新型コロナウイルスワクチンとリウマチ性疾患

新型コロナウイルスワクチンとリウマチ性疾患

新型コロナウイルスワクチンとリウマチ性疾患

2021年12月アメリカリウマチ学会(ACR)からリウマチ性疾患患者に対する新型コロナ(COVID)ワクチン接種に関するガイダンス第4版(Version 4)が発表された。 https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/COVID-19-Vaccine-Clinical-Guidance-Rheumatic-Diseases-Summary.pdf

 

尚、日本リウマチ学会の新型コロナウイルス(COVID-19)・ワクチンについての情報は下記を参照してください。https://www.ryumachi-jp.com/information/medical/covid-19/

 

リウマチ性疾患患者に対してのCOVID-19ワクチン接種に関する一般的注意事項

・リウマチ診療に関わる医療従事者(医師・看護師等)は、リウマチ性疾患患者と意見交換を行い、COVID-19ワクチン接種について話し合う責任がある。

 

・疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者では、一般集団と比較してCOVID-19による入院リスクが高く、転帰が悪い傾向がある。

 

・COVID-19のリスクを考慮すると、疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者は、同年代の一般集団よりも先にワクチン接種を受けるべきである。

 

・ワクチン成分に対するアレルギーの既往以外に、疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者では、COVID-19ワクチン接種に対する禁忌はない。

 

・一般集団と比較して、全身性免疫調節療法(下表参照)を受けている多くの疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者では、COVID-19ワクチン接種後の免疫応答は低下すると想定される。

 

・疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者では、COVID-19ワクチン接種後に病勢が悪化することが理論的に想定されている。 ただし、リウマチ性疾患患者に対するCOVID-19ワクチン接種の利点は、新たに発症する自己免疫の潜在的なリスク(病勢悪化のリスク)を上回る。

 

リウマチ性疾患患者におけるCOVID-19ワクチン接種に関する推奨事項(ワクチン接種の適応と時期について検討された)

・リウマチ性疾患患者は、米国食品医薬品局(FDA)等で承認されているの年齢制限に準じて、COVID-19ワクチン接種を受けるべきである。

 

・リウマチ性疾患患者は、全身性免疫調節療法(下表参照)の受けていてもいなくても、疾患活動性があってもなくても、状態に関わらすCOVID-19ワクチン接種を受けるべきである。

 

・疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者では、Johnson & Johnson ワクチン(日本未発売)よりもいずれかのmRNAワクチン(ファイザー製、もしくはモデルナ製)の接種が推奨される。mRNAワクチンに関しては、どちら(ファイザー製、もしくはモデルナ製)を接種しても支障はない。

 

・複数回ワクチンを接種する場合、疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者は初回のワクチン接種で重篤な有害事象がない限りは、同じ種類のワクチンで2回目の接種を受けるべきである。

 

・今までに2回mRNAワクチン(ファイザー製、もしくはモデルナ製)を接種されたリウマチ性疾患患者は3回目の接種が推奨される。

 

・Johnson & Johnson ワクチン(日本未発売)を接種されたリウマチ性疾患患者は、追加接種として、いずれかのmRNAワクチン(ファイザー製、もしくはモデルナ製)接種が推奨される。

 

・医師は、ワクチン接種後のCOVID-19に対する免疫状態を評価したり、ワクチン未接種者のワクチン接種の必要性を評価したりするために、COVID19に対する抗体価を定期的にチェックすべきでない。

 

・COVID-19ワクチン接種後においても、リウマチ性疾患患者は、身体的距離およびその他の予防措置に関するすべての公衆衛生ガイドラインに引き続き従う必要がある。

 

・COVIDに関連する転帰不良のリスクが高いリウマチ性疾患患者が、濃厚接触者となった場合の予防として、あるいは軽症のCOVID19の治療として、REGEN-COV(カシリビマブとイムデビマブ)による抗体カクテル療法を受ける必要がある。

 

・疾患活動性の高いリウマチ性疾患患者を保護するために、同居者や頻繁に密接に接触する人は、COVID-19ワクチン接種を受ける必要がある。ただし、同居者や頻繁に密接に接触する人の早期予防接種の優先順位を上げる必要はない。

 

・COVID-19ワクチンの接種は、生命を脅かす状況にある(たとえば、ICU入室中などの)患者を除き、疾患の活動性や重症度に関わらず、推奨されているリウマチ性疾患患者に対してできる限り早く投与するべきである。

 

リウマチ性疾患患者におけるCOVID-19ワクチン接種に関連したワクチン接種・全身性免疫調節療法の使用のタイミングについてのガイダンス

表では、以前の版(Version)と異なる部分は赤字で記してある。

 

薬剤 全身性免疫調節療法とワクチン接種のタイミングにおける注意事項(1回目接種と追加接種の双方に適用)
アバタセプト(商品名:オレンシア)点滴静注 アバタセプト点滴静注の次の投与の1週間前にワクチン接種を行うように調整する。
アバタセプト(商品名:オレンシア)皮下注 ワクチン接種後、1~2週間(疾患活動性が許す限り)休薬する。
アセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)、NSAID(非ステロイド系消炎鎮痛剤 商品名:ロキソニン、セレコックス、ボルタレン、ナイキサン、ロルカム、フルカム、モービック、ハイペン、インフリー、ブルフェンなど) 病気が安定している場合、ワクチン接種前24時間は休薬する。症状を治療するための使用にワクチン接種後の制限はない。
ベリムマブ(商品名:ベンリスタ)皮下注 ワクチン接種後、1~2週間(疾患活動性が許す限リ)休薬する。
TNF阻害薬【インフリキシマブ(商品名:レミケード)、エタネルセプト(商品名:エンブレル)、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)、ゴリムマブ(商品名:シンポニー)、セルトリズマブ(商品名:シムジア)】、IL-6受容体阻害薬【トシリズマブ(商品名:アクテムラ)、サリルマブ(商品名:ケブザラ)】、IL-1阻害薬【カナキヌマブ(商品名:イラリス)】、IL-17阻害薬【セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(商品名:トルツ)、ブロダルマブ(商品名:ルミセフ)】、IL-12/23阻害薬【ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)、グセルクマブ(商品名:トレムフィア)】、IL-23阻害薬【リサンキズマブ(商品名:スキリージ)】、およびその他のサイトカイン阻害剤 タスクフォースは、1回目のワクチン接種後および追加ワクチン接種後のいずれにおいても、これらの薬剤を一時的に休薬するかどうかについて合意に達することができなかった。
シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)静注 可能であれば、各ワクチン接種から約1週間後にシクロホスファミドを投与するよう調整する。
ヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル) 免疫調節療法またはワクチン接種のタイミングに変更はない。
リツキシマブ(商品名:リツキサン)または他の抗CD20B細胞枯渇剤 接種前に、リウマチ専門医と投薬およびワクチン接種の最適なタイミングについて話し合うこと。
上記にリストされているものを除く、他のすべての従来型および標的免疫調節薬または免疫抑制薬:スルファサラジン(商品名:アザルフィジンEN)、アプレミラスト(商品名:オテズラ)、アザチオプリン(商品名:アザニン、イムラン)、経口カルシニューリン阻害薬【シクロスポリン(商品名:ネオーラル、サンディミュン)、タクロリムス(商品名:プログラフ)】、レフルノミド(商品名:アラバ)、ミゾリビン(商品名:ブレディニン)、イグラチモド(商品名:ケアラム)、免疫グロブリン静注療法、メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)、JAK阻害薬【トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)、バリシチニブ(商品名:オルミエント)、ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)、ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)、フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)】、ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト)、 ワクチン接種後、1~2週間(疾患活動性が許す限り)休薬する。

 

以下は旧版の内容を示す

 

2021年アメリカリウマチ学会(ACR)からリウマチ性疾患患者に対する新型コロナ(COVID)ワクチン接種に関するガイダンスが発表された。9人リウマチ専門医、2人の感染症専門医、2人公衆衛生専門医の合議による提唱である。

 

リウマチ性疾患患者に対してのCOVID-19ワクチンへの一般的注意

<重要と思われる部分のみ抜粋する(私の解釈を含めて)。>

8.ワクチン安全性

COVIDワクチン成分への重篤なアレルギー以外に、リウマチ性疾患患者に対するCOVID-19ワクチン接種の禁忌は報告されていない。

9.ワクチン有用性

全身性の免疫抑制療法(ステロイド治療、メトトレキサートなどの免疫抑制剤投与、アバタセプトなどの生物学的製剤、バリシチニブなどのJAK阻害剤など)を受けているリウマチ性疾患患者では、COVID-19ワクチンに期待される反応(ワクチン抗体価の上昇など)が一般人口と比較して減弱する可能性がある(下記の投薬調整についてを参照)。

10.疾患関連

一般原則として、ワクチン接種はリウマチ性疾患が十分にコントロールされている状態で行うことが望ましい。 ICUに入室しているような重篤な状態以外、すなわち、外来通院中の方は皆接種可能と判断する。

12.ワクチン安全性

リウマチ性疾患患者に対するCOVID-19ワクチンのメリットは、別の自己免疫性疾患の新規発症、既存のリウマチ性疾患の増悪の潜在的リスクを上回る。

18.ワクチン有用性

ワクチンは2回接種するが、1回目の接種で非重篤な有害事象(発熱、倦怠感、筋肉痛、頭痛など)があった場合でもリウマチ性疾患患者は2回目の接種を受けるべきである。

20.公衆衛生

COVID-19ワクチン接種後も、リウマチ性疾患患者は3密回避や手洗い、アルコール消毒などの予防措置に関する公衆衛生ガイドラインに従い続ける必要がある。

22.ワクチン有用性・疾患関連

致死的な疾患を持つリウマチ性疾患患者(ICU入院中など)を除き、COVID-19ワクチン接種は、患者に対してできる限り早急に行うべきである。

 

COVID-19ワクチン接種前において、リウマチ性疾患患者の抗リウマチ薬・免疫抑制剤・生物学的製剤・JAK阻害剤投与をどのように調整すべきかについて

以下の薬に関してはワクチンの接種時期を遅らせたり、調整するは必要ない。

ヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル)スルファサラジン(商品名:アザルフィジンEN)イグラチモド(商品名:ケアラム)レフルノミド(商品名:アラバ)アプレミラスト(商品名:オテズラ)免疫グロブリン静注療法メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)アザチオプリン(商品名:アザニン、イムラン)ミゾリビン(商品名:ブレディニン)ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト)シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)TNF阻害薬【インフリキシマブ(商品名:レミケード)、エタネルセプト(商品名:エンブレル)、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)、ゴリムマブ(商品名:シンポニー)、セルトリズマブ(商品名:シムジア)】IL-6阻害薬【トシリズマブ(商品名:アクテムラ)、サリルマブ(商品名:ケブザラ)】IL-1阻害薬【カナキヌマブ(商品名:イラリス)】IL-17阻害薬【セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(商品名:トルツ)、ブロダルマブ(商品名:ルミセフ)】IL-12/23阻害薬【ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)、グセルクマブ(商品名:トレムフィア)】IL-23阻害薬【リサンキズマブ(商品名:スキリージ)】ベリムマブ(商品名:ベンリスタ)経口カルシニューリン阻害薬【シクロスポリン(商品名:ネオーラル、サンディミュン)、タクロリムス(商品名:プログラフ)】JAK阻害薬【トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)、バリシチニブ(商品名:オルミエント)、ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)、ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)、フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)】中等度以下のステロイド(プレドニゾロン(商品名:プレドニン)<20mg/day)*プレドニゾロン >20mgの患者に対してワクチンを遅らせるかどうかに関しては、はっきりせず

 

アバタセプト(商品名:オレンシア)皮下注射

COVID-19ワクチン初回接種の1週間前に休薬。2回目ワクチン接種時には休薬不要。

 

アバタセプト(商品名:オレンシア)静注

1回目のワクチン接種をアバタセプト点滴の4週間後に行う。2回目ワクチン接種時には休薬不要。

 

アセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)、NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤 商品名:ロキソニン、セレコックス、ボルタレン、ナイキサン、ロルカム、フルカム、モービック、ハイペン、インフリー、ブルフェンなど)

ワクチン接種24時間前から休薬、接種後は制限なし(疾患が落ち着いている場合)。

 

COVID-19ワクチン接種後において、リウマチ性疾患患者の抗リウマチ薬・免疫抑制剤・生物学的製剤・JAK阻害剤投与をどのように調整すべきかについて

以下の薬に関しては調整するは必要ない。

ヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル)スルファサラジン(商品名:アザルフィジンEN)イグラチモド(商品名:ケアラム)レフルノミド(商品名:アラバ)アプレミラスト(商品名:オテズラ)免疫グロブリン静注療法アザチオプリン(商品名:アザニン、イムラン)ミゾリビン(商品名:ブレディニン)経口シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)TNF阻害薬【インフリキシマブ(商品名:レミケード)、エタネルセプト(商品名:エンブレル)、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)、ゴリムマブ(商品名:シンポニー)、セルトリズマブ(商品名:シムジア)】IL-6阻害薬【トシリズマブ(商品名:アクテムラ)、サリルマブ(商品名:ケブザラ)】IL-1阻害薬【カナキヌマブ(商品名:イラリス)】IL-17阻害薬【セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(商品名:トルツ)、ブロダルマブ(商品名:ルミセフ)】IL-12/23阻害薬【ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)、グセルクマブ(商品名:トレムフィア)】IL-23阻害薬【リサンキズマブ(商品名:スキリージ)】ベリムマブ(商品名:ベンリスタ)経口カルシニューリン阻害薬【シクロスポリン(商品名:ネオーラル、サンディミュン)、タクロリムス(商品名:プログラフ)】ステロイド(プレドニゾロン(商品名:プレドニン)<20mg/dayでも≧20mg/day でも調整不要)アセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)、NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤 商品名:ロキソニン、セレコックス、ボルタレン、ナイキサン、ロルカム、フルカム、モービック、ハイペン、インフリー、ブルフェンなど)

 

ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト)

ワクチン接種後に1週間休薬(疾患コントロールが良い場合)Ver. 3で変更。 First published: 04 August 2021https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/art.41928

 

メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)

ワクチン接種後に1週間休薬(疾患コントロールが良い場合)ただし、最近の研究結果では、メトトレキサートを継続しても問題ないと報告されています。新型コロナワクチン接種後のリウマチ性疾患患者の影響

 

JAK阻害薬【トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)、バリシチニブ(商品名:オルミエント)、ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)、ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)、フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)】

ワクチン接種後に1週間休薬ただし、最近の研究結果では、JAK阻害薬を継続しても問題ないと報告されています。→新型コロナワクチン接種後のリウマチ性疾患患者の影響

 

アバタセプト(商品名:オレンシア)皮下注射

COVID-19ワクチン初回接種の1週間後に休薬。2回目ワクチン接種時には休薬不要。

 

アバタセプト(商品名:オレンシア)静注

1回目のワクチン接種後、次のアバタセプト点滴を1週間遅らせる。1回前のアバタセプト点滴の5週間後に、次の点滴を行う。2回目ワクチン接種時は調整不要。

 

シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)点滴

可能であれば、ワクチン接種後の約1週間後にシクロホスファミド投与に調整する。

 

下記を参照して記載しました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/art.41734https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/art.41928

 

https://ctd-gim.hatenablog.com/entry/2021/03/19/202038https://ctd-gim.hatenablog.com/entry/2021/05/01/185818

 

 

 

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