関節リウマチの病因について説明します。
関節リウマチの病因

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関節リウマチの病因

関節リウマチの病因

 関節リウマチの病因はいまだ不明ですが、遺伝的要因に、環境要因(細菌やウイルスの感染、過労やストレス、出産、閉経、喫煙、歯周病など)が加わって発症すると考えられています。
文献4】

関節リウマチの遺伝的要因

 よく患者さんから「関節リウマチは遺伝しますか?」と質問される事がありますが、答えは「部分的にYES」という事になります。すなわち、関節リウマチ自体は純粋な遺伝性疾患ではありませんが、「関節リウマチになりやすい体質は遺伝する」という事です。遺伝的要因を支持する例としては、一卵性双生児の場合、一方が関節リウマチを発症した場合、もう一方が関節リウマチを発症する確率が約15%と報告されていたり、関節リウマチ患者の第一度近親者(親、あるいは子供)が関節リウマチとなる発症リスクが、一般集団と比較して2-5倍高いと報告されていたりすることなどが挙げられます。
文献5】

1)HLA遺伝子

 関節リウマチの遺伝因子として最も重要なものは、白血球の血液型であるHLA分子です。
文献7】

 関節リウマチとHLAとの関連を示唆する最初の報告は1969年のAstorgaとWilliamsによるもので、彼らは関節リウマチ患者において60%で混合リンパ球培養の反応が極めて弱いことを見出し、この事実は共通のアレル【1つの遺伝子座につき,遺伝子の種類が複数存在する場合,これら一つひとつをアレル(対立遺伝子)と呼びます。遺伝子に限らず,Single-nucleotide polymorphism:SNPのような1つの塩基に複数の種類がある場合にも用いられます】の存在の可能性を示しました。その後1976年にStastnyは関節リウマチ患者の多くがHLA-Dw4を共有していることを報告し、AstorgaとWil1iamsによる発見の原因と考えられることを報告しました。引き続き、HLAの血清学的タイピングの確立とともに、関節リウマチとHLA-DR4との関連が、多くの集団(日本人を含む多くのCaucasian集団、Asian集団)において認められることが報告されました。ところが、スペインなどの南ヨーロッパ集団、ユダヤ人、インド人などでは、HLA-DR1、DR1Oが関節リウマチに増加しているという例外が報告されたのです。このため、HLA-DR4自体ではなく、これと連鎖不平衡にある何らかの別の原因的多型が存在する可能性が示唆されました。
文献7】

 その後、HLA-DRβ鎖をコードするHLA-DRB1遣伝子の配列のDNAレベルで決定され、関節リウマチと関連するHLA-DRB1遺伝子のアレルは、ヨーロッパ系ではDRB1*04:01、東アジア系ではDRB1*04:05と報告されています。Gregersenらは関節リウマチと関連するHLA-DRB1アレルにはposltion 67-74のアミノ酸配列に共通性(HLA-DR1、DR4、DR10いずれにおいても)があることを報告しました。
文献5】

 特にposition 70-74のアミノ酸配列は、QKRAA、QRRAAあるいはRRRAAのいずれかであり、K、Rという塩基性アミノ酸が複数含まれ、酸性アミノ酸が含まれず、HLA-DR4に属していても関節リウマチとの関連が見られないDRB1*0402、0403では、この配列の中にD、Eといった酸性アミノ酸が存在することが明らかになりました。
文献8】

 この共通配列は、蛋白レベルでは、DRβ鎖の第3超可変領域に位置し、αヘリックスの一部を構成していました。GregersenらはこのモチーフをShared epitope(SE)と命名しました。

HLA-DR 分子に結合するペプチドの模式図。
a ペプチド結合溝の上面図。ペプチド結合溝はアルファ鎖とベータ鎖によって形成され、ペプチドを収容するための 2 つの壁を形成します。
b 2つのHLA-DR鎖を区別しない、ペプチド結合溝の側面図。 示されているペプチド結合ポケットは、ペプチドの残基の固定点です。他の残基は T 細胞受容体認識に利用できます。
c 共有エピトープ配列が残基の結合にどのように影響するかを示したもの。ポケット 4 内には正に帯電した残基が存在するため、アルギニンは反発され、シトルリンは受け入れられる可能性があります。X はポケット 4 の形成に関与するアミノ酸を表します。ペプチド結合ポケット 4 内の残基の位置は実際の位置を表しません。
d DERAA 配列が残基の結合にどのように影響するかを示します。 ポケット 4 内には負に帯電した残基が存在するため、アルギニンとシトルリンの両方が受け入れられる可能性があります。X はポケット 4 の形成に関与するアミノ酸を表します。ペプチド結合ポケット 4 内の残基の位置は実際の位置を表しません。
文献9】

 HLA-DRは CD4+ T細胞への抗原提示に関与しています。関節リウマチではシトルリン化(ペプチドのアルギニン残基を脱イミノ化)ペプチドを認識する自己抗体(anti-citrullinated peptide antibody:ACPA)が疾患特異的に出現しますが、DRB1*04:01あるいはDRB1*04:05のアレルを有するHLA-DRβ鎖分子は、構造的にシトルリン化抗原を提示しやすい形状をしており、ACPA産生を促進し、T細胞の活性化とサイトカインの産生を誘導します。さらに、HLA-DRB1遺伝子の多型は、自己応答性T細胞受容体の選択に影響を与える可能性があります。このようにして、HLA-DRB1遺伝子の多型は、関節リウマチの感受性だけでなく、関節リウマチの重症度とも関連しています。

2)HLA遺伝子以外の関連遺伝子

 ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS〉によって、関節リウマチに関連する遺伝子として、100以上の遺伝子領域が特定されました。
文献10】 

 HLA遺伝子以外の関節リウマチに関連する遺伝子の特徴として、T細胞の分化や活性化にかかわる遺伝子が多いことが挙げられます。たとえば、T細胞受容体シグナル伝達に関与するホスファターゼであるPTPN22遺伝子の多型は、関節リウマチに関連する遺伝子の1つです。その他、CD4陽性ヘルパーT細胞のサブセットであるTh1細胞の分化に関わる遺伝子:STAT4、IL12RB2、IFNGR2、制御性T細胞関連としてはCTLA4、IL2RA、CCR6などの遺伝子が関節リウマチ関連遺伝子として挙げられています。
 シトルリン化を誘導する酵素peptidyl arginine deiminase 2、4(PADI2、PADI4)の遺伝子異常も関節リウマチのリスクとされています。PADI4遺伝子多型は、男性喫煙者で相乗的に関節リウマチの発症リスクを上げることが示されています。
 その他RANKLの受容体であるRANKをコードするTNFRSF11A遺伝子や,骨芽細胞・軟骨細胞の分化に関わるWISP1遺伝子なども、関節リウマチ関連遺伝子として同定されています。
文献11】

3)エピジェネティックな変化

 ひとつの遺伝子によって決定される遺伝子性疾患の一致率と比較して、一卵性双生児における関節リウマチの一致率が比較的低いこと(約 15%)は、おそらく環境的要因によって誘導されるエピジェネティックな変化も重要であることを示唆しています。エピジェネティックな変化とは、遺伝子のオン、オフを制御するためにDNAに起こる化学的な修飾(たとえば、メチル化)となります。これらの修飾はDNAに対して起こるものの、DNAを構成している塩基配列を変えることはありません。双子の一方が関節リウマチでもう一方が関節リウマチでない場合、両者のDNAのメチル化パターンを調べると異なるという事例から示されるように、DNAメチル化は疾患の感受性に寄与している可能性があります。さらに、関節リウマチ発症前に、リウマチ因子またはACPA強陽性の人では、症状が発現する数年前に末梢血単核球の免疫関連遺伝子の異常なDNAメチル化が認められます。したがって、遺伝子のエピジェネティックな変化は、前臨床関節リウマチから臨床関節リウマチへの移行に寄与するプロセスを促進する可能性があります。

関節リウマチの環境要因

1)喫煙

 関節リウマチ発症の最も良く知られている危険因子は喫煙です。たとえば、10件の研究のメタ分析(TABLE 1の最上段)では、ヘビースモーカーでは関節リウマチの発症リスクが非喫煙者に比べて2倍高いことが示されました。喫煙によるリスクは、RF陰性関節リウマチの発症(RR 2.47)よりも、RF陽性関節リウマチの発症(RR 1.58)の方がはるかに大きいという結果でした。
文献2】

 興味深いことに、喫煙とHLA分子のshared epitope(SE)との間には重要な環境要因と遺伝的要因との相乗効果が存在します。例えば、スウェーデン研究では、SEを有する喫煙者が血清陽性RAを発症するオッズ比は、一方のみ有する場合(SEのみのオッズ比が4.8、喫煙のみオッズ比が1.9)よりも、10とかなり高かったと報告されています。また、SE(+)の喫煙者がACPA陽性関節リウマチになるリスクは非喫煙者の20倍になるという報告もあります。喫煙は、peptidyl arginine deiminase 4(PADI4)などの他の関節リウマチ関連遺伝子とも相互作用する可能性があります。
 禁煙後はリスクが徐々に軽減し、たとえば、看護師の健康調査では、禁煙した人はRF陽性関節リウマチの発症が40%減少しました。しかし、生涯非喫煙者と比較して、喫煙者は禁煙後30年経っても、関節リウマチのリスクが検出可能でした。
 喫煙が関節リウマチの発症に関するメカニズムは依然として不明です。喫煙は、ビメンチンなどのタンパク質のシトルリン化に関与する酵素であるpeptidyl arginine deiminase の産生亢進を通じて、気管支などの粘膜表面での自己抗体の発生に影響を与える可能性があります。シトルリン化は喫煙者の気道で非常に活発であり、シトルリン化されたペプチドがマクロファージで検出されています。細気管支の肥厚と局所的な好中球細胞外トラップの形成は、ACPA高力価の無症候性の人、および関節リウマチ患者の一親等の近親者に認められます。好中球細胞外トラップ内に押し出されたDNAは、シトルリン化ペプチドの足場を形成し、ACPAを生成する免疫応答を増幅します。
 タバコの煙には、ニコチン、一酸化炭素、アクロレイン、酸素フリーラジカルなどの免疫調節物質を含む何千もの化学物質が含まれています。粘膜表面では、タバコの煙が局所上皮細胞を活性化して炎症誘発性サイトカインを生成し、これにより免疫細胞の動員が促進され、炎症反応が誘発されます。ここで、タバコの煙は肺樹状細胞を介して作用し、Th1およびTh17(+)CD4(+)T細胞へのT細胞の分化を促進する可能性があります。さらに、喫煙者の肺では制御性T細胞が減少していて、免疫の暴走が起きやすい状態です。また、in vitroの実験では、タバコ煙抽出物は、好中球の動員に影響を与える単球や肺胞マクロファージによるケモカインの産生の増強をもたらします。このように、喫煙は免疫系を炎症を引き起こす方向に誘発します。

2)職業上の吸入暴露、大気汚染物質

 Case-Control Studyでは、シリカへの曝露がRF陰性およびRF陽性の両方の関節リウマチを発症する確率を高めることが示されています。さらに、殺虫剤、溶剤、その他の農業関連物質や線維性の粉塵(石綿など)の曝露なども関節リウマチのリスクを高めるようです。大気汚染は、関節リウマチを含むさまざまな自己免疫疾患とも関連しています。興味深いことに、吸入物質には累積的な効果があり、曝露回数が増えれば増えるほど、関節リウマチのリスクが増加する可能性があります。さらに、吸入物質の曝露に喫煙と遺伝的リスクが加わると、RF陽性関節リウマチを発症するリスクが劇的に増加します。
文献4】

 関節リウマチのリスクにおいてシリカとタバコの煙への曝露の間に明らかな相乗効果もあります。シリカは自然界では石英として存在し、採掘、掘削、サンドブラストなどの職業活動で暴露されます。シリカ吸入により、肺線維症を誘発することがあります。吸入されたシリカは肺胞マクロファージによって飲み込まれ、好中球の活性化、活性酸素の生成、細胞質リソソームの破壊後にインフラマソームとIL-1βやTNF-αの分泌の活性化が起こります。
 大気汚染物質の中でも、多環芳香族炭化水素 (polycyclic aromatic hydrocarbons:PAH) は、関節リウマチの発症に関連してますます注目を集めています。PAHは、天然ガスや石油の燃焼によって形成されるの大気汚染物質です。 PAHへの過剰曝露は通常、Th1細胞やTh17細胞などの免疫細胞のaryl hydrocarbon receptor (AHR) を活性化し、炎症性サイトカインの産生と関節リウマチの発生率の増加をもたらします。さらに、PAHはTh2およびT制御 (reg) 細胞上のAHRの活性化を阻害し、IL-10、TGF-β、および IL-4 を産生する能力を低下させます。

3)歯周病

 歯周病と関節リウマチの発症に関しては、150,000人を超える個人を対象としたメタ解析で、関連性があることが示されました。この関連性はACPA陽性関節リウマチで最も強く、興味深いことに、歯周病を有する関節リウマチ患者は歯周病を有さない患者と比較して血清ACPA濃度が高いことが示されています。喫煙と同様に、歯周病とShared Epitopeとの間には関連性があり、両者を有するとより重篤な/破壊的な関節リウマチを引き起こすなど、強い遺伝子環境相互作用があると考えられています。興味深いことに、関節リウマチ患者における歯周炎の治療は、関節炎の疾患活動性の改善と関連しています。
文献12】

 関節リウマチのリスクに関して研究された口腔細菌の中で最もよく特徴付けられているのは、Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis)です。非常に興味深いことに、P. gingivalisは内因性peptidyl arginine deiminase(PAD) を発現し、局所のタンパク質のシトルリン化を誘導します。歯周病の歯肉組織には、B細胞およびCD4 T細胞の浸潤が見られ、Th17の分化を示す証拠が示されています。P. gingivalis以外にも、ProvatellaやVeillonellaやAggregatibacter actinomycetemcomitansなど、他の多くの口腔微生物が関節リウマチの発症に関連していると考えられています。最近、口腔微生物が関節リウマチ患者の血液中に侵入し、シトルリン化抗原をB細胞に提示し、炎症性単球を活性化することによって炎症を促進するという証拠が報告されています。

4)腸内細菌、その他の微生物

 腸内細菌叢の異常は、確立された関節リウマチ患者では、疾患活動性および治療反応と相関しているようです。関節リウマチ患者に認められるPrevotella copriに特に注目が集まっています。Prevotella copri株は分岐鎖アミノ酸 (BCAA) の割合が高く、乳酸菌を枯渇させ、腸に炎症をもたらします。関節リウマチ患者の腸内細菌叢におけるPrevotella copriの増加は、Pc-p27タンパク質の産生に関与し、これがHLA-DRに結合することでTh1細胞媒介免疫反応を引き起こし、適応免疫系の活性化を促進する可能性があります。塩分の多量摂取や砂糖入りの炭酸飲料摂取は腸内細菌叢におけるPrevotella copriの比率を高めると報告されています。Subdoligranulumの株も関節リウマチの発症リスクと関連があると報告されています。
文献13】

 エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)は、関節リウマチ発症のリスク増加に影響を与えるウイルスです。ウイルスの構造を分析したところ、糖タンパク質gp110 内にQKRAA 配列が存在することが明らかになりました。この配列は、HLA-DRB1*0401遺伝子によってもコードされています(Shared Epitope)。分子模倣に起因する交差反応性自己免疫応答は、関節リウマチの発症に寄与する可能性のあるメカニズムです。
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、免疫系の長期的な異常な活性化を誘発し、関節リウマチなどの自己免疫性疾患を引き起こす可能性があります。このウイルスは、口、肺、腸粘膜の細胞に直接影響を及ぼし、peptidyl arginine deiminase 4(PADI4)を誘導し、さらにシトルリン化ヒストンの形成を引き起こします。さらに、肺および消化組織では、SARS-CoV-2の持続感染が起こり、SARS-CoV-2に対する濾胞外免疫応答が起こり、最終的には免疫系の耐性の崩壊と自己抗体の産生につながります。

5)食事の影響

 食事は、関節リウマチの発症にとって重要なライフスタイルの危険因子であると考えられています。地中海食(一価不飽和脂肪酸、野菜、果物、全粒穀物を豊富に摂取する食事)の摂取により、喫煙歴のある人の関節リウマチを予防することが大規模な前向きコホート研究にて示されました。興味深いことに、非喫煙者には予防効果は見られませんでした。逆に、野菜、オリーブオイル、ビタミンの摂取が少なく、タンパク質や赤身の肉の摂取が多いと、関節リウマチのリスク増加と関連しています。
 長鎖ω3脂肪酸 【エイコサペンタエン酸 (EPA) およびドコサヘキサエン酸 (DHA) 】が豊富に含まれている魚の摂取も関節リウマチ発症予防に有効なデータが見られます。デンマークの大規模な研究では、魚油の摂取量が多いと関節リウマチのリスクが低下することが示唆されています。さらに、スウェーデン人女性のコホートでも、ω3脂肪酸と魚の摂取量が多いと関節リウマチの発症が予防されました。魚油サプリメントは、確立された関節リウマチ患者を対象とした前向き試験でも有効性を示しており、その抗炎症作用が実証されています。ω3脂肪酸は体内に吸収されるとは膜リン脂質に蓄えられ、エイコサノイドへ代謝され、抗炎症効果を発揮すると考えられています。エイコサノイドは、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどのいくつかのサブファミリーで構成されています。さらに、ω3脂肪酸はマクロファージでの炎症誘発性サイトカインの分泌を減少させたり、活性化CD8+ T細胞、Tヘルパー 1 (Th1)細胞、および Th17細胞におけるサイトカイン産生を減少させたり、T細胞の分化をTh1/Th17から遠ざけ、Treg細胞の増加させたりすると報告されています。対照的に、動物性脂肪、植物油、穀物に由来するω6脂肪酸は、炎症促進効果を発揮すると考えられています。
 適度なアルコール摂取は関節リウマチの発症リスク低下と関連すると報告されてます。
 ビタミンD欠乏症は、関節リウマチの発症に関連していると考えられています。看護師の健康調査のCase-Control Studyでは、ビタミンDレベルは関節リウマチ発症前の数か月から数年で低かったと報告されています。20万人以上の参加者を対象としたメタ解析では、ビタミンDの摂取量が多いと関節リウマチの発症リスクが24%減少することが示唆されました。ビタミンDの一部は太陽光による紫外線曝露後に皮膚で生成されるため、ビタミンD欠乏症は、特に冬場に太陽光が少なくなる地域でよく見られます。ビタミンDは、骨の代謝調節以外に、免疫の恒常性にも役割を果たします。マクロファージでは、活性化ビタミンDが抗菌ペプチドであるカテリシジンの生成を刺激します。好中球では、ビタミンDは細菌の死滅を促進します。ビタミンD は、Th1細胞を免疫抑制性のIL-10 産生サブセットに移行させる際にも重要な役割を果たします。活性型ビタミンDは、B細胞のアポトーシスを誘導することにより、メモリーB細胞や免疫グロブリン産生形質細胞の形成を減少させます。

6)肥満

 肥満も、関節リウマチの発症リスクを高める役割を果たしている可能性があります。ただし、肥満が関節リウマチのリスク増加と関連していたという報告もある一方で、関連性を示せなかった報告もあります。興味深いことに、肥満と関節リウマチの発症リスクは男性に比べて女性の方が高い可能性があります。肥満では、マクロファージは炎症促進性 (M1様)細胞が増加し、抗炎症性 (M2様) マクロファージが減少します。M1様マクロファージは、炎症反応の増強に関与するTNF-α、IL-6、IL-12、IL-18などのサイトカインの分泌増加を示し、CD4+ T 細胞を動員し炎症を促進します。脂肪組織によって分泌されるアディポカインは炎症と強く相関しています。早期関節リウマチではレプチンが増加し、活性酸素産生の増加に関連していることが示されています。 メタ解析により、関節リウマチ患者ではアディポネクチンが有意に高く、骨芽細胞と破骨細胞における炎症促進状態の誘導を介して関節リウマチで観察される骨びらんに寄与している可能性があります。ケマリン、レジスチン、リポカリン2などの他のアディポカインは、確立した関節リウマチ患者の臨床転帰と関連しています。

7)女性ホルモン

 関節リウマチは、女性では男性の2~3倍多く発症します。免疫機能に対するエストロゲンの影響は、おそらくこの病気の女性優位性の一因となっていると考えられますが、追加の性関連要因も関与している可能性があります。エストロゲンは、B細胞とTh2応答を刺激し、自己反応性のB細胞とT細胞の生存を促進することによって体液性免疫を強化します。

文献

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12】Periodontitis and risk of immune-mediated systemic conditions: A systematic review and meta-analysis. Community Dent Oral Epidemiol. (2022) 00:1-13
13】Gut bacteriome, mycobiome and virome alterations in rheumatoid arthritis. Front. Endocrinol. (2023) 13:1044673

≪2024年1月23日作成≫
関節リウマチの病因

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