ストレス対処法
ストレス対処法として、以下の6項目を提案したいと思う。
1)睡 眠
眠りのスイッチとしては「体温」と「脳」が挙げられる。
体温が低下する事によって睡眠が誘発される。体温低下が睡眠には欠かせない。寝る前に手足(皮膚温度)が温かくなるのは、熱を放散して深部体温を下げるためである。良い睡眠をとるためには、就寝90分前に入浴するのがお勧めである。強制的に一時的に体温を上げてから、速やかに体温を下げると良い睡眠が得られやすい。時間がない場合はシャワーが良い。
基本は、寝る前は何も考えないこと。だからといって「何も考えるな」と言われても難しい。単調な状態にすることは、眠るための脳のスイッチである。
「スマホやパソコンの画面から放たれるブルーライトは睡眠に悪い」といわれているが、ブルーライトの影響を睡眠に及ぼそうと思えば、かなり画面に顔を近づけてジッと見続ける、ぐらいのことをしないといけない。スマホやパソコンが睡眠に影響を与えるのは、ブルーライトというよりも、脳を刺激してしまうことにあるといえる。
「睡眠のルーティン」も役に立つ。
いつもどおりのベッドで、いつもどおりの時間に、いつもどおりのパジャマを着て、いつもどおりの照明と室温で寝る。入眠前に音楽を聴くならいつも同じ単調な曲。
「眠れなかったらベッドから離れる」
ベッドは眠るための場所で、本を読んだりテレビを見るためのものではない。
「いろいろなこと」を考えないようにしましょうというのは逆効果
2)栄 養
健康にいい食品、悪い食品が「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」という本に記載されている。健康にいい食品としては魚、野菜と果物、茶色い炭水化物(玄米、そば、全粒粉のパンなど)、ナッツ類、オリーブオイルが挙げられており、健康に悪い食品としては赤い肉(牛肉や豚肉で、鶏肉は含まず)とハムやソーセージなどの加工肉、白い炭水化物(白米、うどん、パスタ、白いパン、砂糖、じゃがいもなど)、バターなどの飽和脂肪酸が挙げられている。
甘いものが良くない理由
3)健全な人間関係
相談できる人を持つ事が大事である。「ストレスフリー超大全」という本によると、他人に相談する事のメリットとしては、ガス抜き効果(ストレスが発散される。気分がスッキリする。)、不安の減少(他人話す事、すなわち、言語情報を脳に与えると、不安の中枢である扁桃体の興奮が抑制される。)、悩みの整理(筋道立てて話すことで、話が整理される)、言語化(頭の中でもやもやしていた現状、原因、診断などあいまいな点がハッキリする。)、解決法の発見(話が整理されることで、自分で対処法に気づく。)などが挙げられている。さらに、聴き手のプロである心理士や精神科医などの相談すれば、解決法がもらえるというメリットがある。
プロのアドバイスとして最近注目されているのが、「認知行動療法」である。認知行動療法では、ストレス反応を「認知(自動思考)」、「気分・感情」、「身体反応」、「行動」の4つに分けてとらえていく心理療法である。認知行動療法については、カウンセラーと一緒に取り組む場合と、本やインターネットを通じて取り組む場合とで、さほど効果に差はないことが複数の研究で報告されている。そこで、お勧めしたい本は伊藤絵美先生の「セルフケアの道具箱」である。
筋骨格系疾患における認知行動療法の効果としては、以下の報告がある。
集団認知行動療法が関節リウマチに伴う疲労感を改善させた。
(Ann Rheum Dis. 2019;78:465-472)
運動と認知行動療法の併用によって、変形性膝関節症による膝の痛みを軽減した。(J Bodyw Mov Ther. 2021;25:157-164)
認知行動療法は、線維筋痛症において、50%以上の疼痛緩和、否定的な気分や疲労感の軽減をもたらした。(Eur J Pain. 2018;22:242-260)
認知行動療法は、全身性エリテマトーデスにおいて、慢性的なストレスを軽減するのに有用であった。(Psychother Psychosom. 2010;79:107-15)
電話を利用した認知行動療法によって、高齢の変形性関節症の痛みによる不眠が改善された。(JAMA Intern Med. 2021;181:530-538)
嫌なことを忘れる方法
ただし、嫌な事も多数の人に話すのは避けた方が良い。嫌なことがあったとき、たとえば、失恋してショックを受けたとき、そのことを短期間に3人の友達に別々に相談したとする。そうすると、短期間に3人に話すことで、その記憶は強烈に記憶され、忘れられない状態になってしまう。ネガティブな出来事を、何度も人に話すことはしないほうがいい。嫌な出来事があった場合、「自分の一番信頼できる友人に、その話を1回だけしっかり話して、それで終わりにする」とするのがベストである。
4)運 動
理想の運動は1日20分の早歩きではあるが、なかなかできないのが現状ではないか。そこで、他の方法はないかと調べてみると、カナダのマクマスター大学の研究によると、1日20分の運動は「本格的な運動」である必要はなく、「家事」(掃除や皿洗いや洗濯干しなど)で体を動かすのでも十分とのことであった。
膝が痛くて歩くのが大変という人には下記の脚上げ運動が有効である。
ロコモ予防に有効なのが「片足立ち」と「スクワット」である。いきなり最初から手を離して行うのではなく、机やイスに手を添えて始めても良い。慣れてきたら段々と手を離せばよいのである。
5)瞑 想
瞑想法としては坐禅、マインドフルネス(「1分間どこでもマインドフルネス」がお勧め)、ヨガなどがある。マインドフルネスとは「今という瞬間に起こっている事に注意を向けて気づく事」で、全身性エリテマトーデスでは、以下のごとく、マインドフルネスによって、生活の質、痛みの程度、うつ傾向の大幅な改善を示したという報告がされている。
また、関節リウマチに対するヨガの効果として、日常生活の程度、疾患活動性を改善したという報告がある。
6)コーピング
「コーピング」とはストレスに対して、自分を助けるために、何らかの対処をしたり、工夫をしたりすることで、たとえば、「散歩に行く、ペットとたわむれる、風呂に入る、ピアノを弾く、マッサージを受ける、おしゃれをする、料理をする、歌を歌う、ストレッチをする、本を読む・・・・」などである。一方、不適切なコーピングとしては、「タバコを吸う、酒をたくさん飲む、ギャンブルをする、甘いお菓子をたくさん食べる・・・」などが挙げられる。コーピングに関しても、伊藤絵美先生の「セルフケアの道具箱」がお勧めである。
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