成人発症スティル病について説明します。
成人発症スティル病

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成人発症スティル病

成人発症スティル病

成人発症スティル病(Adult Onset Still’s Disease)は、全身性炎症性疾患であり、39℃を超える間欠熱、関節炎(関節痛)、一過性のサーモンピンク色の発疹などの臨床的特徴があります。非特異的な症状のため診断遅延がしばしば起こります。最近の研究(2023年)により、成人発症スティル病と全身性若年性特発性関節炎は遺伝的および免疫学的特徴が共通する疾患連続体であるという概念が強く提唱されています。

歴史

スティル病は発熱、関節炎、サーモン色の皮疹の三つを特徴とする小児の疾患として、1897年にSir George Stillによって初めて記載されました。現在では全身性若年性特発性関節炎と呼ばれています。1971年Eric Bywatersは成人における類似の炎症性疾患である成人発症スティル病を記述しました。当初両疾患は連続体として考えられてきました。実際、17歳から35歳の14人の女性を対象としたBywatersの研究によると、臨床的特徴は全身性若年性特発性関節炎患者と同一でした。 その後、両疾患を区別するための16歳の制限が設けられましたが、これは恣意的であり、20世紀後半のイギリスにおける小児科部門と成人医学部門の年齢区分に関連していました。2023年欧州リウマチ学会連合(EULAR)と小児リウマチ学会(PReS)は以下に示すように全身性若年性特発性関節炎と成人発症スティル病が連続体としてスティル病スペクトラムの概念であるという提唱を行いました。

全身性若年性特発性関節炎との連続性

成人発症スティル病と全身性若年性特発性関節炎の類似性を示す説得力のある証拠に基づき、多くの専門家は「両疾患は異なる年齢で起こる同じ病気である」と考えていましたが、正式な合意は存在しませんでした。そこで、2023年欧州リウマチ学会連合(EULAR)と小児リウマチ学会(PReS)は、小児および成人疾患のリウマチ専門医の視点を均一化することを決定し、両疾患の診断と管理に関する共同勧告を作成するタスクフォースを設置しました。


文献3】より

臨床症状の有病率を比較すると、筋肉痛、咽頭痛、体重減少を除き、全身性若年性特発性関節炎と成人発症スティル病で差はなく、筋肉痛、咽頭痛に関しては幼い子どもが報告しにくい症状であり、報告バイアスの可能性が示唆されました。


文献3】より

検査所見ではCRP高値、血沈亢進で見られる炎症反応高値、フェリチン高値なども両疾患で差は見られませんでした。


文献3】より

合併症に関してはAAアミロイドーシスが全身性若年性特発性関節炎で成人発症スティル病よりも多く見られますが、他の合併症の有病率は両疾患で変わりませんでした。さらに、全身性若年性特発性関節炎および成人発症スティル病におけるサイトカインプロファイルにも顕著な類似性が認められました。結論として、タスクフォースは、「全身性若年性特発性関節炎と成人発症スティル病の間に連続性が存在する」と提唱しました。

誘因

成人発症スティル病の原因は明確に理解されていません。実際、大多数の自己免疫疾患および自己炎症性疾患と同様に、遺伝的素因と環境要因との関連が考えられます。

遺伝的素因

成人発症スティル病に関与する単一の遺伝子はまだ特定されていませんが、いくつかの研究で成人発症スティル病および全身性若年性特発性関節炎に対する遺伝的感受性が示されています。スティル病の遺伝的背景の一部として、ゲノムワイド関連研究によりHLA(ヒト白血球抗原)遺伝子クラスター(特にHLA-DRB1)が疾患感受性と関連していることが特定されています。他の遺伝的(非HLA)関連の可能性については、成人発症スティル病患者の多くにIL-1およびIL-18経路の遺伝子多型が確認されております。

環境要因

100人の成人発症スティル病患者を調べたところ、30%で先行ウイルス感染が報告されており、インフルエンザが最も一般的でした。インフルエンザやB型肝炎ワクチン接種後に、成人発症スティル病発症したことが報告されており、これはアジュバント誘発性免疫反応による可能性があります。

疫学

成人発症スティル病の年間発生率は、世界中の10万人あたり0.16〜0.62と推定されております。有病率は、世界的には人口10万人あたり1〜3.4人の範囲で、日本やトルコではより高い有病率が報告されています(10万人あたり日本3.9人、トルコ6.77人)。成人発症スティル病の発症年齢は中央値36歳ですが、すべての成人年齢層で発症します。男女比は1:1.2です。

病態生理

成人発症スティル病は、自然免疫と適応免疫の両方に関わる全身性炎症性疾患です。その病因は完全には解明されていませんが、好中球、マクロファージ、T細胞などの免疫細胞と炎症促進性サイトカイン、特にインターロイキン(IL)-1、IL-6、IL-18、インターフェロンγ(IFN-γ)が疾患発生において中心的な役割を果たしています。


文献5】より

好中球

自然免疫の担い手である好中球の活性化は成人発症スティル病の病因において基本的な役割を果たしております。PAMP(病原体に存在する関連分子パターン)やDAMP(損傷細胞から放出される分子パターン)によって刺激された活性化された好中球は、好中球細胞外トラップ(NET)を形成し、マクロファージや樹状細胞(Dendritic cell)を刺激します。刺激されたマクロファージはIL-1β、IL-6、IL-18、TNFαなどの炎症促進サイトカインを放出し、好中球を刺激してNET放出を促進し、正のフィードバックループを形成します。さらに、最近の研究では、Dendritic cellから放出されるタイプIのIFNであるIFN-αが成人発症スティル病におけるNETの形成を誘導できることが示されています。

マクロファージ

もうひとつの自然免疫に関連するマクロファージは活性化されると、IL-1β、IL-18、IL-6、TNFαなどを産生します。マクロファージ内のNLRP3の活性化は、カスパーゼ1を介してIL-1βおよびIL-18の産生を刺激します。IL-1βはNF-κB経路を活性化し、全身炎症や関節損傷を増幅させます。炎症促進サイトカインであるIL-18は、IFNγの過剰産生やNK細胞活性を促進します。IL-18は上皮細胞の活性化も誘発し、咽頭痛などの症状に寄与します。さらに、マクロファージ活性の増加は高フェリチン血症に関連しています。IL-6は発熱、関節炎および急性期反応を媒介し、CRP値/血沈上昇と関連しています。

T細胞

適応免疫の担い手であるT細胞も成人発症スティル病の炎症に関与しています。未治療の成人発症スティル病患者では、Tヘルパー17(Th17)細胞の割合が増加し、Th1/Th2比率も上昇しています。Th17細胞の割合とIL-17濃度は、成人発症スティル病における疾患活動性と相関しています。マクロファージから放出されたIL-1βはCD4 T細胞のTh1細胞への分化を促進します。一方、同じくマクロファージから放出されたIL-18はTh1細胞を活性化してIFN-γを産生させ、マクロファージをさらに活性化します。すなわち、活性化されたT細胞が正のフィードバックループに参加し、マクロファージの活性化につながり、病気の病因に寄与していることを示唆しています。いくつかの研究では、成人発症スティル病で自然免疫活性化の後、適応免疫の活性化が続くことが示されており、両方の免疫担当細胞が疾患の病因および進行に関与するという証拠を支持しています。免疫学的不均衡の最終的な結果は、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-17、TNF-α、IFN-γなどの炎症性サイトカインの大量放出が起こり、制御不能な状態となると、いわゆるサイトカイン・ストーム/マクロファージ活性化症候群を引き起こす可能性があります。

成人発症スティル病の病型、症状、検査、診断



成人発症スティル病の治療、予後


文献

1】Advancing Precision Medicine in Adult-Onset Still’s Disease: Insights into Biomarkers, Therapies, and COVID-19 Impacts. Mediterr J Rheumatol 2025;36:509-523
2】Adult-onset Still’s disease in focus: Clinical manifestations, diagnosis, treatment, and unmet needs in the era of targeted therapies. Seminars in Arthritis and Rheumatism 2021;51:858-874. doi.org/10.1016/j.semarthrit.2021.06.004
3】Systemic juvenile idiopathic arthritis and adult- onset Still’s disease are the same disease: evidence from systematic reviews and meta- analyses informing the 2023 EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease. Ann Rheum Dis. 2024; 83(12):1748-1761. doi: 10.1136/ard-2024-225853.
4】EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still’s disease, comprising systemic juvenile idiopathic arthritis and adult- onset Still’s disease. Ann Rheum Dis. 2024;83:1614-1627. doi:10.1136/ard-2024-225851
5】Updates on the pathogenesis and molecular targeted therapies of Still’s disease. Immunol Med. 2026;49:130-146. doi: 10.1080/25785826.2025.2576285.
6】Managing the clinical heterogeneity of patients with Still’s disease, from early diagnosis to timely treatment. Autoimmunity Reviews 24;2025:103880. doi.org/10.1016/j.autrev.2025.103880

<<2026年6月26日作成>>

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