全般 | 日本整形外科学会の推奨度 |
||
---|---|---|---|
1 | 非薬物療法と薬物療法の併用 | OAの至適な管理には,非薬物療法と薬物療法の併用が必要である. | A |
非薬物療法 | |||
2 | 情報の提供と教育(全患者,治療目的と方法) | すべての膝関節OA患者に対して,治療の目的と生活様式の変更,運動療法,生活動作の適正化,減量,および損傷した関節への負担を軽減する方法に関する情報を提供し,教育を行う.最初は医療従事者により提供される受動的な治療ではなく,自己管理と患者主体の治療に重点をおき,その後,非薬物療法の積極的な遵守を奨励する. | A |
3 | 電話指導 | 膝関節OA患者への定期的な電話指導は,患者の臨床症状の改善に有効 | C |
4 | 理学療法士による運動指導 | 症候性の膝関節OA患者においては,疼痛緩和および身体機能を改善するための適切な運動療法について,理学療法士による評価と指示・助言を受けさせることが有益である.これにより杖および歩行器などの補助具の適切な提供につながる | B |
5 | 有酸素運動療法(筋力強化訓練および関節可動域訓練) | 膝関節OA患者には,定期的な有酸素運動,筋力強化訓練および関節可動域訓練を実施し,かつこれらの継続を奨励する. | A |
6 | 減量と体重の維持 | 体重が標準を超えている膝関節OA患者には,減量し,体重をより低く維持することを奨励する. | A |
7 | 歩行補助具使用(疼痛軽減目的) | 歩行補助具は,膝関節OA患者の疼痛を低減する.患者には,対側の手で杖/松葉杖を最適に使用できるよう指示を与えること.両側性の疾患を有する患者には,フレームまたは車輪付き歩行器が望ましい. | A |
8 | 膝関節装具使用 | 軽度~中等度の内反または外反がみられる膝関節OA患者において,膝関節装具は,疼痛を緩和し,安定性を改善し,転倒のリスクを低下させる. | B |
9 | 足底板使用 | 膝関節OA患者には,履物について適切な助言を与えること.膝関節OA患者では,足底板により疼痛を緩和し,歩行(運動)能力の改善が得られる.膝関節内顆のOAを有する患者の一部においては,外側楔状足底板が症状緩和に有効である. | B |
10 | 温熱療法 | 温熱療法は,膝関節OA患者の疼痛緩和に有効である. | C |
11 | TENS | 経皮的電気神経刺激療法(TENS)は,膝関節OA患者の一部において短期的な疼痛コントロールの一助となり得る. | C |
薬物療法 | |||
12 | アセトアミノフェン内服 | アセトアミノフェン(4 g/日以下)は軽症から中等症の膝OA治療の経口鎮痛剤となりうる.効果がない場合,または重症な疼痛や炎症が生じた場合は,効果や副作用の種類を考慮して他の薬物理療への変更を考慮すべきである. | A |
13 | NSAIDS内服 | 症候性の膝関節OA患者では,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を最小有効用量で使用すべきであるが,長期投与は可能な限り回避する.消化管障害(GI)リスクの高い患者では選択的COX-2阻害薬または非選択的NSAIDsとともに消化管保護のためプロトンポンプ阻害薬もしくはミソプロストールの併用投与することを考慮する.ただし,心血管系障害のリスク因子のある患者では,非選択的薬剤か選択的COX-2阻害薬かを問わず,NSAIDsは注意して使用する. | A |
14 | 外用NSAIDsおよびカプサイシン | 外用のNSAIDsおよびカプサイシン(トウガラシ抽出物)は,膝関節OA患者における経口鎮痛薬/抗炎症薬への追加または代替薬として有効である. | B |
15 | 副腎皮質コルチコステロイド関節内注射 | 副腎皮質コルチコステロイド関節内注射は膝関節OAの治療に使用することもある.とくに,経口鎮痛薬/抗炎症薬が十分に奏効しない中等度~重度の疼痛がある場合,および滲出液などの局所炎症の身体兆候を伴う症候性膝関節OAの患者において考慮する. | C |
16 | ヒアルロン酸関節内注射 | ヒアルロン酸関節内注射は膝関節OA患者において有用な場合がある.副腎皮質ステロイド関節内注射に比較して,その作用発現は遅いが,症状緩和作用は長く持続することが特徴である. | B |
17 | グルコサミンやコンドロイチン硫酸の内服(症状改善効果) | グルコサミンやコンドロイチン硫酸の投与は膝関節OA患者の症状を緩和させる場合がある. 6カ月以内に効果がみられなければ投与を中止する. | I |
18 | グルコサミンやコンドロイチン硫酸の内服(軟骨保護作用) | 症候性の膝関節OA患者では,グルコサミンやコンドロイチン硫酸が軟骨保護作用を示す場合がある. | D |
19 | オピオイド投与 | 他の薬剤が無効または禁忌で,強い疼痛を訴える膝OA患者には,弱オピオイドや麻薬系鎮痛剤を考慮してもよい.強オピオイドについては特別の例外を除いては鎮痛薬として用いるべきではない.このような患者には他の非薬物療法,特に手術療法を考えるべきである. | B |
外科的療法 | |||
20 | 人工膝関節置換術 | 非薬物療法と薬物療法の併用によって十分な疼痛緩和と機能改善が得られない膝関節OA患者の場合は,人工膝関節置換術を考慮する.保存療法を行っているにもかかわらず健康関連QOLの低下を伴う重篤な症状や機能制限を有する患者に対しては,関節置換術が有効かつ費用対効果の高い手段である. | A |
21 | 単顆膝関節置換術 | 単顆膝関節置換術は,膝関節の内または外側どちらかに限定された膝OA患者に有効である. | C |
22 | 高位脛骨骨切り術 | 身体活動性が高く,内側膝OAによる症状が著しい若年患者では,高位脛骨骨切り術の施行により関節置換術の適応を約10年遅らせることができる場合がある. | B |
23 | 関節洗浄および関節鏡視下デブリドマン | 膝関節OAにおける関節洗浄および関節鏡視下デブリドマンの効果は意見が分かれている.いくつかの研究で短期的な症状緩和が示されているが,他の研究では症状緩和はプラセボ効果に起因する可能性があることが示されている. | C |
24 | 関節固定術 | 関節置換術により奏効が得られなかった膝OA患者では,救済処置として関節固定術を考慮してもよい. | C |