身性エリテマトーデスの治療

全身性エリテマトーデスの治療

 従来の全身性エリテマトーデスの治療はステロイドホルモンが治療の中心で、ステロイドホルモンの効果が不十分のときに免疫抑制剤や血漿交換療法を併用するというものでした。最近では、ステロイドを早期に減量させるために、免疫抑制剤が積極的に使用されるようになりました。

 

ステロイドホルモン治療


4)ステロイドは、疾患の活動性が低下し、臓器障害の改善が得られれば、初期投与量は4~6週投与後に、徐々に減量を行います(テーパリング tapering)。おおよそ、1~2週間ごとに10%程度(5mg程度)ずつ減量します。
5)ただし、最近は免疫抑制剤の併用が多いこともあり、これよりも初期投与量の期間は短めに、また漸減速度も速めにされる傾向にあります。
6)維持量としては、5~10mgが推奨されています。

 

ステロイドホルモンの副作用

1)満月様顔貌・中心性肥満
2)高脂血症・高血圧症
3)糖尿病
4)ステロイド精神病
5)骨粗鬆症
6)感染症
7)白内障・緑内障
8)大腿骨頭無菌性壊死
9)離脱症候群
10)胃潰瘍

 

免疫抑制剤

 

アザチオプリン

1)2011年に公知申請にて、治療抵抗性の膠原病に対する効能が正式に認められました。ループス腎炎II, III, IV型の維持療法として使用されることが多い薬剤です。
2)作用機序
 細胞のDNA(プリン)合成を阻害する代謝拮抗薬。
3)用法・用量
 通常、成人及び小児は、1日量として1~2mg/kg相当量を経口服用します。なお、1日量として3mg/kgを超えないこと。
4)副作用
 骨髄抑制、ショック様症状、肝機能障害、悪性新生物

 

シクロフォスファミド

1)2011年に公知申請にて、治療抵抗性の膠原病に対する効能が正式に認められました。経口、あるいは点滴静注で使用されます。
2)作用機序
 DNAをアルキル化して、DNA合成を阻害します。リンパ球、特にBリンパ球系の機能を抑制します。
3)用法・用量
 通常、1日50~100mgを経口服用します。
4)副作用
 骨髄抑制、出血性膀胱炎(補液とメスナ投与にて予防する)、胃腸症状、性腺抑制、重篤な感染症、膀胱癌(用量依存性:総投与量30g以上で危険性大)、悪性リンパ腫


 シクロフォスファミド・パルス療法に関しては高用量HDでも低用量LDでも有効性に差がないことが示されています。

 

ミゾリビン

1)日本で開発された免疫抑制剤です。ループス腎炎、関節リウマチに保険適応があります。
2)作用機序
 細胞のDNA(プリン)合成を阻害する代謝拮抗薬。
3)用法・用量
 保険適応上の用法・用量は1回50mg、1日3回内服だが、1回150mg、1日1回投与の方が有効とされています。
4)副作用
 比較的軽度だが、骨髄抑制、感染症、間質性肺炎、急性腎不全、肝障害、消化性潰瘍に要注意。

 

タクロリムス

1)筑波山麓の土壌中の放線菌の代謝産物由来
2)作用機序
 細胞内のFKBPというタンパク質に結合して、免疫細胞(主にTリンパ球)を活発化させる生体成分(サイトカイン)の働きを抑えます。
3)用法・用量
 1日1回3mg夕食後
3)副作用
 腎機能障害、高血圧、耐糖能異常、易感染性

 タクロリムスは他剤との相互作用が多いので、併用薬の選択にも要注意です。

 タクロリムスはプラセボに比べ、有意にループス腎炎の活動性を低下させました。

 

2015年から本邦でも処方可能となった新しい治療

1)ヒドロキシクロロキン硫酸塩(商品名:プラケニル)
2)ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト)

 

ヒドロキシクロロキン

 ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、欧米での皮膚エリテマトーデスおよび全身性エリテマトーデスの治療ガイドラインにおいて、標準的な治療薬として位置付けられています。しかし、本剤はこれまで本邦においては未承認薬でした。そこで臨床試験を世界で始めて日本にて実施し、2015年9月7日に、ようやく発売となりました。特に皮膚症状、倦怠感等の全身症状、筋骨格系症状等がある場合が良い適応とされています。ただし、本剤の投与に関しては、エリテマトーデスの治療経験をもつ医師が、特有の副作用である網膜障害に対して十分に対応できる眼科医と連携のもとに使用すべきとされています。

 

ヒドロキシクロロキンのSLEへの効果

1)SLEの病気の活動性を抑える
 Toll様受容体(TLR)の機能の阻害
 SLEにおいてはDNA、RNAに対する自己抗体が産生されるが、これら自己抗体と核酸による免疫複合体はエンドソームにおいてTLRにより認識され、I型インターフェロン産生を誘導します。ヒドロキシクロロキンはエンドソームのpHを上昇させることにより、または核酸への直接結合によりTLRの活性化阻害を行います。
2)臓器保護作用がある
3)脂質代謝の改善
4)糖質代謝の改善
5)血栓予防効果
6)妊娠中のSLEの増悪の抑制

 



 ヒドロキシクロロキン投与後、16週時点において、皮膚エリテマトーデス所見がプラセボに比べ、改善していました。


 ヒドロキシクロロキンの副作用で特に注意が必要なものは眼(網膜)の障害です。

 

ミコフェノール酸モフェチル

 ミコフェノール酸モフェチルは、2015年7月31日公知申請によって、ループス腎炎III型、IV型に対し保険適用が可能となりました。さらに、2016年5月に、効能・効果「ループス腎炎」が正式に追加となりました。ミコフェノール酸モフェチルは、欧米のループス腎炎のガイドラインでは、ステロイドに加える免疫抑制薬としては第一選択薬に位置づけられています。ミコフェノール酸モフェチルは、寛解導入療法として、シクロフォスファミド・パルス療法と比べ、同等の効果を有しますが、副作用はシクロフォスファミド・パルス療法に比べ、少ないと報告されています。また、ループス腎炎の維持療法としてはアザチオプリンより有効であることが報告されています。催奇性がありますので、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」とされています。

 







 


 SLEのエキスパートの意見では、MMFはループス腎炎以外のSLEの病態の治療に推奨されています。

 

生物学的製剤





 日本で行われたSLEに対するリツキシマブの効果を検討した臨床試験です。

 リツキシマブ投与後、SLEの活動性(BILAG global score)は低下し、プレドニゾロン投与量も減少しています。

 リツキシマブ投与後、補体値(C3 levels)は上昇し、抗二本鎖DNA抗体値は低下しています。

 

SLEの予後

 

日常生活上の注意点

 

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