ベーチェット病について説明します。
ベーチェット病

ベーチェット病


ベーチェット病

ベーチェット病

ベーチェット病の歴史

 ベーチェット病は1937年に、トルコのイスタンブール大学皮膚科教授であったベーチェット(Hulusi Behçet 1889-1948)が、ドイツ語で世界的に初めて報告したものです。しかしながら、ベーチェット病らしき病気は、遠く紀元前5世紀には、古代ギリシャの医聖、ヒポクラテスにより、また紀元後200年には、中国の漢方医師、張仲景により「傷寒雑病学」に記載されています。  
 したがって、本病の歴史は大変古く、それか20世紀に入って初めてBehçetにより体系的にまとめられ、彼の名前に因んで「ベーチェット病」と名付けられたものです。

ベーチェット病の疫学

 我が国では、患者数は全国で約19,000人(平成25年度厚生省ベーチェット病班会議)ですが、潜在患者を含めるともっと多いと推定されています。
 国内での本病患者の分布は、北高南低の傾向を示し、札幌市では10万人に95.6人程度であるのに対し、福岡市では10万人に12.5人程度です。
 性差は従来、男性に多いといわれていましたが、現在性差はほとんどなくなりました。しかし、眼症状を持つ患者は男性に多い(性比:1.87)傾向があります。  
 発病年齢は、男女とも20-40歳に多く、30歳前半にピークを示します。


ベーチェット病の病因

ベーチェット病の病因については、多くはいまだに不明です。
a 遺伝的要因  
 ベーチェット病は、HLA‐B51抗原頻度が50-70%であり、健常群の10-30%と比べて顕著に上昇してます。しかし、カリフォルニアやハワイ居住の日系二世・三世に本病患者がほとんど見られないことを考え合わせると、本病発症には遺伝的要因以外の何らかの外的環境因子が関与している可能性が高いといえます。外因としてはある種の工業汚染物質の影響や、虫歯菌・連鎖球菌を含む細菌類やウィルスも考えられています。
b 好中球機能亢進
 粘膜や皮膚の病変を主体とするベーチェット病において、活動期では好中球の遊走能は亢進していることが知られています。
c 免疫異常
 ベーチェット病では免疫複合体あるいは補体の関与、IL-1やTNFαの生産亢進が知られています。

ベーチェット病の症状



ベーチェットの臨床検査

1)皮膚の針反応(needle test)
 注射針を刺したところに24~48時間後して赤みや膿が生じることがあります。ベーチェット病の活動性を反映していると言われていています。
2)非特異的炎症反応
 末梢血の白血球増多、赤沈値の亢進、CRP、フィブリノゲン、補体成分などの増量がみられます。リウマトイド因子や抗核抗体は陰性です。
3)免疫学的検査
 本症ではHLAB51陽性者の比率が高く、血清免疫グロブリンの中でIgA,IgDの増加例が多いことが知られています。
 しかしながら、確定診断をつける臨床検査はありません。

ベーチェット病の診断



ベーチェット病の治療

1)生活指導
 まず、ベーチェット病の増悪因子となる、過労・寒冷・気圧配置の変化・感染・外傷・精神的ストレス等に注意します。
2)薬物治療
 治療の対象になる病態の重症度及び後遺症を残す可能性の有無により治療の優先順位を決め、治療法を選択します。
(1)日常生活への影響もさほどでない粘膜皮膚病変や関節病変
(2)眼症状
(3)生命の危険を伴う又は重大な後遺症を残す特殊病型
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ベーチェット病の予後

 通常主症状が先行し、副症状は遅発性で、主症状が鎮静化してから出現することもあります。発症後3~7年で症状は極期に達し、以後漸次下り坂となります
 眼症状のある場合は、網膜ぶどう膜炎の視力の予後は悪く、眼症状発現後2年で視力0.1以下になる率は約40%といわれています。 8年を越すと80%以上の患者は視力が0.1以下になり、10年以上では失明する症例が40%に上ります。
 神経、血管型、腸管型の特殊型ベーチェット病の予後は普通型よりは多少良くありません。ベーチェット病による死亡率は2~4%で、その大部分は特殊病型によります。


ベーチェット病

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