高齢者の関節リウマチ
高齢者の関節リウマチの疫学
関節リウマチ患者にうちの70歳以上の高齢者が占める割合が45.4%に達している。 年齢とともにメトトレキサート、生物学的製剤の処方割合が低下し、ステロイドの処方割合が増加している。 生物学的製剤の処方内訳で見ると、年齢とともにTNF阻害薬、IL-6阻害薬の処方割合が低下し、アバタセプトの処方割合が増加している。
高齢発症リウマチ患者の特徴
(65歳未満発症例との比較)
発症年齢 | 65歳以上 |
---|---|
性差 | 男性の比率が高い |
臨床的特徴 |
急性発症が多い全身症状が強いリウマチ性多発性筋痛症に似た症状を呈することがある大関節症状が強い予後が悪いことが多い |
生物学的特徴 |
IL-6が高いTNF-αが低いリウマチ因子陰性が多い血沈値が高い |
高齢者の合併疾患
年齢とともに合併疾患保有率が高くなっている。
高齢RA 患者の併存症:腎機能低下
一般に高齢者は腎機能が低下し、しばしば薬物排泄遅延が認められる。さらに高齢者では筋肉量が減少しているため血清クレアチニン の上昇は軽度でも糸球体濾過量は低下していることが多く注意が必要である。 東医大誌 75(2): 187-194, 2017
高齢RA 患者の併存症:心血管疾患
虚血性心疾患や心不全の合併によりRA 患者の死亡率は一般人口の死亡率より高く、心筋梗塞による入院のリスクは3.17 倍、心不全発症のリスクは約2倍と報告されている。RAでは心房細動、心筋梗塞、脳卒中などの心血管病変の発症リスクが高い。年齢、CRP高値、RF陽性、喫煙がRA患者において、心血管病変の危険因子となる。自然免疫は加齢に伴い変化し、炎症性サイトカインやCRPが上昇するが、このことが加齢に伴う虚血性心疾患の増加に関与している。こちらを参照
高齢者の関節リウマチの治療
薬剤添付文書上の注意事項は下記のごとくである。
関節リウマチ診療ガイドライン2020における推奨
MTX投与中の重篤感染症の発現頻度は年齢とともに増加することが示されている。また、高齢者RAでは、MTX増量中に、肝障害、消化器症状、血球減少などのMTX用量依存性の副作用を高頻度に認める。MTX投与中のリンパ増殖性疾患の合併にも要注意。 2022年に高齢者RAに対する治療に関する関節リウマチ診療ガイドライン2020における推奨のUpdateが報告された。
生物学的製剤に対する高齢、若年RA患者の有効性の比較
若年RA患者の方が有効性が高い。MODERN RHEUMATOLOGY(32), 313-322, 2022
JAK阻害剤に対する高齢、若年RA患者の有効性の比較
高齢、若年RA患者で有効性が差はない。MODERN RHEUMATOLOGY(32), 313-322, 2022
生物学的製剤に対する高齢、若年RA患者の重症感染症発症頻度の比較
高齢RA患者の方が重症感染症発症頻度が高いMODERN RHEUMATOLOGY(32), 313-322, 2022 副腎皮質ステロイドの長期継続は、重篤感染症の頻度を増加させる。副腎皮質ステロイドの長期継続は、心血管イベントの頻度を増加させる。
高齢発症RAに対するT2T(Treat to Target)実践は、疾患活動性(SDAI)、身体機能(HAQ-DI)を改善し、関節破壊進行(CRRP)を抑制する。 Rheumatology 2021;60:4252-4261
高齢RA治療は、基本的にはT2Tの概念に則り、臨床的寛解を治療目的とするが、対象患者の疾患活動性や健康状態、生理機能、合併症、家庭環境、経済状況等を鑑みつつ個々の患者の背景に応じて決定される。
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