1)血清筋酵素の上昇
CK(CPK)(正常値:男 45~245,女 30~170)
早期に上昇しステロイド使用後速やかに低下し治療初期の指標として有用。心筋梗塞でもCK上昇する。
LD(LDH)(正常値:120~240)
AST(GOT)(正常値:10~40)
ALT(GPT)(正常値:6~40)
CKを測定しないと肝障害と間違えられることがある。
アルドラーゼ(正常値:6以下)
骨格筋、心筋障害の指標となる。ステロイドで上昇する。
ミオグロビン(正常値:男 28~97、女 16~74)
筋炎の活動期、再燃期に上昇し、ステロイドの影響も少なく、慢性期の指標に適している。
2)抗核抗体・筋炎特異自己抗体陽性
3)CRP上昇、血沈亢進
4)ミオグロビン尿
ミオグロビンは筋肉の中で酸素を運ぶ役割をしている。血尿と間違えられることがある。
5)筋MRI
核磁気を使用した画像検査で、活動性のある筋肉の炎症の範囲を調べることのできる。
6)筋電図
筋肉に針を刺して、筋肉の電気を調べる。
7)筋生検
筋肉の一部をメスで取ってきて顕微鏡で調べる。
筋炎特異自己抗体の特徴
以前は、多発性筋炎・皮膚筋炎では、抗核抗体が通常の蛍光抗体間接法のルーチン検査で陰性のことが多く、また陽性になっても力価が低いことから、他の膠原病に比べて自己抗体のもつ意義は低いと考えられていた。しかし、免疫沈降法などにより今では多くの自己抗体が同定されており、7-8割くらいの患者さんで特異的な自己抗体が陽性になることがわかっている。さらに、これらの抗体の種類により臨床症状がかなりはっきり分類できることが重要なポイントで、これらの自己抗体の一部は筋炎および筋外合併症の治療反応性を予測できる可能性がある。今まで、抗Jo-1抗体、抗ARS抗体のみが、保険収載されていたが、2016年10月より、抗MDA5抗体、抗Mi-2抗体、抗TIF1γ抗体も保険収載となった。
(1)抗細胞質(Cytoplasmic)抗体が多い。
(2)抗核抗体の場合、力価の低いものが多い。
(3)個々の特異抗体ごとの陽性率はそれほど高くない。
(4)特異抗体は、1人の患者で通常1種類のみが陽性になる。
(5)臨床的病型によく相関する。
抗ARS抗体症候群
抗ARS抗体(抗Jo-1、PL-7、PL-12、OJ、EJ、KS抗体)はmRNAから特定のアミノ酸を合成する際にtRNAとアミノ酸の結合を触媒する酵素に対する抗体である。抗細胞質抗体として検出され、蛍光抗体間接法による抗核抗体検査では陰性となる事もある。抗Jo-1抗体は抗ARS抗体のひとつである。現在、検査センターで測定される抗ARS抗体キットでは抗OJ抗体以外の抗Jo-1、PL-7、PL-12、EJ、KS抗体の5種類の抗体をまとめて検出できる。
抗ARS抗体症候群の主要な症状として①筋炎(PM>DM)、②間質性肺炎、③関節炎、④発熱(CRP上昇)、⑤レイノー現象、⑥機械工の手(mechanic‘s hands)が挙げられる。
間質性肺炎は特に高頻度で60~90%に認められる。間質性肺炎の病型は慢性型が多い。抗ARS抗体症候群は、ステロイドに比較的良好に反応するが、再燃が多く、特に肺病変は徐々に進行することが多い。間質性肺炎が筋炎より先に発症する例もある。シクロスポリンやタクロリムスの併用が必要となることが多い。
抗Mi-2抗体
抗Mi-2抗体はDMにほぼ特異的で、PMにはほとんどみられない。通常高力価の抗核抗体(speckled)として検出される。
抗Mi-2抗体陽性例は、定型的なDMの臨床像(V徴候、ショール徴候が多い)を呈し、悪性腫瘍、間質性肺炎は低率である。紫外線と発症の関連が示唆(赤道に近い国で多い)されている。治療ではステロイドが奏効し、予後が良好な群である。しかしながら、ステロイド減量中に再燃する例が多いことには注意が必要である。
抗MDA5抗体(抗CADM140抗体)
抗MDA5抗体(抗細胞質抗体として検出、抗核抗体としては陰性)は特にDMの典型的な皮疹を呈するが明らかな筋症状を欠くCADM(Clinically amyopathic DM)の病型で陽性になることが多い。わが国における多施設の検討では、抗MDA5抗体陽性DM43例のうち、間質性肺炎は93%に認められ、その大多数が急速進行性間質性肺炎であり、そのうち約半数は死亡していた。
皮膚症状が強く、逆Gottron徴候、紫斑や穿掘性皮膚潰瘍などの血管障害を示唆する皮膚所見の存在が、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の特徴である。
関節炎・発熱・血清フェリチン値高値・肝胆道系酵素上昇・血球減少・血清IL-6高値などが見られる。間質性肺炎のマーカーであるKL-6は上昇するが、SP-Dは正常のことが多い。MDA5抗体陽性皮膚筋炎ではインターフェロンを含む複数のサイトカインが活性化(高サイトカイン血症)されており、このことが本疾患の治療抵抗性に関与している可能性がある。
本抗体陽性例では速やかにステロイド、シクロホスファミドパルス療法、タクロリムスまたはシクロスポリンの3系統併用療法を施行すべきである。治療有効例では再燃は少ないと言われている。
抗TIF1抗体(抗155/140抗体、抗p155抗体)
抗TIF1(遺伝子の発現を調節する蛋白のひとつ)抗体は、蛍光抗体間接法では低力価の抗核抗体(speckled)として検出される。抗TIF1抗体陽性例では間質性肺炎を合併することは少ないが、40 歳以上の成人症例において悪性腫瘍の合併例は多い。筋炎の発症前後1年以内に癌が見つかる頻度が高い。
筋症状に関しては、約70%に筋症状が認められる。筋症状の程度は、それほど高度ではなかったが、嚥下障害を呈する頻度が高いとされている。抗TIF1抗体陽性皮膚筋炎は、小児例でも成人例でも皮膚症状が広範囲で激しいことが特徴の1つであり、水疱形成や紅皮症を呈することもある。
http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-131226.pdf#search=%27%E6%8A%97TIF1%E6%8A%97%E4%BD%93+%E6%82%AA%E6%80%A7%E8%85%AB%E7%98%8D+%EF%BD%90%EF%BD%84%EF%BD%86%27
抗NXP-2(MJ)抗体
NXP2(Nuclear Matrix protein 2)は、核内でDNAの複製、RNAプロセッシング、遺伝子転写に関連する。抗NXP-2(MJ)抗体は小児皮膚筋炎(白人では全体の30%を占める)・成人皮膚筋炎で認められる。皮下石灰化(小児で多い)や嚥下障害と関連がある。悪性腫瘍(日本人では約50%)との関連が示唆されている。間質性肺炎は少ないとされる。
抗SAE 抗体
皮膚筋炎に検出され、全身の紅斑、嚥下障害、間質性肺炎、悪性腫瘍との関連が示唆されている。
抗シグナル認識粒子(SRP)抗体
抗SRP抗体陽性筋炎は亜急性発症の重症筋炎(著明な筋力低下[嚥下障害]・CK異常高値)として報告されている。病理では筋線維の壊死再生像が著明だが炎症細胞浸潤に乏しい壊死性筋症を呈する事が多い。間質性肺炎の合併は比較的少ない。抗SRP 抗体陽性筋炎は副腎皮質ステロイドに抵抗性で、早期から免疫抑制薬や免疫グロブリン大量静注療法を必要とする場合が多い。近年抗SRP 抗体陽性の治療抵抗性例に対してリツキシマブの有効性が報告されている。
抗HMGCR抗体(3-Hydroxy-3-Methylglutaryl-Coenzyme A Reductase)
スタチン関連筋炎として知られており、スタチン暴露歴のある例は約60-80%である。急性~慢性発症までさまざまな発症様式を呈し、病理では細胞浸潤の少ない壊死性筋症が認められる。CK値が高い例が多いが、筋炎以外の臓器病変は少ない。免疫抑制薬を必要とする例が多いが、日常生活動作の予後はあまり良くない。
筋MRI
皮膚筋炎・多発性筋炎の筋生検所見
1)炎症所見:単核細胞浸潤
2)筋線維の大小不同
3)筋細胞の壊死・再生
皮膚筋炎/多発性筋炎の合併症
1)間質性肺炎
痰を伴わない咳、呼吸困難
2)心筋障害
不整脈、心不全
3)悪性腫瘍の合併
皮膚筋炎の5.5-42%
間質性肺炎の特徴
1)急性型、慢性型に分類される。 皮膚筋炎/ 多発性筋炎の40~62%に合併する。
2)急性型は予後不良の転帰をとるものが多い。
3)血清中のCKなどの筋原性酵素が低値を示し、進行性の間質性肺炎がある皮膚筋炎症例は、治療抵抗性であり呼吸不全となり、不幸な転帰を取ることが多い。
4)間質性肺炎が筋炎症状に先行することがある。
間質性肺炎の症状・所見
1)症状:発熱、呼吸困難、乾性咳嗽
2)聴診所見:背部の捻髪音
間質性肺炎の検査
1)胸部X線・CT所見:スリガラス状陰影、網状粒状影、蜂窩肺
2)血液ガス:PaO2の低下
3)血液検査:CRP, KL-6(II型肺胞上皮に発 現する糖蛋白), SP-D(肺サーファクタント蛋白)の上昇
4)肺機能:肺活量の低下、肺拡散能(DLCO)の低下
5)Gaシンチグラム:活動性、治療効果の判定に有用。Gaが肺に異常集積する。
6)気管支肺胞洗浄液検査・気管支鏡下肺生検:確定診断に有用。