関節リウマチと悪性腫瘍
関節リウマチと悪性腫瘍
関節リウマチ患者における悪性腫瘍発症率は、一般住人とほぼ同じ
関節リウマチ患者において、悪性腫瘍の発症率を一般住人の発症率と比べたmeta-analysisが2015年に下記のごとく発表されました。
この図では、全悪性腫瘍の発症率に関して、23の文献をまとめ、Total pooled SIRが算出されています。
SIRが1.09ということで、関節リウマチ患者における悪性腫瘍発症率は、一般住人とほぼ同じということになります。
この表は各悪性腫瘍ごとにpoolされたSIR値を表しています。
関節リウマチ患者では、悪性リンパ腫、肺癌の発症率が高く、結腸直腸癌の発症率が低いことがわかります。
関節リウマチの活動性が高いほど、罹病期間が長いほど、悪性リンパ腫の発症率が増加する
TNFα阻害剤などの生物学的製剤投与において、全体の発癌リスクが高まるという報告はない
2012年のJAMAに発表されたmeta-analysisや2014年の台湾での報告によると、TNFα阻害剤などの生物学的製剤投与において、全体の発癌リスクは増加しないが、血液系の悪性腫瘍の発症率が高まる可能性はあります。
日本の関節リウマチ患者における生物学的製剤投与時の悪性腫瘍発症率について(Secure試験)
生物学的製剤投与による悪性腫瘍発症率は313.9で、一般人口における発症率(462.4)と比べ、増加していませんでした。
ただし、悪性リンパ腫:Lymphomaのは発症率は増加していました。
この試験には私も参加していました。
関節リウマチ以外の膠原病での悪性腫瘍発症率
膠原病では、皮膚筋炎で悪性腫瘍の合併率が高いことが知られています。
まとめ
1)関節リウマチ患者における悪性腫瘍発症率は、一般住人とほぼ同じ。
2)関節リウマチでは肺癌、悪性リンパ腫の発症率が高い。
3)TNFα阻害剤などの生物学的製剤投与において、全体の発癌リスクが高まるという報告はないが、悪性リンパ腫の発症率が高まる可能性はある。
癌に対する免疫療法とリウマチ性疾患
最近注目の癌に対する免疫療法(免疫チェックポイント阻害療法:抗PD-1抗体 ニボルマブなど)後に、関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症を発症した症例が報告されています。