リウマチ性腫瘍随伴症候群について説明します。
リウマチ性腫瘍随伴症候群

リウマチ性腫瘍随伴症候群


リウマチ性腫瘍随伴症候群

リウマチ性腫瘍随伴症候群(Rheumatic Paraneoplastic syndromes)


 腫瘍随伴症候群は、がんなどの悪性新生物の存在下で認められるさまざまな症状で、腫瘍自体またはその転移に直接的に関連しないものを指す。悪性新生物と腫瘍随伴症候群との間の因果関係は、腫瘍に対し、外科療法、放射線療法、化学療法などを行って、腫瘍の消失・縮小が認められると、腫瘍随伴症候群も改善するという事実によって支持される。腫瘍細胞によって分泌されるいくつかの活性物質 (ホルモン、サイトカイン、酵素) は、臓器に対し炎症反応を引き起こす可能性がある。あるいは、腫瘍細胞を破壊する免疫反応が類似した抗原に対する交差反応を引き起こす可能性もある。ほとんどの場合、腫瘍随伴症候群は悪性腫瘍の診断に先行するため、発見前のがんの診断へと導く可能性があり重要である。今回、腫瘍随伴症候群の内、リウマチ性疾患症状を起こす病態について総説(Reumatismo, 2018; 70 (4): 199-211を中心にして)を参考にしてまとめてみた。

悪性腫瘍の合併頻度が高いリウマチ性疾患

 悪性腫瘍の合併頻度が高い順に記載してみた(合併率は私が調べられた範囲内に留まる)。

がん性多発性関節炎(CARCINOMATOUS POLYARTHRITIS)

 がん性多発性関節炎は、下肢の大関節(股関節や膝関節)の急性の非対称性関節炎を特徴とする、高齢者に見られる非常にまれな疾患である。CRPなどの炎症反応は上昇するが、リウマチ反応や抗CCP抗体は陰性である。高齢患者で、従来の治療に反応しない場合は、根底に悪性腫瘍が存在するかもしれないと疑うべきである。次の3点を満たすものをがん性多発性関節炎と定義されている。
(i) 悪性疾患の経過中、または、悪性腫瘍が発見される前に関節炎を発症する。
(ii) 症状が腫瘍の直接的な浸潤または圧迫の結果ではない。
(iii)元の腫瘍の治療により関節炎症状が改善する。
【症状】
 発熱、倦怠感、貧血、関節炎
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 胃、結腸、肺、膵臓、乳房、喉頭、卵巣のがん、および白血病、悪性リンパ腫などの血液系増殖性疾患。下記の論文では74例の報告例が記載されている。
【参考文献】
Migrating Polyarthritis as a Feature of Occult Malignancy: 2 Case Reports and a Review of the Literature
Case Rep Oncol Med. 2015;2015:934039. doi: 10.1155/2015/934039. Epub 2015 Oct 19.

手掌筋膜炎・多発関節炎症候群(PALMAR FASCIITIS AND POLYARTHRITIS SYNDROME)

 手掌筋膜炎・多発関節炎症候群は両手の屈曲拘縮と手掌筋膜の肥厚(手掌筋膜の線維化)を特徴とし、悪性腫瘍が検出される数か月から数年前に発症する可能性がある。
【症状】
 手掌の有痛性の硬結、結節、紅斑、手のこわばり、手指の屈曲拘縮、上肢の多発性関節炎
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 卵巣がんで多くみられるが、他の悪性腫瘍 (乳房、子宮、前立腺、肺、膵臓、胃など)でもみられる。良性疾患では、結核、甲状腺炎、良性の卵巣嚢胞など。
【参考文献】
Idiopathic palmar fasciitis and polyarthritis syndrome
BMJ Case Rep 2019;12:e232954. doi:10.1136/bcr-2019-232954

アミロイド関節症(AMYLOID ARTHROPATHY)

 アミロイドーシスは、多くの臓器にアミロイドと呼ばれる不溶性低分子量タンパク質が病的に沈着することを特徴としている。滑膜および関節周囲組織においてアミロイドが蓄積すると、多発性関節症を発症する。2013年のReviewで101例の多発性骨髄腫に合併するアミロイド関節症を解析した結果、63例が多発性骨髄腫発症前に、関節症を発症し、33例は関節リウマチと誤診されていたと報告されている。
【症状】
 典型的には肩、膝および手関節に関節症が起こり、多くの場合、非対称でそれほど痛みがない。
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 多発性骨髄腫、Waldenstromマクログロブリン血症
【参考文献】
Amyloid arthropathy associated with multiple myeloma: a systematic analysis of 101 reported cases
Semin Arthritis Rheum. 2013 Dec;43(3):405-12

肥大型骨関節症(HYPERTROPHIC OSTEOARTHROPATHY)


 肥大型骨関節症は、重度の関節痛あるいは関節炎、バチ指、および管状骨の骨膜症の3主徴を認める症候群である。骨のX線検査では、骨幹、特に脛骨、腓骨、尺骨、中手骨、および中足骨の骨膜下の増殖が見られる。骨シンチグラフィーは、長骨における線形の骨膜取り込みを示す。巨核球および血小板によって分泌される血管内皮増殖因子 (VEGF) の血清レベルが高く、VEGFが肥大型骨関節症の病態に関与していると考えられている。一次性肥大型骨関節症はまれで、二次性肥大型骨関節症の90%に悪性腫瘍の合併が認められる。
【症状】
 バチ指
 動くと悪化し、休むと軽減する骨の痛み
 手関節、膝関節、足関節の痛み
 末梢血管拡張によって引き起こされる皮膚の熱感、チアノーゼ、四肢の発汗
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 肺がん(気管支由来)、悪性腫瘍以外では、肺炎、COPD、嚢胞性線維症、右左シャントを伴う心疾患等
【参考文献】
Secondary Hypertrophic Osteoarthropathy
StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023 Jan
PMID: 30020714 Bookshelf ID: NBK513342

ランバート・イートン症候群(LAMBERT-EATON SYNDROME)

 ランバート・イートン筋無力症症候群は、自律神経ニューロンのシナプス前終末への電位ゲートカルシウムチャネルに対する自己抗体によって引き起こされる疾患で、神経筋接合部におけるアセチルコリン放出の欠陥を特徴とする自己免疫疾患である。悪性腫瘍の合併率は60%と報告されている。
【症状】
 異常な発汗、起立性低血圧および性的インポテンス、筋肉痛、下肢の筋力低下、複視、眼瞼下垂、嚥下障害 
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 小細胞肺がん、リンパ増殖性疾患、乳がん、結腸がん、胃がん、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、または自己免疫疾患 (甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、セリアック病)
【参考文献】
Lambert-Eaton Myasthenic Syndrome
Neurol Clin. 2018 May ; 36(2): 379?394.

皮膚筋炎/多発性筋炎(DEMATOMYOSITIS/POLYMYOSITIS)

 多発性筋炎/皮膚筋炎は、筋肉の炎症を特徴とする膠原病のひとつで、皮膚症状を伴うものを皮膚筋炎と呼び、皮膚症状のないものを多発性筋炎と呼ぶ。皮膚筋炎の5.5-42%に悪性腫瘍の合併が認められると報告されている。抗TiF1γ抗体陽性の皮膚筋炎患者では悪性腫瘍の合併率が高い(Table参照)。詳しくはこちらを。

【症状】
 皮疹
 筋肉痛、筋力低下
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 腺がん(胃、結腸直腸、膵臓、甲状腺、乳房、卵巣、子宮および前立腺); 造血器およびリンパ系悪性腫瘍(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および白血病)
【参考文献】
Autoantibody Markers of Increased Risk of Malignancy in Patients with Dermatomyositis
Clin Rev Allergy Immunol. 2022 Oct;63(2):289-296.

多中心性網状組織球症(MULTICENTRIC RETICULOHISTOCYTOSIS)

 多中心性網状組織球症は、組織球および多核巨細胞の滑膜や皮膚への浸潤を特徴とする、原因不明のまれな多臓器性疾患である。多中心性網状組織球症の33%に悪性腫瘍の合併が認められると報告されている。
【症状】
 耳、鼻、頭皮、手の甲、前腕、および肘に丘疹・結節性発疹
 患者の50%で、唇、口、舌、鼻、咽頭、喉頭に粘液丘疹が見られる
 手の指関節、手関節、肩、股関節、膝、足、脊椎、側頭下顎関節の破壊性関節炎
 骨、肝臓、唾液腺、リンパ節、心臓、肺などにも症状が見られる
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 肺がん、胃がん、乳房がん、子宮頸がん、結腸がん、卵巣がん、悪性リンパ腫、良性疾患では、結核、甲状腺機能低下症、糖尿病
【参考文献】
A Novel Case of Multicentric Reticulohistiocytosis Associated with Renal Cell Carcinoma Successfully Treated with Infliximab and Methotrexate
Case Rep Dermatol. 2023 Jan 9;15(1):10-16

REMITTING SERONEGATIVE SYMMETRICAL SYNOVITIS WITH PITTING EDEMA (RS3PE)

 RS3PE症候群は手足の突然の浮腫、リウマチ因子の対称性関節炎を特徴とする炎症性疾患である。悪性腫瘍の合併率は約20%と報告されている。詳しくはこちらを。
【症状】
 両手足の圧痕を伴う浮腫
 手指、手関節等の対称性関節炎
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 さまざまな固形がん (胃、結腸、前立腺、卵巣、子宮内膜)、悪性血液疾患 (白血病、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群)
【参考文献】
Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema: a review
J Investig Med 69 ; 86-90, 2021
bFGF could be a biomarker of malignancy in RS3PE syndrome: an ambispective single-center cohort analysis of 51 patients
Arthritis Res Ther. 2021 Oct 15;23(1):261. doi: 10.1186/s13075-021-02638-0.

リウマチ性多発筋痛症(POLYMYALGIA RHEUMATICA)

リウマチ性多発筋痛症は、高齢者に発症する上腕・肩と大腿・骨盤周囲の痛みとこわばり、血中の急性期反応物質(血沈、CRP)の増加、およびステロイド療法への迅速な反応を特徴とする疾患である。悪性腫瘍の合併率は3.2-24%と報告されている。詳しくはこちらを。
【症状】
 重要なことに、1つ以上の非定型的特徴を伴うリウマチ性多発筋痛症は、がんの最初の臨床症状を表している可能性があることである。リウマチ性多発筋痛症の非典型的な特徴は、発症年齢50歳未満の場合、上腕・肩と大腿・骨盤周囲の痛みとこわばりが非対称性の場合、血沈が40mm/h未満または100mm/hを超える場合、プレドニゾン 10mg/日投与後の改善が48時間以上遅延する場合が挙げられる。非定型リウマチ性多発筋痛症は、がんの診断の1~13か月前に現れることがある。いずれにせよ、非定型リウマチ性多発筋痛症はがんの最初の間接的な徴候である可能性があるため、悪性腫瘍のスクリーニングをする必要がある。
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 腎臓、肺、結腸のがん、血液悪性腫瘍
【参考文献】
The real evidence for polymyalgia rheumatica as a paraneoplastic syndrome
Reumatismo. 2018 Mar 27;70(1):23-34

再発性多発軟骨炎(RELAPSING POLYCHONDRITIS)

 再発性多発軟骨炎は、軟骨組織、特に鼻、耳、喉頭、気管および関節の再発性炎症を特徴とするまれな自己免疫疾患である。プロテオグリカンを含む組織(眼、心臓、血管、内耳など)にも炎症を起こす。悪性腫瘍の合併率は11-13%と報告されている。
【症状】
 耳の軟骨病変:耳介の腫脹・発赤・疼痛
 鼻の軟骨病変:鼻の変形
 喉頭、気管の軟骨病変:嗄声、喘鳴、呼吸困難
 関節の軟骨病変:手、膝、足関節の非対称性、移動性の関節炎(びらんなし、リウマチ反応陰性)
 内耳病変:感音難聴、耳鳴、めまい
 眼の病変:強膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎
 心臓の病変:弁膜症
 血管の病変:動脈瘤
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫)、骨髄異形成症候群、まれに固形腫瘍(乳房、結腸、肺、膵臓など)、悪性腫瘍以外では、血管炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ベーチェット病、橋本病等
【参考文献】
Relapsing polychondritis: state of the art on clinical practice guidelines
RMD Open 2018;4:e000788. doi:10.1136/rmdopen-2018-000788

悪性腫瘍の合併頻度がそれほど高くないリウマチ性疾患

 一般人口の60歳における10年以内の悪性腫瘍合併リスクは男性で15.7%、女性で10.4%なので、以下の疾患が腫瘍随伴症候群なのか、単なる合併なのか判断が難しい。

 

骨軟化症(OSTEOMALACIA)

 腫瘍によりに骨軟化症が発生することがあり、腫瘍誘発性骨軟化症(Tumor Induced Osteomalacia:TIO)と呼ばれている。腫瘍が産生するfibroblast growth factor 23(FGF23)がリン酸塩の腎排泄増加をもたらすことにより、骨軟化症を起こすと言われている。悪性腫瘍の頻度は9.7%と報告されている。
【症状】
 低リン血症、高リン尿症、病的骨折、筋力低下、身長の減少
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 良性腫瘍であるリン酸尿性間葉系腫瘍(phosphaturic mesenchymal tumor)が最も多い。その他、血管周囲細胞腫、骨肉腫、巨細胞腫瘍、その他の間葉系腫瘍などが、TIOに関連すると報告されている。
【参考文献】
Tumor?Induced Osteomalacia: A Systematic Clinical Review of 895 Cases
Calcifed Tissue International (2022) 111:367?379

続発性痛風(SECONDARY GOUT)

 悪性腫瘍に罹患した患者に放射線療法や化学療法を行うと悪性腫瘍細胞が壊れ、大量の細胞内の核酸が分解し、高尿酸血症を誘発する可能性がある。続発性痛風は、血中尿酸値(12 mg/dL以上)が異常に高く、高齢者に多く、男女差がない点が、一次性とは異なる。痛風患者における悪性腫瘍の頻度は6.8-8.5%と報告されている。
【症状】
 一次性では母趾の関節炎が多いが、続発性では肩や膝などの大関節炎が多い。
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 放射線または抗がん剤で治療された骨髄リンパ球増殖性疾患または固形腫瘍の患者
【参考文献】
A prospective study of gout and cancer
Eur J Cancer Prev. 2009 Apr;18(2):127-32.
Increased risk of cancer among gout patients: a nationwide population study
Joint Bone Spine. 2012 Jul;79(4):375-8.
痛風と核酸代謝 2010;34:236-237
二次性高尿酸血症・痛風の治療

好酸球性筋膜炎(EOSINOPHILIC FASCIITIS)


 好酸球性筋膜炎は、四肢の強皮症様の皮膚硬化を特徴とするまれな疾患である。検査所見では、好酸球増加症、高ガンマグロブリン血症、赤血球沈降速度の増加が認められる。組織像では、深層皮下組織および筋膜において、線維化や好酸球浸潤を伴う炎症性病変が特徴的である。2023年の報告では悪性腫瘍の合併率は6.1%であった。
【症状】
 四肢の皮膚病変の肥厚による四肢の痛み、腫れが生じ、皮膚の陥凹やオレンジ色の外観を呈する事がある。関節炎や骨膜がみられることがある。
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 骨髄増殖性疾患、白血病
【参考文献】
Eosinophilic fasciitis may present as a paraneoplastic syndrome of hematological malignancies-A systematic review
JAAD Int. 2023 Jan 30;11:85-87.

血管炎(VASCULITIS)

 血管炎は、体全体のさまざまなサイズの動脈または静脈の血管に炎症を引き起こす疾患である。悪性腫瘍に関連が良く見られる血管炎は、白血球破砕性血管炎および結節性多発動脈炎である。頻度は低いが、ANCA 関連血管炎、巨細胞性動脈炎も悪性腫瘍と関連が見られる事がある。
1)白血球破砕性血管炎(Leukocytoclastic vasculitis)

 小血管が侵される病気で、皮膚生検では好中球、核片、出血が血管周囲に認められる。全身性血管炎や糸球体腎炎を伴わない。外因性物質(特に薬剤)との免疫反応に続発する血管炎として知られている。白血球破砕性血管炎の3.8-8%が血液悪性腫瘍と関連があると報告されている。
【症状】
 主に下肢に局在する触知可能な紫斑が特徴的である
 発熱、筋肉痛、関節痛(膝や足首)を伴うこともある
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 急性および慢性白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、および固形腫瘍
2)結節性多発動脈炎(Polyarteritis nodosa)
 結節性多発動脈炎は、複数の臓器、特に腎臓の中-小型筋型動脈を侵すの壊死性血管炎である。侵される血管によっては、消化管出血、腸閉塞、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、急速進行性腎不全を引き起こす事もある。
【症状】
 発熱、倦怠感、体重減少、多発関節痛・関節炎、触診可能な紫斑、皮膚潰瘍、高血圧
 末梢神経障害(しびれ、麻痺など)、胸痛、腹痛、下血、頭痛
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 肝臓、結腸、膀胱、肺、下咽頭のがん、および血液疾患(白血病および骨髄異形成症候群)
【参考文献】
Dermatological manifestations of hematologic neoplasms. Part II: nonspecific skin lesions/paraneoplastic diseases
An Bras Dermatol. 2023 Mar-Apr;98(2):141-158

全身性硬化症(SYSTEMIC SCLEROSIS)

 全身性硬化症は皮膚や肺・心臓・消化管などの硬化(線維化)を特徴とする膠原病のひとつである。詳しくはこちらを。悪性腫瘍に随伴してみられる皮膚硬化病変は、偽性硬化症とも呼ばれる。悪性腫瘍の合併率は3-11%と報告されている。
【症状】
 皮膚硬化
 癌の家族歴、発癌物質への曝露歴、非対称皮膚硬化、非対称レイノー現象、毛細血管鏡検査における全身性硬化症に典型的な異常の出現の欠如、全身性硬化症に特徴的な抗体の欠如、発熱・疲労・体重減少が見られた時は、悪性腫瘍に伴う硬化症を念頭に入れるべきである。
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 肺がん、乳がん、胃がん、形質細胞腫、カルチノイド、T細胞リンパ腫
【参考文献】
Scleroderma associated with renal cell carcinoma: A case report and literature review
J Scleroderma Relat Disord. 2021 Oct;6(3):316-319.
Diagnostic Dilemma of Paraneoplastic Rheumatic Disorders: Case Series and Narrative Review
Cureus. 2021 Nov 29;13(11):e19993. doi: 10.7759/cureus.19993. eCollection 2021 Nov.

全身性エリテマトーデス(SYSTEMIC LUPUS ERYTHEMATOSUS)

 全身性エリテマトーデスは紅斑、関節痛、腎障害、漿膜炎など多彩な症状を呈する膠原病のひとつである。詳しくはこちらを。2021年のメタアナリシスによると80,833人の全身性エリテマトーデス患者で3,694件(4.6%)の悪性腫瘍が見つかり、一般人と比べた悪性腫瘍の危険比は1.18 (95% CI:1.00 1.38)と報告されている。
【症状】
 関節炎、多発性漿膜炎、糸球体腎炎、レイノー現象
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 乳がん、肺がん、卵巣がん、ならびに白血病およびリンパ腫
【参考文献】
Risk of malignancy in patients with systemic lupus erythematosus: Systematic review and meta-analysis
Semin Arthritis Rheum. 2021 Dec;51(6):1230-1241.

クリオグロブリン血症(CRYOGLOBULINEMIA)

 クリオグロブリンは、37℃未満の温度で血清中に沈殿し、再加温すると溶解する免疫グロブリンである。 3種類のクリオグロブリンが同定されている。
  I型:単クローン性免疫グロブリン
  II型:単クローン性IgM および多リクローン性IgG
  III型:多クローン性IgM および多リクローン性IgG
 II型とIII型を合わせて混合型クリオグロブリン血症と呼ぶ。クリオグロブリンが小血管(毛細血管、細動脈、細静脈)に沈着すると血管炎引き起こす。
 混合型クリオグロブリン血症の80-85%は慢性C型肝炎に伴うもので、10-15%がB型肝炎またはHIV 感染、シェーグレン症候群、SLE、関節リウマチなどの自己免疫疾患、血液悪性腫瘍に伴うものであると報告されている。
【症状】
 紫斑、関節痛、筋力低下、レーノー現象、皮膚潰瘍、末梢神経障害、腎障害・蛋白尿・血尿
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 I型:多発性骨髄腫、Waldenstromマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病
 混合型クリオグロブリン血症:C型肝炎、悪性リンパ腫、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス
【参考文献】
Diagnosis and management of leukocytoclastic vasculitis
Intern Emerg Med. 2021 Jun;16(4):831-841.

成人発症スチル病(ADULT ONSET STILL’S DISEASE)

 成人発症スチル病は、子供に発症するスチル病(現在は全身型若年性特発性関節炎と呼ぶ)と非常によく似た症状を呈する16歳以上の成人に発症する病気である。抗核抗体やリウマチ因子は通常陰性である。血液検査では肝障害、好中球増加を伴う白血球増加、炎症反応高値、フェリチン高値を認める。2016年のReviewで47例の悪性腫瘍合併成人発症スチル病の報告があったと記載されている。悪性腫瘍合併成人発症スチル病の危険信号は、高齢発症、非定型的発疹、LDHの異常高値、血球分画における非定型細胞の出現、および可溶性インターロイキン2受容体高値であった。
【症状】
 間欠熱(Spike fever):午前中は平熱で、夕~夜にかけて39-40℃に達する発熱
 サーモンピンク紅斑:発熱とともに出現する移動性の淡いピンク色の紅斑で、かゆみはない
 関節炎
 咽頭炎・リンパ節腫大・肝脾腫
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 咽頭類表皮がん、肺がん、乳がん、甲状腺がん、食道がん、悪性血液疾患(白血病、骨髄増殖性症候群)など
【参考文献】
Adult onset Still's disease associated with malignancy-Cause or coincidence?
Semin Arthritis Rheum. 2016 Apr;45(5):621-6

結節性紅斑(ERYTHEMA NODOSUM)


 結節性紅斑は、皮下脂肪組織の炎症により、主に下肢の紅斑を伴う皮下硬結・結節を起こす病態である。結節性紅斑では0-4%血液悪性腫瘍(主に白血病)と関連があると報告されている。
【症状】
 典型的には下腿伸側の有痛性の紅斑、多くの場合、膝や足首の関節痛や関節炎を伴う。
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 固形腫瘍や血液悪性腫瘍、溶連菌感染、サルコイドーシス、ベーチェット病、結核、炎症性腸疾患関連関節炎など
【参考文献】
Dermatological manifestations of hematologic neoplasms. Part II: nonspecific skin lesions/paraneoplastic diseases
An Bras Dermatol. 2023 Mar-Apr;98(2):141-158

腫瘍随伴性レイノー現象(PARANEOPLASTIC RAYNAUD'S PHENOMENON)

(傍腫瘍性先端血管症候群:PARANEOPLASTIC ACRAL VASCULAR SYNDROME)
 レイノー現象は通常、基礎疾患のない原発性が87%を占め、二次性(13%)は自己免疫疾患、がん、喫煙、特定の薬によるものである。腫瘍随伴性レイノー現象は、まれに文献で報告されている程度である。 50歳以上で初めてレイノー現象が出現した場合、指の壊死を伴い、左右非対称性にレイノー現象が出現した場合は、腫瘍随伴性レイノー現象を考慮すべきである。
【症状】
 寒冷刺激や精神的緊張などによって誘発される血管れん縮による手指などの皮膚の色調変化であり、典型的には蒼白、紫色、発赤の順に3相性の色調変化を認める。
 手指、足趾先端の壊死
【合併する悪性腫瘍等の疾患】
 多くのがん腫(胃腸や肺など)、肉腫、リンパ腫、白血病
【参考文献】
Diagnostic Dilemma of Paraneoplastic Rheumatic Disorders: Case Series and Narrative Review
Cureus. 2021 Nov 29;13(11):e19993. doi: 10.7759/cureus.19993. eCollection 2021 Nov.

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