後藤内科医院、リウマチ科、内科

ベーチェット病の治療

ベーチェット病の治療

(1)日常生活への影響もさほどでない粘膜皮膚病変や関節病変の治療

a.口腔内アフタ
 ステロイド含有軟膏の塗布。含嗽の励行。内服薬としては、好中球機能抑制作用をもつアゼラスチン、ポラプレジンク、コルヒチン、レバミピド、エイコサペンタエン酸が用いられます。漢方処方としては、「温清飲」が粘膜潰瘍や皮疹の改善を目的に使用されます。
b.外陰部潰瘍・毛嚢炎様皮疹
 抗生物質添加ステロイド軟膏の塗布。
c.結節性紅斑・血栓性静脈炎
 非ステロイド系消炎鎮痛剤の内服。循環改善剤。ステロイド含有軟膏の塗布。
d .関節炎、副睾丸炎
 非ステロイド系消炎鎮痛剤の内服。

 

(2)ベーチェット病の眼症状の治療

 ベーチェット病の眼症状の治療は、炎症所見が虹彩毛様体炎型か網膜ぶどう膜炎型によって分かれます。
 眼底に発作の起きていない虹彩毛様体炎型では、ステロイド点眼と散瞳剤の点眼で消炎を図ります。  
 これに対し、眼底の出血や滲出性病変を生じる網膜ぶどう膜炎型(後部ぶどう膜炎型)では、全身の薬物療法が主体となります。コルヒチンが最もよく使われ、他にシクロスポリン、シクロホスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制薬が用いられていますが、最近では抗TNFα抗体の卓越した効能に注目が集まっています。

 

コルヒチン

 ユリ科の植物に含まれるアルカロイドで、もともとは痛風の治療薬として用いられているものです。免疫抑制剤ではありませんが、多核白血球の遊走能を抑制する作用があります。現在、ベーチェット病治療薬の第一選択となっており、比較的軽症例に最初に投与される薬剤です。  
 投与量は1日0.5~1.5mgです。胃腸障害、白血球減少、血小板減少、精子の運動減退などの副作用があります。子供を作りたい男性にはあまり適しません。

シクロスポリン

 真菌が産生する環状ペプチドで、ベーチェット病の病態に深く関わっているTリンパ球(T細胞)を選択的に抑制する免疫抑制剤です。シクロフィリンという結合蛋白と結合し、IL‐2(インターロイキン2)の産生を抑制します。現在、ベ一チェット病の第二選択薬と考えられていますが、症例によっては、最初から投与することも多々あります。  
 初期投与量は、通常5mg/kg/日で朝晩2回に分けて服用します。  
 副作用として、腎障害、肝障害、高血圧、歯肉肥厚や神経ベーチェット病様症状の出現などがありますので、注意する必要があります。  
 妊婦、授乳中の患者には投与できまぜん。血中シクロスポリン濃度を定期的に測定して、トラフ値(最低血中濃度)が50-200ng/mlの範囲になるように投与量を調整します。ベーチェット病に対して、大変よく効くヒトもいますが、ほとんど効かないヒトもいます。この違いは、シクロスポリンを代謝する肝臓の酵素(CYP3A4)の遺伝的相違、もしくは、シクロスポリンの吸収に関与している腸管の蛋白質(MDR1)の遺伝的相違などに起因しているものと思われます。

 

ステロイド

 虹彩毛様体炎にはステロイドの点眼が大切です。また、眼底発作に対してテノン嚢下に注射をすることもあります。しかし、ステロイドは、特に全身投与では、感染症の誘発、糖尿病の悪化、胃潰瘍、骨租髭症、精神症状、白内障、緑内障などの副作用があります。  

 

抗TNFα抗体療法

保険適応
 インフリキシマブ(商品名 レミケード)
   ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎
   腸管ベーチェット、神経ベーチェット、血管ベーチェット

 

 アダリムマブ(商品名 ヒュミラ)
   腸管ベーチェット 
   非感染性の中間部、後部又は汎ぶどう膜炎
    ベーチェット病
    サルコイドーシス
    Vogt・小柳・原田病
    交感性眼炎
    バードショット脈絡網膜症

 

ベーチェット病のブドウ膜炎に対するインフリキシマブの長期効果

 日本の13施設で行われた研究です。

 インフリキシマブの治療期間別に4群(A~D)に分けて検討しています。4群とも、インフリキシマブ投与群で、眼発作回数の減少、視力の改善が認められました

 ステロイドや免疫抑制剤の使用量も減少しました。副作用は35%に認められましたが、軽微なものがほとんどでした。

 

ベーチェット病のブドウ膜炎に対するアダリムマブの長期効果

 イタリアで行われた研究です。

 アダリムマブ投与後、ステロイド使用量の減少、眼発作回数の減少、視力の改善、免疫抑制剤使用量の減少、ぶどう膜の活動性の低下が認められました。

 アダリムマブを最初から投与した群(naiive)が、インフリキシマブからswitch群に比べ、眼発作回数の減少、ステロイド使用量の減少において良好な結果が得られました。

 

(3)生命の危険を伴う又は重大な後遺症を残す特殊病型の治療

 中等量ないし大量の副腎皮質ステロイドが主体になります。生命の危険を伴うので、腸管型、血管型では外科治療も視界にいれて十分量のステロイドを比較的短期間用います。
a.腸管ベーチェット
 炎症性腸疾患の治療に準じます。安静・絶食で、高カロリー輸液を行ないます。サラゾスルファピリジン内服。急性期にはステロイド治療。
b .血管ベーチェット
 抗凝固療法、ステロイド治療。免疫抑制剤(シクロスポリン、シクロホスファミド、アザチオプリンなど)投与。
c .神経ベーチェット
 十分量のステロイドを投与し、寛解した後も進行の阻止、遅延の目的で維持量を見つけ出し、投与を継続することが必要です。免疫抑制剤(シクロスポリン、シクロホスファミド、アザチオプリンなど)投与。

 

腸管・神経・血管ベーチェットに対するインフリキシマブの効果

 日本で行われた研究です。

 インフリキシマブ投与により、口内炎、皮膚症状、外陰部潰瘍の改善(グレー)、消失(黒)が認められました。

 急性型神経ベーチェット(ANB)を除き、腸管・神経・血管ベーチェットにおいて、インフリキシマブ投与により、下記で定義されたComplete Responseが得られました。

 腸管ベーチェットでは、インフリキシマブ投与により、多くの例で臨床症状の改善、腸管の潰瘍の直径の縮小、CRPの改善が認められました。

 神経ベーチェットでは、インフリキシマブ投与により、髄液中のIL-6に低下や頭部MRI所見の改善等が認められました。

 

腸管ベーチェットに対するアダリムマブの効果

 日本の腸管ベーチェットの患者を対象にしたアダリムマブの効果を検討した臨床試験です。

 アダリムマブ投与後、52週で臨床症状の著明な改善が60%に認められ、その内、完全寛解は20%に達していました。さらに、内視鏡所見の改善も認められました。

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