後藤内科医院、リウマチ科、内科

IgG4自己免疫疾患

IgG4自己免疫疾患(IgG4-AID)

IgG4-AIDは、2015年に抗体が媒介する自己免疫疾患の別のサブグループとして初めて定義されました。IgG4-AIDは、既知の抗原に対する主にIgG4サブクラスの自己抗体反応を特徴とします。これらの疾患は、標的抗原の主な作用部位に応じて、腎臓、中枢神経系/末梢神経系、造血系、皮膚など、多くの臓器系に影響を及ぼす可能性があります。IgG4-AIDの診断は、臨床症状と、疾患特異的抗原に対する血清IgG4自己抗体の検出に基づいています。抗原特異的IgG4レベルは、疾患の重症度と密接に相関しています。ただし、IgG4-AIDs患者では、血清中の 総IgG4レベルはわずかに上昇するのみで、IgG4+形質細胞およびIgG4+ B細胞の数は末梢血液中で正常範囲内です。IgG4は主に抗炎症性(良性抗体)であり、Fc依存性エフェクター機構を介して病気を誘発することはないと考えられているため、すべてのIgG4-AIDにおける主要な作用機序は、標的抗原の必須タンパク質間相互作用を阻害することであると考えられています。

 

 

筋肉特異的チロシンキナーゼ(MuSK)型重症筋無力症

重症筋無力症の自己抗体は、神経筋接合部の筋終板の構造を標的とし、神経筋伝達を阻害します。これらの自己抗体は、神経筋接合部におけるアセチルコリンとアセチルコリン受容体(AChR)との間の相互作用を妨害します。別の自己抗体はAChRの下流に位置する筋肉特異的チロシンキナーゼ(MuSK)や低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質4(LRP4)を直接標的とします。その結果、神経から筋肉へのシグナル伝達が中断され、患者は臨床的に疲労感と筋力低下を認めます。重症筋無力症は、標的抗原(AChR、MuSK、LRP4)によって、3つのサブタイプに分類されます。それぞれのサブタイプには異なる臨床的および免疫学的特徴があります。免疫学的な違いは、重症筋無力症サブタイプの自己抗体のIgGサブクラスの違いに見られます。AChRおよびLRP4自己抗体は主にIgG1、IgG2、IgG3サブクラスですが、MuSK自己抗体は主にIgG4です。MuSK自己抗体がLRP4との相互作用を阻害し、神経筋接合部における重要な栄養シグナル伝達カスケードを阻害して、疲労しやすい骨格筋の衰弱を引き起こします。MuSK自己抗体価は、MuSK型重症筋無力症の疾患重症度とよく相関しています。

 

neurofascin 155 (NF155)、contactin-1 (CNTN1)、およびcontactin-associated protein 1 (CASPR1)を標的とする自己抗体によるNodo-paranodopathy

慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(CIDP)は進行性の自己免疫性末梢ニューロパチーで、主な標的は末梢神経のミエリン鞘です。過去10年間で、Ranvier結節とパラノーダル領域に位置するタンパク質を標的とする抗体が同定され、臨床的にCIDPと診断された患者の2-15%に存在すると報告されています。これらの患者は一般的に臨床的にCIDPと診断されますが、IgG4を介したNodo-paranodopathyとCIDPとの間には明確な免疫病理学的および臨床的特徴に違いがあるため、自己抗体陽性のCIDP患者をCIDPではなくNodo-paranodopathyに分類することについてコンセンサスが広がっています。これらの抗体は、neurofascin 155 (NF155)、neurofascin 186 (NF186)、neurofascin 140 (NF140)、 contactin-1 (CNTN1)、contactin-associated protein 1 (CASPR1)を標的としています。この中で抗NF155抗体、抗CNTN1抗体、抗CASPR1抗体はIgG4抗体です。NF155、CNTN1、CASPR1は、細胞接着分子として機能します。NF155は、主にシュワン細胞のミエリンループに位置し、軸索に見られるCNTN1-CASPR1複合体に結合します。得られた三者タンパク質複合体は、ミエリンループをパラノード内の軸索に強く結合させます。CNTN1およびCASPR1に対する抗体は、パートナーのタンパク質と相互作用するエピトープに結合するため、三者複合体の形成を阻害し、パラノード結合の破壊が起こり、伝導障害が生じます。抗NF155 IgG4抗体の際立った特徴は、標的タンパク質とパートナーとの相互作用を妨げないことです。それどころか、NF155抗体の結合はシュワン細胞表面にNF155クラスターの形成をもたらし、その結果、パラノード複合体の形成に必要なタンパク質が枯渇します。要約すると、従来のCIDPとは異なり、パラノード抗原に対するIgG4抗体は炎症や脱髄を引き起こさず、むしろパラノード剥離を引き起こし、結節の電気生理機能の障害を引き起こし、伝導ブロックや軸索変性を引き起こす可能性があります。MuSK型重症筋無力症と同様に、Nodo-paranodopathyにおける自己抗体価は臨床疾患の重症度とよく相関しています。

 

Desmoglein1およびDesmoglein3を標的とする自己抗体を持つ天疱瘡

天疱瘡は、自己免疫性水疱性疾患のグループで、主に2つの主要なデスモソーム接着タンパク質を標的とする自己抗体によって引き起こされます。デスモグレイン(Desmoglein:Dsg)は、ケラチノサイトデスモソームに位置するCa2+依存性の膜貫通タンパク質で、表皮内のケラチノサイトの完全性と凝集性を維持するのに重要な役割を果たしています。Dsg1は主に表層に位置し、Dsg3は皮膚の基底層と傍基底層に見られます。天疱瘡の2つの主要なサブグループは、尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡であり、尋常性天疱瘡ではDsg1およびDsg3に対する自己抗体を認め、落葉状天疱瘡ではDsg1に対する自己抗体を認めます。天疱瘡の自己抗体は、IgG1およびIgG4サブクラスに属します。これらの自己抗体はデスモソーム接着タンパク質と相互作用し、細胞間接着の障害をもたらし、皮膚の水疱の発生につながます。この病理学的メカニズムはin vitroで実証されており、自己抗体が培養ヒトケラチノサイトとヒト皮膚外植片の細胞シートの分離を促します。尋常性天疱瘡の患者血清からIgG4を排除するとケラチノサイトアッセイの解離が81%減少することが観察されていることから、IgG4の病原性が実証されています。IgG4のFab-arm交換による一価性は、落葉状天疱瘡における患者由来自己抗体の病原性効果を増大させることが示されました。天疱瘡では、自己抗体価と疾患の重症度との直接的な相関関係はなく、そのため、この力価を疾患の活動性を直接モニターするために使うことはできません。興味深いことに、皮膚表皮のデスモグレインに対するIgG4優位の反応をもたらす分子模倣の証拠が、ブラジルとチュニジアの集団の風土病性落葉状天疱瘡患者で発見されました。これらの患者では、デスモグレインと交差反応するハエの唾液抗原に対する抗体が検出されました。

 


図:天疱瘡 文献1)より
天疱瘡は、最初に報告されたIgG4自己免疫疾患の1つです。天疱瘡の一部では、ハエ抗原への曝露が無症候性の個人にも見られる最初の非病原性抗体反応を引き起こすという兆候があります。一部の個人では、エピトープの拡散が起こり、抗体が皮膚細胞の接着に重要なタンパク質であるデスモグレインと交差反応する二次的な病原性抗体応答が進行します。自己免疫応答のさらなる親和性成熟は、デスモグレインと他の細胞接着分子との相互作用を物理的に妨害する高親和性、主にIgG4抗体をもたらし、皮膚の水ぶくれを引き起こします。場合によっては、デスモグレインに対する高親和性IgG4抗体がハエ抗原と交差反応することがあります。

 

LGI1/CASPR2抗体脳炎

抗体媒介性脳炎は、21種類以上の異なる抗体によって引き起こされる不均一な疾患群です。これらのうち、抗LGI1抗体および抗CASPR2抗体脳炎では、主要な免疫グロブリンサブタイプとしてIgG4と関連しています。LGI1は、シナプス前メタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質23(ADAM23)およびシナプス後ADAM22に結合するシナプスタンパク質です。抗LGI1抗体の結合は、細胞表面上のLGI1-ADAM22/ADAM23複合体を破壊し、ニューロンの興奮性を高めます。ニューロンの興奮は抗LGI1脳炎の個人に観察される記憶障害に直接寄与していると考えられています。CASPR2は、有髄末梢神経の傍パラノード領域に存在する膜貫通細胞接着タンパク質で、中枢神経系と末梢神経系にわたるランビエ絞輪や、大脳辺縁系と大脳基底核のシナプスに分布しています。マウスでは、抗CASPR2脳炎患者から精製したIgG1とIgG4の混合物の髄腔内注入が記憶障害を誘発することが観察されました。CASPR2抗体は主にブロッキングを通じて病原性を発揮します。血流中の自己抗体価と臨床疾患の重症度との相関関係は不明です。脳脊髄液中に見られる自己抗体のレベルは、中枢神経系のこれらの病状におけるより正確な指標として役立つ可能性があります。

 

IgG4自己免疫疾患の治療法

自己免疫疾患の標準的な治療は、コルチコステロイド、血漿交換、静脈内免疫グロブリン療法(iVIG)、免疫抑制剤などでした。しかし、すべての患者がこれらの従来の治療に反応するわけではありません。興味深いことに、標準治療に反応しないIgG4-AID患者に対し、抗CD20抗体(リツキシマブ:Rituximab、RTX)を使ったB細胞枯渇療法(B cell depletion therapy、BCDT)の有効性を明らかになってきました。B細胞の場合、CD20は、形質細胞、Pro-B細胞、およびPre-B-Iを除くB細胞分化のほぼすべての段階で発現しています。さらに細胞表面にCD20を発現するT細胞のサブセットも、この治療の影響を受けます。健康な人の末梢血中のCD20 陽性T細胞の頻度は1-4%と比較的低いですが、炎症条件下で増加します。CD20 陽性T細胞は末梢血に比べて扁桃腺、胸腺、骨髄、脳脊髄液などの組織に豊富に含まれます。もともとB細胞悪性腫瘍の治療のために開発された抗CD20抗体を中心としたBCDT(CD20BCDT)は、多発性硬化症、関節リウマチ、慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(CIDP)などの多様な自己免疫疾患の治療法として有効であることが証明されています。CD20BCDTは、IgG4自己免疫疾患および後述するIgG4関連疾患で著効を示します。多くのMuSK重症筋無力症患者は、CD20BCDTの後、数年間安定した寛解に入り、MuSK自己抗体価が著しく低下したり、感度以下となったりします。しかし、一部の患者では時間の経過とともに再発が起こることがあります。IgG4を介したNodo-paranodopathyのほとんどの患者は、従来のCIDPとは異なり、iVIgおよびステロイドに反応しません。CD20BCDTは、IgG4を介したNodo-paranodopathyの患者の大多数、特に他の治療法に抵抗性の患者に有益な効果を示します。抗NF155抗体陽性Nodo-paranodopathy患者の77%がCD20BCDTに反応しました。また、軸索損傷の指標である血清ニューロフィラメント軽鎖や抗NF155抗体価も治療後に低下しました。天疱瘡でも同様の肯定的な結果が観察されています。さらに、CD20BCDTに対する治療反応は、LGI1/CASPR2抗体脳炎において良好でした。しかし、CD20BCDTに対する反応は様々であり、すべての患者が寛解を達成するわけではないことを強調することが極めて重要です。

 


図:B細胞上のCD20発現 文献2)より
B細胞でのCD20発現。CD20は、形質細胞、Pro-B細胞、およびPre-B-I細胞を除いて、B細胞の成熟のほぼすべての段階で発現します。

 

新しい治療法

抗CD19抗体を使ったBCDT

CD19は免疫グロブリンスーパーファミリーの膜貫通型糖タンパク質であり、抗原非依存性B細胞分化の調節と免疫グロブリン誘導B細胞活性化に機能的に関連しています。CD19の発現プロファイルはCD20のよりも広範で、Pro-B細胞の段階から始まり、形質芽細胞や形質細胞にまで広がっています。Ocrelizumabは、CD19を標的とする別のBCDTであり、RTXが効果不十分となった患者に成功したことが証明されています。

 

抗CD40抗体を使ったBCDT

CD40はBリンパ球上に発現し、CD40Lは主に活性化されたCD4+ T細胞の表面に発現し、活性化、増殖、サイトカイン産生を誘導します。さらに、CD40Lは単球や樹状細胞などの他の造血細胞や、肥満細胞、好塩基球、NK細胞、マクロファージ、巨核球、血小板などの非造血細胞にも見られます。CD40/CD40Lの相互作用は、胚中心の形成やクラススイッチ抗体の産生に不可欠で、自然免疫細胞および適応免疫細胞の活性化、B細胞、T細胞、抗原提示細胞の活性化、免疫学的記憶の制御に関与しています。Iscalimabはヒトの抗CD40モノクローナル抗体であり、最近、第II相臨床試験で中等度から重度の重症筋無力症に対しの安全性と有効性が評価されました。天疱瘡の場合、CD40/CD40Lの相互作用は病原性抗Dsg3 IgG抗体の誘導に重要なので、抗CD40Lは天疱瘡の潜在的な治療アプローチになるかもしれません。

 

プロテアソーム阻害剤

ユビキチン/プロテアソーム系は、細胞内タンパク質分解の主要な経路の一つを構成していて、免疫応答の主要なシグナル伝達要素、細胞全体の恒常性に対する動的制御を維持するための重要なコンポーネントです。プロテアソーム系の機能不全は、がんや自己免疫疾患のような病的状態と関連しています。プロテアソームを阻害すると、形質細胞のアポトーシスが起こり、その結果、抗体産生が減少し、炎症誘発性サイトカインの産生も妨げます。Bortezomibは、多発性骨髄腫に対して最初に承認されたジペプチドボロン酸誘導体で、形質細胞に対して高い親和性を示し、プロテアソームの触媒部位に結合します。治療抵抗性の重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ患者に対するBortezomibの使用を調査する第2相臨床試験が現在進行中です。

 

FcRn阻害剤

ヒトIgGは半減期が長いために、血清中で最も豊富なタンパク質の一つとなっています。IgGの寿命を長く維持するためにNeonatal fragment crystallizable Fc receptor (FcRn)が重要な役割を果たしています。FcRnは、母体から胎児の循環にIgGを輸送する役割を果たしていると最初に特定されました。さらに、IgGを細胞内分解から保護することにより、半減期を延ばすことがわかりました。FcRn阻害剤は、FcRnを介したIgGを細胞内分解から保護することをブロックして、IgGの異化作用を高め、血清中のIgGレベルの低下と病原性自己抗体の減少をもたらします。近年、FcRn阻害剤は、自己抗体を介した自己免疫疾患の有望な標的として浮上しています。FcRn阻害剤であるEfgartigimod、Rozanolixizumab、Batoclimabは重症筋無力症で、SYNT001は、天疱瘡で臨床試験が進行中です。

 

文献

1)The unique properties of IgG4 and its roles in health and disease. nature reviews immunology 2022 https://doi.org/10.1038/s41577-023-00871-z
2)Exploring the depths of IgG4:insights into autoimmunity and novel treatments. Front. Immunol. 2024, 15:1346671. doi: 10.3389/fimmu.2024.1346671

 

<2025年3月22日作成>

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