後頭神経痛について説明します。
後頭神経痛

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後頭神経痛

後頭神経痛

2026年6月22日右頭頂部の痛みが出現しました。激しく刺すような痛みが数分続くと少し休まり、また激しい痛みが襲ってくるという状態でした。ロキソニンを内服すると治まりますが、数時間で切れてしまい、切れると同じような痛みが続きました。以前、髄膜炎になったことがあったので、その時の事を思い出しました。7/2に脳神経外科を受診したところ、頭頂部の痛覚の左右差があり、頭部MRIにても脳内病変がなかったことから、後頭神経痛と診断されました。メチコバールを処方されたところ、数日で痛みはおさまりました。今回は後頭神経痛についてまとめてみました。



後頭神経痛は、大後頭神経、小後頭神経、第三後頭神経、またはその組み合わせの分布に影響を及ぼす痛みを伴う状態です。発作性で、数秒から数分続き、長く続く痛みを引き起こすことがあります。

疫学

オランダの顔面痛および頭痛発生率を調査したある研究では、後頭神経痛が症例の8.3%を占めていました。後頭神経痛の総発生率は10万人あたり3.2人で、診断年齢の平均年齢は54.1歳(標準偏差16.2歳)でした。女性(73%)に多いことが報告されています。

病因

後頭神経痛は90%の症例で大後頭神経の異常が原因となります。症例の10%は小後頭神経の異常に起因し、第3後頭神経の異常が関与することは稀です。後頭神経痛は、これらの神経のいずれかが複数の解剖学的ポイントのいずれかで圧迫されることで発生します。筋肉の肥大、緊張、痙攣が圧迫に寄与すると仮定されており、多くの患者にストレスや不安と関連しており、大後頭神経に近い筋肉の外科的切断手術により痛みの緩和が見られます。場合によっては、外傷や線維軟骨の形成、頭蓋骨や脊椎の骨構造的変化がこの状態を引き起こすことがあります。さらに、アーノルド・キアリ奇形や動静脈奇形は神経圧迫に寄与することがあります。

大後頭神経の圧迫点(1~6)

第2頚髄神経背側支から発生し、その後、内側を進み下斜頭筋(OCI:obliquus capitis inferior muscle)の下縁に達し(1)、後頭下三角を横断します。その後、大後頭神経は半棘筋(SS:semispinalis capitis muscle)に入り(2)、SSから出た(3)後、僧帽筋(TM:trapezius muscle)に入り(4)、TMから出ます(5)。大後頭神経が後頭動脈(OA:occipital artery)と交差する部位も圧迫点(6)となりえます。

文献2】より

小後頭神経の圧迫点(1’)

第2頚髄神経腹支から発生し、胸鎖乳突筋の後縁に沿って上行し、頸筋膜を深く貫通し、胸鎖乳突付着部の後縁を横切り(1’)、頭皮の浅層筋膜に至ります。耳、乳様突起、後頭への3つの枝に分かれます。

文献2】より

第3後頭神経の圧迫点(1~6)

第3頚髄神経の背側支から発生し、第2-3頸椎の背外側面を回り(1)、半棘筋に沿って進みます。C2棘突起で背側に回転し、半棘筋(SS;2)、頭脾筋(SC:Splenius capitis muscle;3)、僧帽筋(TM;4)を貫通し、筋肉から抜けた部位の皮膚領域を支配します。重要なのは、第3後頭神経が多くの枝を大後頭神経や小後頭神経に送っているため、第3後頭神経だけで症状を区別するのが難しい可能性があることです。

症状

一般的な臨床特徴は、片側の痛み(81%)、刺すような痛み(59%)、強い痛み(54%)でした。痛みはほとんどの場合片側から始まり、その後両側に広がることがあります。両側症状は症例の3分の1に現れます。痛みは発作性で数秒から数分持続します。感覚鈍麻合併も多く見られました(73%)。片頭痛の既往歴は一般的で(46%)、首の外傷歴がある患者も一定の割合いました(30%)。

診断

病歴聴取と身体検査を終えた後、疑わしい神経の局所麻酔遮断によって診断が確定されます。これは国際頭痛分類(ICHD-3)基準に基づく診断の必須ステップです。患者は局所麻酔の間、神経ブロックによる痛みの緩和が期待されます。圧迫が後頭神経痛の主な病因と考えられているため、影響部位に病変や腫瘤の疑いがある場合はCTやMRIなどの画像診断を検討すべきです。


文献4】より

治療・管理

保存的治療・薬物療法

後頭神経痛には複数の治療法があります。頸部カラーによる首の固定、理学療法、冷凍療法などの保守的な治療法は、プラセボに対する有効性が示されていません。非ステロイド性抗炎症薬、三環系抗うつ薬、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、抗けいれん薬、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリン)、ビタミンB12は症状緩和に役立つ可能性があります。日本の臨床では、筋弛緩薬、抗不安薬、葛根湯などの漢方薬を使われることがあります。

神経ブロック

診断的神経ブロックの後、治療ブロックが試みられることがあります。通常、局所麻酔薬にステロイドが添加されますが、効果は様々です。後頭神経ブロックとして、局所麻酔薬とデキサメタゾンを用いた注射を受けた患者44名を対象とした前向き研究では、44名中42名が施術後および6か月後の追跡時に改善が認められました。また、局所麻酔による単回浸潤後、64%の患者で短期的な効果(1週間未満)が見られ、その内36%は1か月以上効果が続きました。ブロックの精度向上のため、超音波ガイド技術が開発されています。ボツリヌス毒素A注射は、ここで述べる多くの他の技術よりも副作用が低い治療法として考えられております。最近の試験では50%以上の改善が示されています。



凍結アブレーション術

超音波ガイド下経皮的凍結アブレーション術は、多くの臨床医によって一般的に行われる手技です。適切な温度では、神経は永久的な損傷ではなく、一時的な損傷が起こるはずです。しかし、-70℃以下の温度では神経損傷の可能性があります。最近では、2018年のKastlerらによる論文で、非盲検方式で良好な結果を得た7人の患者が報告されています。ただし、追跡期間は3か月に制限されていました。

高周波治療

熱高周波治療は後頭神経痛の治療に効果ですが、神経腫や神経損傷による痛みの悪化など、重篤な合併症も伴います。神経構造に通常損傷を伴わないパルス高周波治療(Pulsed radiofrequency treatment:PRF)への関心は高まっています。その作用機序は電気場の生成を通じて痛みの伝達と増強を妨げ、下降調節の強化、遺伝子発現の変化を招くと仮説されています。しかし、その正確な作用機序はまだ解明中です。Huangらによる研究では、102名の患者にPRF治療を行いました。患者の51%が50%以上の痛みの緩和を経験し、少なくとも3か月間持続しました。4人の患者が一時的に痛みの悪化を報告しました。ある患者は新しいタイプの痛みを発症し、3週間以内に解消しました。Cohenらは、診断ブロックに短期的な緩和効果を示した後頭神経痛または片頭痛患者81名を対象に、二重盲検多施設比較効果研究を実施しました。局所麻酔注射+3サイクルのPRF(42例)と局所麻酔およびステロイド注射+偽PRF(39名)を比較しました。痛みの軽減はPRF群において全期間で優れておりましたが、6か月間の追跡期間を通じて痛み緩和効果は徐々に減少しました。

後頭神経刺激(Occipital Nerve Stimulation : ONS)

後頭神経刺激は、従来の治療に抵抗性の後頭神経痛に対して用いられます。これは末梢および中枢の侵害受容入力の調節を伴うと考えられています。ONSは局所的な脳血流の増加から脳幹の痛み抑制中枢を活性化する可能性があると推測されています。後頭神経刺激は、神経刺激リードを頭蓋底に水平または斜めに配置し、大後頭神経が出る位置に配置します。リスクには手術部位やリードの感染や電池の変位や骨折が含まれます。ONSの成功は主に適切な患者選択によって決定されます。最初の論文はWeinerらによる13人の患者を対象とした症例シリーズで、1〜6年の追跡期間後、3分の2で>75%、3分の1で>50%の痛み緩和を示しました。神経外科医会議が発表した系統的レビューおよびエビデンスに基づくガイドラインでは、ONSが医学的に難治性後頭神経痛患者に対する治療選択肢であることを示唆しています。



手術

外科的減圧はしばしば最後の手段と考えられています。後頭神経痛の治療には、C(頸椎)1–C3後根の硬膜内切片、C2の神経節切開術、神経減圧術(下斜頭筋の一部切除など)、末梢神経摘出など、さまざまな外科的アプローチが用いられています。手術の合併症としては、頭皮の過敏症、感覚障害、神経腫形成、聴力喪失・めまいなどが起こり得ます。

鑑別診断

後頭神経痛の鑑別診断には、頭痛や顔面痛を伴うあらゆる障害が含まれます。後頭神経と第8、第9、第10脳神経の間に接続が存在する可能性があるため、患者は視力障害、めまい、副鼻腔のうっ血などの非特異的症状を呈することもあります。 後頭神経痛と混同されやすい疾患には、片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛などがあります。後頭神経痛を他の疾患と区別する重要なステップは、後頭神経ブロックへの反応です。

予後

短期的な緩和は基本的な治療で得られます。まれに、局所麻酔の診断的注射が数か月間の鎮痛をもたらすことがあります。上記の高度な治療は、数週間から数年にわたる改善をもたらす可能性があります。

文献

1】Occipital Neuralgia. StatPearls Publishing 2026 Jan
2】 An anatomical analysis of the occipital nerve complex: an essential tool for the application of occipital nerve blocks. BMC Neurology 2024;24:308
3】 Epidemiology and clinical features of occipital neuralgia: A systematic review and meta-analysis. Cephalalgia 2025;45:1–13
4】 Cervicogenic headache and occipital neuralgia. Pain Practice 2025;25:e13405.
https://doi.org/10.1111/papr.13405

<<2026年7月15日作成>>
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